紙の本
戦後の偉大な政治家
2014/08/26 19:08
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:melody - この投稿者のレビュー一覧を見る
誰もが知っている、ロッキード事件で有名な政治家でしたが、どの様な人物だったのか、ほとんど知りませんでした。田中角栄氏の事を詳しく知って、あらためて日本の歴史の1ページを学びました。
紙の本
田中角栄 戦後日本の悲しき自画像(中公新書)
2015/11/14 10:33
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:アマゾン - この投稿者のレビュー一覧を見る
歴史の流れをしっかりと中身を考えながら、伝えて行く書き方で復習と再発見に繋がりました。早野さんの作品は初めてでしたが、他も読みたいと思いました。
電子書籍
番記者すごい
2023/06/18 22:23
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
こんなことまで知ってるんだと思うことたくさんです。しかし、この作者さんは、書けるのはここまで、と限界を区切ってたんだろうな。ここに書けなかった裏のお話も聞きたいですねえ。
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田中角栄の生涯を縦糸に、戦後日本の政治史を横糸に話は展開していく。角栄は現実路線の行動の人であった。しかし、あまりに現実的な解決の方法は、後に破綻を来たしていく。
彼は戦後の混迷期の英雄だったのかもしれない。歴史上の様々な英雄たちに共通するところは多くある。
この本は素晴らしい本だ。この本に出会えて良かった。
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理化学研究所 大河内正敏
明治 三井、三菱、住友、安田
大正 日産、日本窒素、日本曹達、理研
長岡鉄道 寺泊ー与板ー来迎寺
大平正芳 高松高商ー東京商科大学
辻和子 佐藤昭
奥島貞雄 自民党幹事長室の30年
シュテファン・ツヴァイク 「ジョセフ フーシュ」
荒浜出身の理研ピストンリングの松井琢磨社長 原発誘致進める 小林治助市長
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書評などもいくつか出てたので、図書館ではふさがってると思っていたら、空いていたので借りてみた。新書ながら、400ページ超というボリューム。
朝日新聞で角栄の首相番だった著者は、ロッキード事件による逮捕から最期まで、至近距離で角栄を追い続け、話を聞いた。途中では新潟支局勤務を希望して、角栄の産まれ育った地、そして選挙区であった「新潟三区」を歩きまわった。
小学生のころ、テレビから聞こえるニュースで何度も聞いたのは「ロッキード」とか「コーチャンシ」「マルベニルート」「ゼンニックウルート」。年表を見ると、角栄が逮捕されたのは、私が小1のときである。その頃はまったく意味が分からなかったが、こうして通史のように角栄の足跡を読むと、そういうことなのかとようやく腑に落ちる思いがする。
角栄と中曽根が同年だというのも驚いた。同い年で、同じ戦後二回目の選挙で当選したという中曽根と角栄だが、いまも生きている中曽根、私が中学生から高校生の頃ずっと首相の座にあった(靖国参拝やロンヤスなどくっきり記憶にある)中曽根と、亡くなって20年経とうという角栄、私が小学校に入る前に首相だった(だから現役の首相という記憶がない)角栄とは、一世代くらい違う気さえしていた。
現役の議員とか首相としての記憶がほとんどなく、角栄といえばロッキード事件、選挙区への利益誘導や金による政治と、私は思っていた。その根本的な像は大きく変わらないものの、この本で、1918年、大正7年うまれの角栄が、どのように生い立ち、若い頃にどう飯を食ってきたか、どうして政治の世界へ出るに至ったかというところから読んで、角栄が何をしようとしたか、そして「戦後日本」がなぜ今のようになってきたかが、少し分かる気がした。
角栄が日本列島改造論にこめたものは、明治維新以来ずっと続く「都市への人口流動」を逆転させることだった。農村地域に第二次産業を配置し、雇用をうみだすという発想の源流は、大河内正敏の「農村工業」だという。
松下センセが体を張って反対した周防灘開発、その開発計画の立役者は角栄だった。1972年に出た角栄の『日本列島改造論』は、「都市と農村、表日本と裏日本の格差を必ずなくすことができる」と掲げていた。その「むすび」には、こう書かれているという。
▼「私が日本列島改造に取組み、実現しようと願っているのは、失なわれ、破壊され、衰退しつつある日本人の「郷里」を全国的に再建し、私たちの社会に落ち着きとうるおいを取戻すためである」(p.258)
全国に新幹線と幹線道路を整備し、全国を一日で往来できる「一日交通圏」「一日生活圏」ができる、ダムを100カ所つくる…この"官僚が上から目線で描いた青写真"について、早野はこう書いている。
▼…衰退する過疎地域は蘇生を夢見た。しかし、事情のわかる人は危惧も抱いた。何をするにせよ、土地買収が必要になる。すると地下が上がる。土地の騰貴対策が決定的に不足していた。水俣病、四日市ぜんそく、イタイイタイ病などの公害を見て、工業化を不安に思う人も少なくなかった。それに、これらの事業の前提となる経済成長、物価、財政などの見通しは大丈夫なのか。(p.258)
地価上昇にひきずられて、物価が軒並み上がった「狂乱物価」、さらには石油危機が襲い、高度成長は曲がり角にさしかかった。石油に頼りすぎては危ないと、火力発電以外の電源=原発を立地してくれる自治体に交付金を配る「電源三法」は、柏崎市長の小林治助の陳情に応えて角栄がつくった。
柏崎刈羽原発の青写真をつくった角栄と小林、その列島改造も、原発建設も、明るい進歩思想だったと早野は書く。だが、福島原発事故は「ふるさとの開発がふるさとの喪失になってしまう悲劇」(p.270)となった。
角栄が政界で出世しながらつくりあげていった利益誘導の仕組み、そういうものを壊そうとしたのが、小泉純一郎だった。小泉が唱えた構造改革、その構造とは?と問うと、「田中角栄がつくった政治構造のことだよ」(p.150)と小泉は答えた。
▼「道路」そして「郵政」。角栄がつくったのは、官につながる事業をめぐるカネと票のコングロマリットだった。それが自民党長期政権を支えるエキスだった。
自民党の派閥体質、政官業の癒着体質、すべては角栄を淵源としている。それを一点突破しようというのが「郵政民営化」である。…
…小泉はメディアをあやつって「郵政民営化」の是非を問う選挙に圧勝した。小泉によって「角栄の牙城」は壊された。(p.150)
ただ、壊されたそのあとが、それ以前よりマシなのかというと、そうも言えない。一層悪いかもしれない。
1976年12月の衆院選、ロッキード事件下で自民党は過半数を割る大敗北を喫したが、角栄は圧勝。角栄に有罪判決が下った後の1983年12月の衆院選、やはり自民党は過半数を割る大敗北だったが、角栄は空前の得票(22万票)で大勝した。角栄に託された票の意味を、この本では本多勝一のルポを引いて書いている。
先日の衆院選で、得票率は政権交代した前回とほとんど変わらない自民が「圧勝」したこと、その票の意味を考えてしまう。とりわけ、新潟をはじめ、自民が全選挙区を取った県で自民へ投票した人たちの思考は、本多勝一がかつて書いたものと変わらないのか、あるいは違うのか。
1976年、角栄を圧勝させたものは「中央に対するイナカ、「表」に対する「裏」、都市的・秀才的・エリート的な「日の当たる世界」に対する「ふみつけにされつづけた側」の怒りと痛み」(p.332)と本多は書いた。
角栄的なものが戦後政治の象徴だとするなら、今、そしてこれからは、どういう政治になるのだろう。それは過ぎてからしか分からないことかもしれないが。
(12/25了)
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田中角栄、という一人の政治家を通して戦後史を描き出した感がある一冊。評伝として、というよりは、角栄を取り巻いた自民党黄金期の党人たちの思想と人となり、そして現在に繋がる政策的論争の源流を知る、という点において意義ある作品だと思う。
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田中角栄の番記者が書く、田中角栄のドキュメンタリー。
俺が産まれた時点でロッキード事件で疑惑にかけられた元首相であり、詳細は知らなかったので、非常に面白く読めた。
角栄の歴史は、昭和の日本を歴史の相似形なんじゃないかと思うくらい、現代の日本に多大な影響を与えた政治家。
高等小学校が最終学歴で、戦後日本の庶民の星であったんだろうなと思えた。
一方、利権にまみれており、上越新幹線は彼の選挙区である新潟3区を縦断したり、「政治のカネをひとケタ大きくしてしまった」という悪しき影響も多かった。
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自由民主党の旧アイコン。氏を追った記者が記した本書は面白く、あっという間に読了。☆5。
本書とは関係ない話になってしまうけれども、大河ドラマばりに一年かけて「田中角栄」をやる!となったら見てみたい。総理大臣を境にして、階段を駆け上がっていった前半戦の光の部分、権力を握り続けたものの影がさしどこか物悲しい後半部分。角栄は、竹中直人とかがやるんだろうか…というか、レビューじゃないじゃんコレ。
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20160309~0325 実はだいぶ前に買って積読状態。最近旦那に先に貸してから、読み始め。首相に上り詰める前の、一議員としての活動の方が印象に残った。角栄は議員立法を積極的に提出していた。そのためには下準備が必要だが、そういう作業を行うことで、法整備のやり方なども学んでいったのではないか。
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早野透『田中角栄』中公新書、読了。毀誉褒貶の多い角栄の多面的な実像に迫る評伝。著者は元番記者。角栄を知ろうと新潟支局へ望んで赴任し越山会を取材した。
本書はその来歴と功罪を問う。角栄の生涯とは副題の通り「戦後日本の悲しき自画像」であり、戦後日本の私たち自身の姿である。
角栄への魅力と嫌悪--本書を読み終えると、良くも悪くも私たちは「大物」不在の現在を知ることになる。
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一気に読んだ。既知の内容が多いが、改めて昭和の政治史を学ぶ。そして昭和生まれの自分としては何か懐かしい感じがする。他方、今起きている事象や環境とも一脈通じるものを感じた。豊富なエピソード、読みやすい文体、過不足のない説明。事実が淡々と積み上げられている。良書。
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田中角栄の一生をコンパクトにまとめた新書。昨年(2012年)に書かれたことで、これまでの膨大な角栄関係の著作や資料などにも言及しながら、より冷めた視点で角栄を記述することで、より真実の田中角栄像が捉えられていると思う。
個人的には、田中角栄という人は、非常に男気があり、懐深く、人の気持ちの分かる魅力的な人物という印象。
一方で、政治家としての評価は良くも悪くも極端。
○は、抜群の実行力とリーダーシップ。山一証券倒産の時の金融危機の回避などは、政治家としての類稀なる能力を持った人。そして特質すべきは日中共同声明だろう。
×は、政治思想や政策。これにカネを加える人もいるかと思うが、やっぱり、あの時代はカネが絡むのは致し方ない部分もあると思うのであえて除外。
そして政策は、高度成長時代をそのまま駆け抜ける様な政策であって、もはや彼が総理大臣になった頃には、時代遅れの政策となっていたし、国の継続的な発展を推進するのが、政治の第一であり、富の分配はその次と思うが、これが逆転してしまっている。新潟における自分の幼少時の原体験をそのまま政治で解決しようという政治信条は、総理大臣にしては、ちょっと稚拙すぎる。
時代時代にマッチしたやるべきことが政治にはあり、それに優先順位をつけて、確実に実現していくことが政治だと思うが、そもそものやるべきことがズレていては、逆に実行力のあることが仇になってしまう。
「名君は、暗君にはならないが、暴君にはなる。」
つまり実行力があるから、良いことも悪いことも、やりきってしまう。それが角栄という政治家だろう。
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大作。素晴らしい。
昭和の怪物、波乱万丈。
田中角栄は、怒らない人だったのか。酷いめに会ってもただでは起きない。言うだけては無く、少しでも実行、前に進む。
昔の政治家は、金にものを言わせてた、酷い時代。今はましだろうけど、どうなんだろう?
たいへん勉強になった。
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偉大な政治家「田中角栄」。
その一生はよくわかっていませんでしたが、この一冊で理解できました!
まさかの政権交代を経て、自民党は今後どうなるのでしょうか?
そんなことを考えながら読みごたえのあった一冊でした。