紙の本
非常に分かりやすい論理的な憲法の本
2016/11/25 04:31
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投稿者:美佳子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「憲法論議を正しく楽しむための一冊」をモットーにしているだけあって、身近なたとえ話に思わずクスリとしてしまいます。しかし、本質的に法学に欠かせない論理性をもった説得力があり、世間の憲法論議の論点整理とその欠陥・矛盾点が分かりやすく提示されています。
この本の良い点は、平易な言葉遣いだけでなく、各章の量の適正さ、「そろそろ情報が多くなり過ぎになってきた」と感じるころに「まとめ」が来るようになっている、その構成のすばらしさです。参考書のようにそのまとめ部分が囲い込み記事のようになっていたら、その部分だけを読み直すことが容易にできるので、なおよかったのですが…
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あとがきに
素朴な議論に飛びつかず、難しい問題を知恵を絞って考えることには価値があるし、広く深い検討をし、精密な法概念を積み重ねて結論を出すことは、とても楽しいことである。
本書では、立憲主義・権力分立・人権保障・平和主義・改正手続と、憲法のほぼ全体系を見渡しながら、このことを強調してきたつもりである。
というわけで、本書では、「分かりやすい」素朴な議論に飛びつくことの問題をしてきした。
とある。
分かりやすいスローガン、素朴な議論がいかに問題か、ということが繰り返し指摘されている。「分かりやすい議論」には、つい納得されがちだし、また自ら「分かりやすい理由」を見つけて分かったつもりになっていることもある。事に則して丁寧に考えることが大事だと思った。
「押し付け憲法論」についての議論で、背景に敗戦の屈辱の物語があることを指摘。『雨月物語』の『白峯』を引き、西行が「いかにせん」の気持ちは自らが乗り越えなくてはならないものだ、と諭したことを紹介する。
”スジが通らない議論は、スジが通らないと論難し、「押し付け憲法論」を突き放さなければならない。しかし、それだけではいけない。あなたなら、スジの通らない議論に拘ってしまう浅ましい気持ちを乗り越えることができるはずだ、と尊敬を示す。”として、「押し付け憲法論」者とのコミュニケーションを促している。
確かに、この「屈辱の物語」を克服しない限り、いかに論理的に説いても、繰り返し、手を変え品を変えて改憲論が起きてくるだろう。
随所の挿入される著者独特の、やや荒唐無稽なたとえは、いささか「やり過ぎ」感がある。たとえを使うことで、状況が鮮明になるところもあるが、概ね、無くても理解できる。
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≪目次≫
序章 日本国憲法の三つの顔
第1章 憲法の価値を噛みしめるー国家を縛るとはど ういうことか?
第2章 日本国憲法の内容を掘り下げてみるーいわゆ る三大原理とは何を語っているのか?
第3章 理屈で戦う人権訴訟ー憲法上の権利はどう やって使うのか?
第4章 憲法9条とシマウマの檻ーどのように憲法9 条改正論議に臨むべきか?
第5章 国民の理性と知性ー何のための憲法96条改 正なのか?
終章 日本国憲法の物語ー事を正して罪をとふ、こ とわりなきにあらず。されどいかにせん
≪内容≫
若き憲法学者の本。とてもわかりやすかった。たとえ話も上手く使われているし、何より不勉強の私に、憲法の本質と現在の論議の争点(自民党の憲法への理解のなさ)がよくわかった。
①三権分立の意味と三大原理との違い
②「人権」の話
③9条の意味=外交宣言であり、諸外国に信頼を得るためのもの
④憲法改正論議の稚拙さ
⑤現憲法のできるまでのお話と改正論者の論点の稚拙さ
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○憲法学者で首都大学東京准教授の木村草太氏の著作。
○日本国憲法について、その位置付け、意味合い、規定内容の説明・沿革など、条文や背景をベースに丁寧に解説したもの。
○三権分立の理屈や憲法争訟、改憲論の矛盾点など、緻密な理論に基づき、論理的に解説されており、とても分かりやすく、かつ、スッキリする。
○改憲や護憲と聞くと、どうしても、”単純化”したキーワードで、なんとなく気分や雰囲気で考えてしまいそうだが、そもそも「日本国憲法」の内容や経緯などを知っているのかといわれると、自信がなくなってしまう。
○このままでは、著者のいう「改正論議に参加する資格などない」人になってしまいそうなので、しっかりと論理的かつ客観的な思考で、憲法について考えてみたい。
○また、少なくとも「『分かりやすい』素朴な議論に飛びつく」ような癖は無くすようにしたい。
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全体的に親しみやすさを重視して所々冗談も交えてるわけだが,あとがきには引いた…。もちろんそんな大袈裟な本じゃなくて,タイトル通りの軽い新書。
「本書が憲法の全体系を覆う内容であることからすれば、古の大憲法学者の書名にあやかって『憲法撮要』とか『日本国家本義ヲ定ム憲法ノ真髄及ビ精義』といったタイトルを付けたいところだ」
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憲法について巷間で論じられていないことを別角度から論じており、新鮮。「憲法は外国に向けた一方的外交宣言!」だと学生時代に藤原帰一教授から聴いた言葉が忘れられないとの冒頭。確かに米・仏・そして中国も、民主主義国かどうかなど、私たちはその国を理解するために憲法を読もうとする。目から鱗。全くその通りだと思う。「押付け憲法」とは欽定憲法である明治憲法ではないか、少なくとも現憲法は明治憲法の改正手続きを国内できちっと踏まえたものであり、「押付け」という言葉に込められた思惑があるとの筆者の主張は明快!
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本書は『テレビが伝えない…』というタイトルですが,それは,「テレビなどのマスコミが隠している事実を書いてあります」という意味ではありません。
テレビでは,視聴者に分かりやすい解説が求められます。しかも,短時間でコメントをする必要があるので,これは,この制約はある程度,仕方がありません。
ところが,その「視聴者に分かりやすく,簡単な解説」が曲者となるのです。憲法が持っている本質を説明したり,意見の食い違っている内容の問題点を解きほぐすためには,じっくりと論理を進めなければならないのに,テレビでは,それができません。時間が限られているから…です。
そこで,筆者は,色んな問題について,幅広く,じっくりと語ってくれます。
たとえば「日本国憲法は押しつけ憲法だ」というのも,その一つ。これ,GHQが押しつけた憲法だ!というのですが,それって本当なんでしょうか。では,大日本帝国憲法は,押しつけ憲法じゃないのでしょうか? そもそも,押しつけって,誰が誰に対して? …などと,「押しつけ」一つにしても,考えるべきことはたくさんあるわけですが,テレビやマスコミでは,分かりやすい言葉としての「押しつけ」が先行してしまいます。
これを説明するのに『雨月物語』「白峯」を出してきているのがおもしろいです。「押しつけ論者」をも包みこむ,この論理の展開は,必読です。
他にも,国際法から見た憲法9条の話など,私にとっての初めての視点があって,興味深く読み進めました。
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今までの改憲論者達に対するもやもや感が氷解した。特に9条の章は目から鱗が落ちる状態で感動した。国際法をベースに読めばなんら問題はなく「普通」な文章だということを。この条は国際社会に向けた外交声明だと認識すればいいのだ。
「自衛権の行使」と「自衛戦争」は違う。前者は当たり前で後者は悪。
「分かりやすいこと」素朴な議論に飛びつく危険さを知った。
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憲法は3つの顔を持つ。国内の最高法規、外交宣言、歴史物語の象徴。どの側面からの議論かを意識すべし。
再認&現状維持なのですが、まあそうかなと思いました。サンモール光洋台とか、カツラとネクタイの例がユニークでした。
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総論は同意なんだけど、ちらほら引っかかる。現状分析とその論理的帰結と学問上で多数意見のあるべき姿と自分の思うあるべき姿が意図的かは分からんが混同されているような… 読んでて議論をずらされていると思う。
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「国民主権」における国民の定義や、国際法、国連憲章を前提とした憲法理解はとても興味深い。理解しやすい良書
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筆者は分かりやすさの罠を本書の中で訴えていたが、この本は分かりやすかった。とても真面目そうに見えるので、内容も堅いものかとおもえばそうではなく、ユーモアに富んだ内容もあり、憲法以外の話題を上手く取り込んで読みやすくされている。押し付け憲法論に対しても、一笑に付して終わりではく、雨月物語の例を持ち出して、論者を見捨てない態度を示すあたりが好感が持てた。サンモール洋光台に行ってみたくなった。
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そもそも憲法とは何か。
しっかりと答えられる人は少ないと思った。
では憲法改正は何が論点で、何が問題なのか。
この本を読んだことで一旦整理が出来たと思う。
世には「解釈」という文字が良く出る。
一点からだけ光を当てれば、影がで反対方向に出る様に、光は意図的なものであり、解釈を争点にしても意味がない。
この本では国際法と憲法の内容の関係性を説いたことで、確からしい見解を述べ、一定の納得感を生じさせた。
何事も本質に近づく努力が必要である。
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法律に詳しい著者が日本国憲法について書いた一冊。
読んでいて著者が日本国憲法について護憲派であることや96条や9条の改正についても、国際法や成り立ちなどの観点から現状通りでいい点を解りやすく解説されており非常に勉強になりました。
また分かりやすい例えから入られたり、踏まえられたりしており、難しい憲法論の話だけでもなかったのもよかったです。特にアフガニスタンでアメリカ人が復興支援することと日本人が復興支援することの現地の方の心理の違いなどについては深く納得しました。
専門的な話も多くあり、理解するためにもっと知識が必要だと感じる部分もありましたが、知れば知るほど深みにはまる憲法の奥深さを感じることができ、メディアで議論されている憲法に関する話の深いところも知ることができたので非常に勉強になる一冊でした。
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TVの「分かりやすさ」を批判し、本というメディアで深い所まで伝えようという試み。著者は護憲派という印象だったが、国際主義の観点からは改憲も検討すべきという立場のようである。ただし、本著の中では集団的自衛権については反対のようである。しかしながら、篠田英朗『憲法学の病』には著者が「集団的自衛権は合憲である」と発言していた過去もあるようで、立場が揺らいでいるように思える。その時々の状況によって意見が変わる事は悪い事ではないので、その辺は著者の「柔軟性」ではあるのかもしれないが、首尾一貫性がないと批判されるのは止むを得ないのかもしれない。