紙の本
「中国」という文明
2019/01/20 18:17
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投稿者:コーク - この投稿者のレビュー一覧を見る
時事問題と絡め「文明」としての中国の歩みを近現代を中心に振り返っている。「清」という内陸アジアに君臨する同君連合という指摘は面白い。そしてその同君連合が「中華民族」という創られた虚構の上に包摂された悲劇は現在も続いていることを痛感した。
明治日本から齎された「近代」観念が現代日本を苦しめる一因となったのは皮肉でしかない。
同じ著者の『大清帝国と中華の混迷』と併せて読むとより理解が深まるだろう。
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日経夕刊でもレビューがでていましたが,読みごたえのある本でした。個人的には,もやもやしていたものが氷解したという読後感です。最近の東アジア情勢についてすっきりしないとお思いの方にお勧めです。
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なぜ中国は拡張主義的な政策を取るのか?周辺国との領土問題を悪化させるような態度を取るのか?という疑問について、歴史的あるいは思想的な答えを見出す書。
上記のような疑問についての氷解した。さらに本書では、中国の態度について、有効な反論(無論、これらについては、かなり説得力がある)をしている。筆者曰く、本書を書く動機に、日本の行く末が案じられるから、とあり、納得。
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この本が正確な中国との関係を書いたものかどうかという判断はできないけど、この切り口からの解説は僕の中に入ってきやすくて、すごくおもしろかった。
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【仕事】反日中国の文明史/平野 聡/20141202(93/267)
◆きっかけ
・職場図書室より、今回の中国初出張にあわせて
◆感想
・難しい硬い文章。もうちょっと平易な表現にできないか。出張後再読。
◆引用
・猛烈なスピードの経済発展により貧富の格差が拡大した結果、中国の内実は一つの国家というよりも、世界の縮図のようにバラバラ。
・日本の右翼化、集団主義は許せないが、中国ではそれが絶対であり正しい、というダブルスタンダード
・中国文明の世界観:不平等、上下、優劣の存在を前提として、それを理性的に操作する。=>朝貢貿易
・中国の理想の支配:すぐれた人格の聖人君子が良き統治に徹せることで、民衆がその徳になじみ、善政が実現する。
===qte===
普通こういったタイトルは現代の視点から中国を見て徒に感情に走る傾向にあるが、この書物は筆者自身が中国の近代史をきっちりと学んだ
上で、書かれているだけになかなかの説得力と安心感がある。
筆者はまず中国文明の基本は万物をつなぐ上下秩序であるという。
そして、その秩序を維持できない国家は滅びるという歴史感をずっと引きずって来ている。日本でいえば、明治以降、中国では清朝末期より
の日中の関係は、中国にとって残念ながらこの上下秩序を維持できていない関係となっている。いや、日本と中国の関係は、過去に遡って
も、足利時代のごく限定された時代を除いて、全く中国を目上の国と位置付けて朝貢を行うなどということが全くなかったのである。
朝鮮とは全く異なる歴史が日中関係においては存在した。まして、近代清朝末期より、その日中間の差異はますます顕著となり、中国にとっ
て大きなストレスになってくる。これは政体が共産主義であろうと全く関係のない歴史的事実である。
中国は今でも「新・華夷秩序」を目指し、実質的帝国主義の道を進んでいると筆者は断罪する。尖閣問題もまさにその典型であり、70年代に
尖閣近辺に石油が発見されたということで中国がいきなり尖閣を自己の所有と主張し始めていると言い切る。今、これを「領土問題」という
ことで日本が認めてしまうと、中国は過去から領土争いは力のあるものが奪取すべき問題との認識で一気に攻勢をかけ、ひいては沖縄に
すらその魔手を伸ばすのだ。
中国における共産主義も官僚の腐敗からそう長続きはしまい、そうなるとこの日中関係も好転の可能性が出てくると私自身は少なからず
期待もしていたが、やはりその考えも甘かったと思い知らされた気がする。中国との関係をきちっと知っておくという意味で必読の書物と
思う。
===
日本と中国との関係は近年悪化しているが、その原因や背景を把握するには、直近の状況、或いは近代以降のみを見るのではなく、長い二国間の歴史の流れを理解しないと現在が読み解けないものと考えられる。本書は政治外交史を専門とする研究者による、日中の歴史の来し方を踏まえた「現在地」の解説と言える。
中国文明の立場は、我々が慣れ親しんでいる対等な立場を前提とするものとは異な��、二者の関係では上下関係が前提であり、強者が弱者を従えるという考え方である。
更に周辺国とは朝貢関係の原理であり、(中国から見た場合)それは日本に対しても適用されており、中国は19世紀後半まで「天下」の中心という意識を持ち続けた。
日本と中国との均衡関係が崩れたのが19世紀後半であり、忠実な朝貢国であった琉球の取扱も一つの焦点となった。
中国の反日の源流は、近代国家としての日本の成功に憧れ、アジア人対欧米人という世界観の中で、日本に裏切られたとの思いに見出すことが出来る一方、現在の中国にはそれを正当化する論拠が乏しいとしている。
現在の中国が、日本の右傾化を許さないとする一方で、中国の軍備増強、集団主義を貫く所はダブル・スタンダードであり、「己の欲せざるところ、人に施すことなかれ」という論語の意味する所からは乖離している。
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日本経済新聞社
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福山大学教授 中沢孝夫
2014/12/28付日本経済新聞 朝刊
(1)人は時代といかに向き合うか 三谷太一郎著
(東京大学出版会・2900円)
(2)「反日」中国の文明史 平野聡著
(ちくま新書・840円)
(3)中小企業のマクロ・パフォーマンス 後藤康雄著
(日本経済新聞出版社・5200円)
(1)は「政治的誠実は結局知的誠実に由来する」という著者による日本の近現代の「知的共同体」論。南原繁、田中耕太郎、丸山眞男といった知の巨人たちの、戦前、戦中、戦後の思想的営為を読み解きながら、「時代」と「人」を浮かび上がらせている。「自らの思想を持つ者は、自らの古典をもつ」とする指摘は重い。
(2)は中国の文明と思考方法を厳密に点検しながら、現代中国の存立の根拠そのものが、日本への深いコンプレックスにあることを、実に見事に解き明かした本である。
(3)は「中小企業」を「同情」と「賞賛」の対象から解き放ちあるがままにマクロで捉えた画期的な研究成果。
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いったい現代中国は何者なのか。
およそあらゆる天命は、最初から存在するはずがない。後の統治のいかんによって、あるようにも見える呼ばないようにも見えるだけの事にすぎない。
中国文明の歴史はマルクス主義にはなじまない。毛沢東にとっては、現実に横たわるあらゆる障害をも意志の力で克服する主観能動性、悪く言えば万円根拠なき思い込みが最も重要になった。
究極のユートピア、共産主義社会の到来、労働に応じた分配ではなく欲求に応じた分配、共産党政権すら次第に死滅していく。
人間の選挙区制をを死滅させる計画経済、10官僚が巨大な利権集団として暴走する、赤い貴族と呼ばれる特権階級、
都市戸籍と農村戸籍、
毛沢東の文化大革命、子様ジー精神的後輩が残った、カンボジアのポル・ポト政権、連合赤軍、人々が唯一信じられるものは、ただ単にものとかねのみとなった。
中華民族と言う幻想、
共産党は、貧しい労働者と農民の党からナショナリズムを担うエリートの党へと変身、
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中華思想史、の超概略を日本の専門家が日本を視点に据えて書いたものである。が、タイトルのような軸ではなく、中国の話がメイン。近現代では先に開国に成功した日本から西洋思想を輸入したり、実際の軋轢が生まれてくる状況も書いている。
基本的には天命と易姓革命に基づく中華思想が、西洋及び日本に打ち砕かれてまた近年復活している。以前は相入れなかった国民国家の考え方と結びつき、強力なナショナリズムを中国共産党は推進しているという話がわかりやすく書いてあると思う。ちなみに著者の政治的なスタンスは、中国の人の意思に反する以上先の戦争は侵略であるが、今の中国が領土に関する膨張主義を取るのは周辺諸国にとって断固危険であり、了承できるものではない、というようなもの。
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中国近代史を客観的、俯瞰的に総括した良書。
近年の同国の外交姿勢の背景が良くわかる。
高校での歴史の授業の副読本にすべき。
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中国外交の基礎にある考え方を、文明論から説明。対日や対米の戦略だけでなく、中国がウイグルやモンゴル、チベットをどう考えているのかといったところがおもしろかった。漢民族が考えている中国の版図の中には、イスラームや仏教を信仰していてもいいという約束をしていた地域があった。そういった地域は、自分が中国の一部だなんて思っても居なかった。それが近代国家成立のタイミングで強引に「中国の一部」ということになったことから不幸が生じているのだという説明はわかりやすかった。
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近年の日中関係悪化の背景として、「中国はなぜこう考えるのか」という問題を長い歴史から考える素材を示すことを目的に執筆されている。
中国の歴代政府のベースにある考え方として、華夷秩序、儒学に基づく「徳治」「礼治」があり、それが近代国際関係とは相容れないものであること、そしてそれを無理矢理近代国際関係に合わせるために「中国人」「中華民族」としてのナショナリズムを清末民初に急ごしらえしたことが、日中対立の根底にあることを指摘している。
清帝国は、満州人皇帝が、漢民族には儒学的天子、モンゴル・チベットに対しては仏教王、東トルキスタンに対してはイスラームの保護者という顔を使い分けることによって成り立っていた多面的な帝国であり、満州人皇帝と個別の集団がそれぞれの論理で結びつくという統治構造であって、それは「単一の国民としての連帯」でなかったのに、国民国家を基盤とする近代国際関係に適合させるためにその領域に住む人々を「中国人」と定義し直そうとしたことが問題の根源になるという指摘は非常に興味深かった。
少し単純化されすぎているのではないかという部分もあったが、様々な中国問題の背景、中国近現代史の要点を理解するのに非常に有益な良著だと感じた。
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・社会主義革命はマルクスのみるところ、資本主義が高度に発達し、労働者が自律的に生産を担いうるほどに訓練された条件のもとで起こる
・一国の経済はあまりにも巨大であり、限られた党官僚が全てを把握することはできない。だからこそ市場経済は基本的に「神の見えざる手」に頼りつつ、経済政策で調整する
・毛沢東の文化大革命は、文化が傾倒する大革命であったが、傾倒した後は何ら新しい価値を生まず、凄まじい精神的荒廃が残った。人々が唯一信じられるものは、ただ単にモノとカネのみとなった
梁啓超こそ、中国ナショナリズムの最大の功労者であるが、「国民」は「単一の同胞=民族」でなければならないとしたところから悲劇は始まる
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2008年の北京オリンピックの成功とリーマン・ショックの克服、他国のリーマン・ショックでの弱体化を受け、中国夢がイデオロギーとして顕在化し、他国への外交政策が高圧的なものとなった。
中国の根底にある世界観
相互尊重ではいずれ世界に争いが絶えなくなるため、上下関係・差別があり、強いものが弱いものの上に君臨することを率直に認め、上に立つものが徳、思いやりを示すことで世界を調和に導いていく
儒学の「礼」の精神
すぐれた聖人君子が君臨するとき、王朝、社会も栄えるため、君子はまず自らの人格を高め、心の調和(中庸)を保ち、人間関係を保たねばならない。ではどう人間関係を保つか?
→上下関係を厳しく保つ
中は感情が動き出す前の平静な状態、
和は感情が動いたが、それが然るべき節度にぴたりとかなっている状態
朝貢と礼による「天下泰平」状態であった中国をゆるがすキッカケとなったのが、西洋列強と日本による近代化の圧力、とりわけ国家主権、国民国家思想である。従来の儀礼的な上下関係に過ぎなかった各地方との関係を、国家主権による統治として各地方をまとめ、宗主権をはっきりさせなければならなかった。(はっきりさせない場合、属国を国際法上独立国と判断できなくなる)
近代国際文明が求めているのは、すべての土地がいずれかの国家によってしっかりと管理された状態である。
朝鮮(長い間中国と朝貢関係にあった)から見れば、明の文明の輝きこそが尊重すべきものであり、明を滅ぼした騎馬民族の満州人(清)に朝貢するのは屈辱、そして朝貢すらしない日本よりも我々のほうが上国と見なしていた。
その後、国際関係は対等であるべき(西洋的日本の価値観)か、上下関係(朝貢的清の価値観)であるべきかを巡る、文明的一大衝突として日清戦争が勃発する。日本は勝ち、東アジアにおける「華」を中心とした上下関係の完全否定、すなわち朝鮮半島が独立する。
しかしその後は、不安定な朝鮮への関与の増大、日韓併合が起こり、これに下の国の価値観を持っていた韓国は当然反発。結局やってきたことが全部白紙になった。
日清戦争後、清のエリートは気づく。「皇帝による絶対天命などは無く、国民一人ひとりへの教育、議会を基盤に置く立憲民主主義こそが、国を強くする要因なのだ。」ここから、西洋の文化を日本を経由して(そのほうが漢字に直されてるぶん早いから)取り込もうとする。
自由で民主的な体制を実現するために、政府の専制によって国民をがんじがらめにし、まず貧困を脱出する→レーニン主義
労働者のための国家を作ったのはソ連。民族革命の組織を作ったのは中国。
毛沢東は農民運動こそ中国における歴史の原動力とされ、今もそう思われている。毛沢東は「礼」と「儒教」こそが中国社会の変革を妨げてきたものと信じ、旧社会をかなぐり捨て、マルクス主義の普遍的真理に沿うように中国を改造すべきだと述べた。
大躍進・文革を経て、中国は世界最貧国になる。こうした中、文明の崩壊を防ぐために、国としての究極のセーフティネットである「国民」をどの��うに創る(イデオロギー的に)のか、という問題が起こる。政治はあくまでエリートが担うものであり、民衆のものでは無かった今までの価値観を捨て、一人ひとりが国家の担い手であることを意識しなければ、他国の国民国家に対して太刀打ちできない。
よって、大清の天下ではなく、一定の範囲で区切ったうえで作り出した国民を、「中国」の名で自立しようと訴えた。現在の「中華民族」という発想、すなわち「もともとは多様だが、中国文明の求心力を軸に諸民族が対立と融合を繰り返し、ついにはひとつの国家・共同体を共有するに至った」とい発想が生まれた。
中国の民族問題は、近代ナショナリストが。非漢字圏の意向と関係なく清とい帝国の統治構造を改め、上から日本経由の近代的価値観を指導するという不均衡な上下関係に由来する。
一時期は五族共和路線(漢・満・モンゴル・トルコ系ムスリム、チベット)も取られるが、全て一つの民族になるべしという大義名分のもと同化する動きになった。
改革開放後、経済は急速に加熱するが、依然として一党独裁体制は残ったままであり、地方の商人は自分に有利な商業ルートを確保しようと、党員に賄賂を渡すなど、汚職・格差の拡大を招く。
こうした改革開放の混乱期の中で、自由と民主が必要だと思う人々が増え始める。→六四天安門事件の勃発
中国社会で不満が生じる根源である、「価値を独占するエリート集団の独裁」という現実には手をつけないまま、現代社会でやっていけるのか?これが今日も続いている
鄧小平は、マルクス主義の解釈を変え、中共が半永久的に中国、世界を導くことを「中国の特色ある社会主義」と言った。
爆発的な経済発展は、2~3億の中間層を生んだが、彼らは中共のうま味を味わっているため不満はない。しかし、農村部は都市戸籍と農村戸籍が分かれているため、都市部に移動できないばかりか、いきなり土地を国に取り上げられたり、経済発展のために公害の被害を受けても無視されているなど、不平等さが浮き彫りになっている。
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「反日」とあるから抗日ドラマをあげつらった偏狭なナショナリズム本かと勝手に予想していたが、それは著者に対して非常に失礼な思い違いであった。中国人の思考に通底する背景と日本に対する複雑な見方を数千年の歴史、思想から解きほぐした良書である。
中国という国は難しい。日本の知識階級にとっては「年老いた先生」であるが、そうでない階層(ちょっと婉曲すぎるかな)にとっては遅れた新興国に過ぎない。しかし日本から戦後賠償を取らず、逆にそのことが惜しみない経済・技術協力をもたらすなど、戦略的な思考と判断ができる底知れぬ国である。小中華の半島国家とは思想の深さがまるで異なるのだ。
もう少し中国思想に触れたいと思わせるに十分な内容であった。