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何かいつも読んでるミステリと感じが違うなあ…という違和感を残しつつも、ラストで明かされるトリックは圧巻です。読者が真相指摘できるような伏線は貼られてません。そういう意味では、「謎解きを楽しむ」ことに評価の重きを置いてる人には完全アウトです。直観的に閃く人はいるかもしれないなあ、なトンデモトリック。
そんな挑発的な作品にも関わらず、読後感が物足りません。人間の恐ろしい罪業が暴き立てられるドラマティックな終幕に比べて、探偵が謎解きに入る直前までの展開があまりに淡々としている印象です。たまにセリフの入った事件報告を聞いてる感じと言えばいいのか…うーん…。
「ミステリは連続殺人でなんぼよ~!」と日頃から豪語して憚らない(…)私ですが、今作では8人の犠牲者が出るにも関わらず、なんか物足りなかったのですよね~。「あ、人数の問題じゃないのか」と改めて気付きました(今更)。
あと、このトリック・題材なら、何も時代設定を明治にしなくても…とも感じました。明治という時代背景を十分に活かしきっていないような。四人の妾、っていう部分も、家族や愛人にすれば昭和か現代で通じるし。
後は、中盤での山形有朋との会談はまだ良しとしても、最後の伊藤博文の不平等条約改正に奮闘する政府の略歴はな~完全に日本史の講義を聞かされてる感じでちょっと笑ってしまいました。
何だかちょっぴり消化不良ではありますが、ラストで巻き返してくれた展開に敬意を表し、また次回作への期待も込めて星3つです!(普通…)
脅迫状が届いた数日後、山縣有朋の影の金庫番・漆原は謎の死を遂げた。首を切断されるという猟奇的な事件に、依頼を受けた探偵・月輪は、助手である杉山をを連れて漆原家が暮らす黒龍荘に住み込みで調査を開始する。四人の妾、優秀な秘書、漆原の旧友である医師、そして座敷牢に囚われた狂気の男…。警察と月輪の奮戦も虚しく、家人は次々と連続殺人鬼の魔手に倒れていく。最後の被害者が斃れ、捜査陣は決定的な敗北を喫したかと思われたが、探偵が失踪者の名前を突き止めたその時、驚愕の真実が明らかになる!
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長編の国内本格は久々。今どき珍しいストレートなガチガチの本格。首なし死体、童謡、連続殺人といういかにもな要素が逆にダサく思えなくはないけど、やっぱり本格はこうでないと!と思わせる展開が胃に優しくて効きました。
ガチの本格と言っても、どこかゆるい空気感を含んでいるので、隙は多々あるかも。荒唐無稽とも思える殺人によって拡げた大風呂敷の吸引力はなかなかで、怖いもの見たさゆえか、後半は一気読みとなった。
トリックを評価する意見多数だったので身構えながら読んでいたが、それでもこの真相は予想外。お初のパターンかな。なるほど、このオチはすごいわ。同じくすごいのが犯人の動機とその手口。こちらは逆の意味ですごいです。無理矢理にオチへと繋げようとする荒技と、あり得ない心理。それもこれもひっくるめての、ちょっとバタくさい本格ミステリということになるんでしょね。でもこのトリックは経験して損はないと思います。
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なんと言うか、いわゆる本格ミステリーで次々と館の人々が殺され、探偵が事件に迫っていく。
しかし、最後に明かされた真実はある意味現代のいろいろな事件にも適用されるような真実ですね。
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凄惨な殺人事件にも関わらず、何だかその雰囲気が伝わって来ず。
手記というかたちのせい?…って思ってたんやけど、最後の方で(多分)理由が分かった。
現代にも似た事件が起こっているし、とても怖い。
それにしても月輪は名探偵じゃないなぁ。前作の「伊藤博文邸の怪事件」では、きちんと活躍しているのか気になるので、多分読むだろう。
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わらべ唄に見立てられた連続殺人。しかも首なし死体がこれでもかというくらい出て来る王道なストーリーで横溝正史作品を思い起こさせます。山縣有朋や伊藤博文が登場しますが、歴史ミステリーではないので肩肘張らずに気軽に読めます。
残り30頁を切る辺りから16個の謎が一気に解き明かされる解決編は圧巻で、悪魔的な構図の反転は強烈なインパクトを残します。
見立て殺人にする必要性が薄いこと、伏線が少なく推理出来る余地が無いなど不満な部分はありますが、トータルで見れば十分満足出来るのではないかと思います。
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本格ミステリ。
舞台は明治初期。まだ科学捜査が進んでいないため首無し死体があると本人の識別が困難な時代だからこそ成り立つミステリではあるが、オチはなかなか。あまり伏線はないがオドロオドロしいミステリの雰囲気を充分に楽しむことが出来た。
前作もあるようなので読んでみる。
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前作『伊藤博文邸の怪事件』では
明治時代という時代性を感じさせる雰囲気作りや
設定の説明に力を注いでいた中でのミステリーだったが
本作では徹頭徹尾本格ミステリーとして書かれたもの
という印象を受けた。
おそらく前作から本格ミステリーをかなり研究して
童謡見立て殺人、首切り殺人、館ものなどのギミックを使って
月輪龍太郎と杉山潤之助を明治時代の殺人事件の中で
どう動かしていくか練り込んでいったのだと思う。
推理材料としての手がかりの適切な描写という点では
やや不満は残るものの、次から次へと物語が動いていく
展開のスムーズさと、本格ミステリーとしての楽しませ方、
最後のどんでん返しなど、ミステリー小説として
極めて高い水準にあることは間違いない作品。
他の事件簿の存在もほのめかされているし、
シリーズ化が期待できるので続編を楽しみに待ちたいと思う。
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前作で伊藤博文の書生だった月輪は探偵に、語り手の杉山は役所勤めをしている。
今回は山縣有朋にゆかりの深い人物が邸で惨殺され、捜査を依頼された月輪たちが泊まりこむ中、次々と邸の人間が殺されてゆくという連続殺人。
首なし死体、わらべ唄の見立て、事件が終わるまで翻弄され続ける名探偵などたいへん横溝チックだが、最後に明かされた真相はこの時代でなければ成立しないものの、妙に現代的でもあって面白かった。明治的な雰囲気作りという点では前作の方が上かもしれないが、本格ミステリ直球な姿勢に好感が持てる。
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山縣有朋の側近だった漆原の殺害事件。首の無い死体。山縣が起こした疑獄事件。漆原に送られる脅迫状。黒龍荘と呼ばれる漆原の屋敷に住む4人の妾と秘書・魚住、医師の畠山、監禁される精神を病んだ漆原の従姉妹の健次郎。漆原家に伝わる童歌に見立てられる連続殺人。首を切り取られる被害者。漆原家のならびに住む門井家の住人。
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月輪探偵シリーズ、2作目。
前作も読んでいるが、2作目の今作、意外なほど捻りのある本格モノになっていてビックリ。やはり無理は感じるものの、それでも大胆かつ悪魔的で、面白いトリックだった。明治時代という時代設定だから可能なトリックであるのだろうが、前作よりあんまり時代色は感じられなかったのは、明治好きにはちょっと物足りないところ。でも逆に、歴史モノが苦手な人でも十分読めると思いマス。本格好きの方は読んで損はないんじゃないかな。
にしても、最後まで人が殺されないと謎は解けないようになっているのが、本格モノなのかな(苦笑)。月輪探偵のへっぽこぶりにはちょっと、、、。というか、前作とは別人のはずじゃなかった??その辺の言及がなかったのが、ちょっと??だった。肝心の月輪のキャラ造形がいまいちだったけれど、助手の蘭子ちゃんは可愛かったデス。他にいろいろ事件録はあるみたい(?)なので、続編に期待。
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前作よりいろいろボリュームアップしてて、『伊藤博文邸』より面白くなってた。ただ、やはりこれは作風なのかなぁ、全体的に遊びの部分が物足りない印象。
ここで言ってる「遊び」ってのは、登場人物(主人公ペア)の推理以外のネタでの会話とか、雰囲気を出すための風俗描写など。
脳内でイメージを膨らませるためにそういう遊びがあるほうが、読み物として読んでて楽しいんだけど、この人の作品は
事件→捜査→食事→捜査→就寝→次の事件発生
みたいに、淡々と事件の流れの記録だけが続いている印象で、読み終わってふり返った時に、作品のトリック部分以外、印象が残らない……。
(そういった点では、秘書の蘭子さんがいちばんステキキャラでした)
解決編をあんなギリギリまで持ち越すバランスもちょっとアレな感じもしますが、全体的にはミステリとして楽しめました。力作です。
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昨年の話題作を今更ながら読了。
歴史上の人物を絡ませた事件ではあるものの、リアリティはあまり感じませんでした。そもそも本格ミステリにそれを求めるのは酷なのでしょうけど、その時代特有の情景というものがあまり伝わって来ず、小説として楽しめるかというと微妙です。
その代わりと言ってはなんですが、ミステリ部分はよく練られており、まさに長編向きの大技が炸裂しています。すぐに思いつく前例もありますが、バリエーションと言っていい範囲内でしょう。
このシリーズは今現在第3長編執筆中で、文芸誌では短編連載もスタートしているようなので、追ってみようと思います。
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タイトルに劣らぬ凄惨な事件だった。
現実に起こった事件を下敷きにしてるかのような真相だったが、こういった利用の仕方をするのは実に上手い。
しかし現実に起こった事件の方がより凄惨であるから恐ろしい。
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豪邸で次々に起こる殺人事件。わらべ唄、いくつもの謎、意外なトリック。先が気になってサクサク読めたし、ミステリーとしては面白かった。でもエンタメとしては物足りない感じもする。ワトソン役の潤之助が常識人なのはいいとして、探偵役の月輪が有能なのか無能なのか分からない。有能ならもう少し切れ者っぽい感じ、無能ならもう少し間抜けな感じが欲しいかなあ。助手の蘭子女史は面白いキャラだったけど。人物描写が軽めなので物足りなく感じるのかも。
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事件性の陰惨さは確かに頭抜けてる。
なので、犯人の異常さはなかなかに興味深い。
その分、探偵と助手の印象の薄さ、次から次へと事件が起こるのに、何やらちっともドキドキハラハラしないのが残念。
ものすごいことが起きているんだけどね……?
登場人物におしなべて魅力がないせいか、読書としては盛り上がらず。
大好きな館もの、導入部で期待値が上がっていた分、ちょっとがっかり。