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高い城の男(ハヤカワ文庫 SF)
  • みんなの評価 5つ星のうち 3.7 74件
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  • カテゴリ:一般
  • 発行年月:1984.7
  • 出版社: 早川書房
  • レーベル: ハヤカワ文庫 SF
  • サイズ:16cm/431p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:978-4-15-010568-6
  • 国内送料無料
文庫

紙の本

高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF)

著者 フィリップ・K.ディック (著),浅倉 久志 (訳)

【ヒューゴー賞(1963年度)】【「TRC MARC」の商品解説】

高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF)

972(税込)

ポイント :9pt

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みんなのレビュー74件

みんなの評価3.7

評価内訳

はるさめに ぬれつつやねの てまりかな(与謝蕪村:本書p.66より再引用)

2007/09/13 08:45

11人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:Living Yellow - この投稿者のレビュー一覧を見る

私は今、安部晋三氏の辞任の新聞記事を読み終え、本書を久々に取り出した。本書を、文字通り、喜びに胸震わせつつ、手にとって、もう二十数年。今も昔も乱雑な部屋の中、さらに混乱を極めた本棚ではあるが、机に向かって左手を伸ばせば、本書だけは目をつぶっても取り出せるようにしてある。裏ディック(神秘主義)・表ディック(ストーリーテラー)双方の長所が最大限生かされた彼の最高傑作である。安部氏を批判する資格も意志も私にはない。ただ彼ないしは彼の身体がいちはやく気がついただけだ。日本の世間の一部が気がつかないうちにはじまっていた世界戦争(文字通りの戦争である)が、彼の意志を超えた動きを見せ、彼自身の物理的存在さえもおびやかしはじめたことに。私もまた抵抗できない大きな流れの中の、ほんの小さな芥子粒として巻き込まれつつあるのだ。まだ飯の後始末もしていないのに。でもやるんだよ。流し台で意味もなくピカピカにシンクを磨こう。
 本書は独・日・伊:枢軸国が第二次世界大戦で勝利し、地中海地域をムッソリーニが比較的穏健に統治する新ローマ帝国(この辺のディックの、「身体を愛する」一独裁政治体制であるイタリア・ファシズムと「身体を抹消する」本質的に政治体制ですらないナチズムのさりげない区分は見事である。「天皇制ファシズム」などという、戦前のコミンテルンの用語を使ってしまう方々には、この意味でも本書をご一読されたい)、ユーラシアの大部分、アフリカ(ホロコーストのさらなる発達・拡大)、南米、北米大陸の半分を支配し、さらには、月面にも手を伸ばす(V2ロケット技術の継続)、ヒトラーの後継者、ボルマン率いるナチス、そして戦前からの議会制に復帰し、民生品生産技術を発達させ、ユダヤ人をも許容する穏健な統治を環太平洋地域・北米の半分で布く日本(買いかぶりすぎではあるが、日本の戦前「デモクラシー」との連続性のディックの認識はここでも的確である)、この三つの戦勝国で三分割された世界が舞台である。そんな状況下、2冊の書物が人々の間で流通している。中国の古典『易経』(実在の書物である:岩波文庫刊)、そしてもう1冊は地下出版のベストセラー、『イナゴ身重く横たわりて』というアメリカ:連合国側が勝利した後の世界を描いた『SF小説』である。
 米国駐在の一日本人中年官吏田上氏(戦前アメリカ小物オタク)、一ユダヤ人失業者フリンク氏、彼の離婚した妻ジュリアナ、戦前アメリカ骨董店の店主チルダン氏は、それぞれに平穏とは言えないが、普通に悩み、職探ししたり、ナンパされたり、商売に励んだりしていた。幸福ではないが凡庸な日々。
 しかし、ある一人の男の死が、薄皮一枚で隠蔽されていた戦争状態を露わにする。ボルマン・ナチス総統の死去の噂:次期総統を巡る権力闘争:日本側の介入の試みが、一官吏田上氏、そしてそれぞれの平凡な人生を大きく動かしていく。そして彼らは、全体像も見えぬ、目的も定かではない、流れの中で、限りなく小さく、はかない存在として、懸命にもがき続ける。
 「われわれは自分の生命を守るために、悪の権化が政権につくのを後押ししなければならないのか?それがこの世の状況のパラドックスなのか?」と田上氏は自問する。(本書p.284より)。しかし。彼は一官吏として、そこから逃げずに踏みとどまり、苦しみを引き受ける。 
 「ほんとに、輪タクだったかい?運転手がペダルをこいでいたかい?」(本書p.353より)
 そして、ジュリアナは歩き出す。
 「動くもの、光り輝くもの、生きたもの、彼女をモーテルまで運んでくれるものを探し求めて。」(本書p.391)

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SFが嫌いな人達に

2003/01/12 22:23

7人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:kokusuda - この投稿者のレビュー一覧を見る

これは小説は読むがSFは嫌いだ、読んだこともない、という人に
奨めたい作品です。

長編に関して言えばディック氏はとてつもなく落差を感じる作家です。
良い意味でも悪い意味でも…
ツボにはまると、とんでもない傑作に仕上がるし破綻すると
麻薬患者(ピー)の戯言になってしまいます。
傑作を読んだ時には宇宙に達するような高峰から下を覗き込む
ようなクラクラした感覚に陥りますし、違う場合は何でこんな物を
読んじゃったのかな〜頭痛がグラグラしてきます(笑

この作品はアイデアに降りまわされずプロットも破綻せず
淡々と話が進んでいきます。普通の小説のように…
しかし、その中にも異世界がちりばめられているのです。
易経という形で、枢機国という形で、登場人物の言葉の中にも…

ストーリーの中にちりばめられた異世界はサブリミナルのように
貴方の心の中に染み渡っていきます。
そして読了後の自分自身の中に何を見出すのでしょうか?

ちなみにその後の作品に関係する単語やプロットがいくつかありました。
SF好きな貴方は、いくつ見つけられましたか?
1964年に早川書房から出版され1984年に文庫になっています。
64年版の故川口正吉氏の訳を一度読んでみたいものです。

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紙の本

何故か現実感あり

2016/01/11 00:44

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:hiro - この投稿者のレビュー一覧を見る

ディックの作品は、近未来を描いたSFなのだが、妙に現代社会と重なるところがあり、彼の考えた近未来と現在とが妙にリンクしているような気がする。

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電子書籍

ディック再見。

2015/09/29 14:07

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:easygoer1963 - この投稿者のレビュー一覧を見る

ディックの最高傑作と誉れ高い本作がAmazon Studiosによってドラマ化されるというニュースを見て、およそ30年ぶりに読み返してみました。
今までは電子書籍に抵抗がありましたが、いろいろな端末で読めて場所も選ばず便利ですね。
久しぶりに自我を揺さぶるディック・ワールドを堪能しました。
これを機に他のディック作品も再読してみようと思います。

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紙の本

読後すぐよりも時間が経ってからじわじわくる独特の雰囲気

2016/05/21 14:21

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:更夜 - この投稿者のレビュー一覧を見る

もし・・・だったらというifものですが、読んですぐよりも時間が
経ってからの方がじわじわときます。
全体を通して「陰の世界」何をするにも易経で占ってからという所に、
現実とは違う戦後の人々の不安と不信を見るような気がします。
そして物語に書かれた世界が、逆(本当の歴史通り)だとしてもどこか違う。その違いが奇妙な違和感となってざらざらとしています。
決して読みやすくはなかったけれど、それでも登場人物たちの憂鬱感は、
著者独特の世界。

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紙の本

もやもや・・・

2016/05/03 06:54

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:とめ - この投稿者のレビュー一覧を見る

第二次世界大戦で日独伊同盟が勝つと、イタリアは勝ち組から落ちこぼれ、宇宙開発が今より進み、易経が意思決定の基準となり、将来的に日独も敗北する卦が出ているという虚構に未来を託すというもやもや感で終わってしまう書。

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紙の本

高い城の男

2016/11/07 12:40

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:によ - この投稿者のレビュー一覧を見る

まさに、今欲している言葉が山ほど出てきた。

この本で重要なのは「第二次大戦でドイツと日本が勝っていたとしたら、その時のアメリカは…」という設定自体ではなくて。

・狂気と正気。
・闇の中に生じる光の種子と、その芽吹きによって生じる闇とによって繰り返される、消滅を免れる世界というもの。
・主観的歴史にまつわる、<仏教の文化>と<キリスト教の原罪>という考えについて。
・そして、全ての道が何らかの悪に通じているとしても、一歩一歩選択することでしか結末を左右出来はしないのだということ。

真逆のようで一対のそれらの上で混乱をきたして選択を放棄しようとした私が、今確かに、読むべき本だったのだ。

すごい本だった。
(たとえ、登場人物の日本人がハリウッド風の謎日本人と謎中国人のハイブリッド的だとしても。)

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2004/09/27 04:00

投稿元:ブクログ

状況に流されている男が決断した時・・・というのはディック不変のテーマだね。話が「まとまっている」のがディック「らしくない」ともいえるか(笑)

2007/12/13 12:21

投稿元:ブクログ

きれいなディック(笑)。歴史改変SFとしてはいい感じだけど読者がディックに何を求めてるのかっていうのがこの人気に表れてる気が。

2012/08/28 18:40

投稿元:ブクログ

1962年発表。第二次世界大戦の勝者が枢軸国となっている世界の話。舞台はアメリカだが、東海岸はナチスが支配し、西海岸と南米は日本の「太平洋共栄圏」になっている。片田舎のロッキー山脈連邦は日本よりである。アフリカはナチの地中海干拓にともないドイツ人が入植し、ロシアも同様にドイツが入植している。また、ナチスは火星入植も計画中。そんな「時代」を生きる人々の心理が緻密に描写されていく。主人公は、フランク、田上、ヴェゲナー、チルダン、ジュリアナと複数おり、彼らの物語が交互に積み上がっていく構成である。ユダヤ人であることを偽って生活しているもの、日本人の収集癖に寄生して生きているアメリカ人、ナチスの日本殲滅計画を防ごうとする情報部員などの物語である。日本のアメリカ進出にともなって『易経』の占いが普及しており、フランク・ジュリアナ・田上といった人々が占う卦によって物語の行方が暗示されていく。また、こうした倒錯世界のなかで史実どおり「ドイツと日本が負けた」世界を描いた小説がベストセラーになっており、物語のなかの物語として登場し、そして最後にこの「物語のなかの物語」が「物語」にはみ出してくるという筋立てである。アメリカ人が「身分」を気にしたり、美意識や交渉術に劣等感をいだき、自分たちを「野蛮人」と見なしているなど、占領国民の心理を克明に描き、この点はリアリズムである。ディックの作品はよく途中で主人公が自ら幻覚をみて、「信頼できない語り手」になってしまうため、読むのが難しい。『易』や俳句、『チベットの死者の書』など、いわゆる「ニューエイジ」的な要素も多くある。歴史イフものと言えば、それまでだが、戦勝国のアメリカ人作家が書いており、日本のもののような一種の恨みがましさとか国粋的な感情は比較的弱い。ディックの他の作品のように映像化することは困難だし、むずかしいだろう。時間SFのなかでも「別の現在」を扱うタイプのSFである。

2012/08/01 19:57

投稿元:ブクログ

それぞれ全く違う生活を営む登場人物たちが、後半に行くにしたがって少しずつ関わりを持っていく過程が上手い。ほんの些細な関わりでも、大きなズレを生んでいく。
歴史改変ものの話の中で、歴史改変ものの小説が流行っている、というところが面白いなぁと思った。
登場人物が多く、把握に少し手こずった。また再読して整理したい。

2007/03/13 15:21

投稿元:ブクログ

これ、結構有名な作品ですよね…。うーん、どこが面白いのか良く分からず(汗)基本的にSF好きなのになぁ。

2011/06/02 15:09

投稿元:ブクログ

歴史改変もの(第二次世界大戦でドイツ=ヒトラーが勝利したら)を読もうと思って読んだ一冊。

この作者の本と言えば「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」を、というか、それすらも映画「ブレードランナー」を見た折に買ったものの読んでいないという状態。

というわけで、あくまで映画「ブレードランナー」を基本にした感想だが、まず一番に思ったのは「東洋趣味」。物語の重要な位置を占めるのは「易経」・・・そんなもので人生の選択を決めてよいのか?!西洋人の到達する「オリエンタリズム」「禅」などの領域には辿り着けそうにない現代日本人の自分を感じた。

また全体の印象も憂鬱で悲観的、どんよりと曇った雰囲気がかの映画の色調を思い起こさせる。パンクな女性柔道家の存在もアンドロイドの女性戦士プリスに似ている。

日本やドイツが勝利した世界で逆の世界を小説に書いた男=高い城の男が最終的に得た回答は「どっちでも変わらない」という結論。これまた、「胡蝶の夢」を思わせるようだ。

最も好きなシーン→占領される側であるアメリカ人の古美術屋チルダンが日本人の価値観に迎合せずにアメリカの現代アートを育てようと決断するシーンが印象的だった。

2016/04/24 13:09

投稿元:ブクログ

満を持して読んだ一冊、なのだが。。。

「ブレードランナー」の原作
「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」
の作者フィリップ・K・ディックによる
第二次大戦で枢軸が勝利した世界の物語。

1960年代初頭。
米ソと同様にドイツと日本が冷戦状態にあり
アメリカは東海岸がドイツ
西海岸が日本のエリアに分断され
その間に緩衝地帯がある。

※参考までにリドリー・スコット製作の
 TVドラマのトレーラーをご覧下さい。
 https://www.youtube.com/watch?v=hzz_6dmv03I

枢軸が支配する世界は価値観や規範が
大いに混乱していて、まるで迷宮だ。
登場人物はみな常に不安の中にある。

現実の世界も今や根底からカオスに陥っていて
結局どちらが勝とうと支配しようと
人間の世界は変わらないということだが
ディックが、その中で人々がすがる「バイブル」を
中国の「易経」にしているところには
どうしても違和感がある。

ところが解説を読むと
ディックは私生活でも易経を使っており
この作品を書く時も、人物を動かす上で
易経を使ったのだそうだ。

そうか。。。それならば仕方ない。
私は中国を日本と混同されるのが好きではないが
それが彼の書き方だし
これはフィクションなのだから気にしてはいけない。

またディックは
ドイツ人を冷酷、非情、機械的な人々として
日本人をミステリアスで繊細、
控えめで思慮深い人々として描いている。

繊細でミステリアスな日本人たちが
この混沌とした作品の中で大きな魅力になっているが
少々ステレオタイプであることは否めない。

さて「高い城の男」とは?
彼は、連合側が勝った世界を描いてナチに命を狙われている
作家アベンゼンのことだ。
正直、もっとダイナミックな展開があると思ったが。。。

総じて
特異な世界を描ききっているとは言えず
どの登場人物にも感情移入ができない。
期待が大きかっただけに落胆も大きい。
B級娯楽小説。

2009/04/17 00:33

投稿元:ブクログ

先の大戦で枢軸側のドイツ、イタリア、日本が勝利し、アメリカはドイツと日本に分割統治される世界を描いたSF。

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