紙の本
怒濤の迫力!
2004/04/15 07:47
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投稿者:風(KAZE) - この投稿者のレビュー一覧を見る
マクリーンでは、何たって『女王陛下のユリシーズ号』!
読んだ時の圧倒的な感動は強烈でした。
怒濤のように心に迫り、ぐいぐいと引きつけて離さない。
どころか、読み進むにつれていよいよ引きずり込まれていく
男たちのドラマ。
しびれました。
心が震えるようなああいう感動は、
そうそう味わえるものではありません。
海洋冒険小説では、ジュール・ヴェルヌの『海底二万里』も好き。
しかし、マクリーンのこの『女王陛下のユリシーズ号』は
それ以上に好きです。
崇高で、しみじみと胸を打つ男たちの心意気。
私が音楽を響かせるとしたら……と考えて浮かんだのは、
ヴェルディの「レクイエム」。
力強く、荒々しく、輝かしいその調べもて、
「ユリシーズ号」の乗組員たちの不屈の魂を
慰めんことを。
紙の本
男なら、読め
2004/02/23 00:39
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投稿者:8823 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「ナヴァロンの要塞」など、超大作戦争アクション映画の原作者として有名なアリステア・マクリーンが初めて書いたベストセラー小説。
時代は1943年ごろの北大西洋。ヒトラーの攻撃を受けて苦戦するソ連への援助物資を、イギリスからアイスランドを経由する嵐と極寒の海原を抜けて運ぶ、連合軍の「援ソ輸送船団」が物語の舞台だ。もちろん敵は気象条件だけではない。海面下にはドイツのUボートが船団を待ち構え、さらには敵の爆撃機や巡洋艦も牙をむいて襲い掛かる。男たちの必死の戦いにもかかわらず、次々と沈んでいく輸送船や護衛艦。そして敵巨大戦艦ティルピッツまで出撃してくるとの情報に、事態は最悪のものに…。
この作品は単なる戦記小説とは異なる。北極圏の嵐が増幅する過酷で激烈な戦闘シーンは確かに圧巻で、凶暴とも言える迫力で読み手の心臓をつかんで引きずり回す。だが戦いの経緯とか最終的な勝敗の帰結は作品の核心ではない。物語に登場する乗組員の男たちの互いへの信頼、献身、そして自己犠牲といった精神の崇高さを、彼ら一人一人への心からの共感を込めて描き切っていることこそが、本作品を際立ったものに仕上げている。
「病を押して出撃し乗組員に感謝しながら死んでいく艦長」や、「炎上して船団を危険にさらす父親の船を、自ら魚雷を放って処分する水兵」「船を救うためハッチを外から閉めて水の中に沈んでいく機関員」。物語の男たちは皆、絶望的な運命の中で優しく美しい。
戦争という異常な状況下でまさに人間の真価が問われるとしたら、ユリシーズの乗組員たちに私はその至高のものを見たような気がするのだ。
紙の本
冒険小説の源流
2001/09/17 15:47
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投稿者:猫 - この投稿者のレビュー一覧を見る
冒険小説なる単語が宣伝に使われたのは、本作がはじめてらしい。実際、ひとつのジャンルの流れを作るだけのパワーにあふれている作品だ。シンプルなストーリーラインの中で、魅力的なキャラクターと迫力ある自然描写が、たっぷりと楽しめる。
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援ソ物資を積んで北極海を行くユリシーズ号に襲い掛かる、仮借ないあらゆる困難。
これでもかというくらいに不幸が押し寄せ、だーだー泣いてました。
文章が上手いとか構成が上手いというよりはただひたすら迫力があるという話。凄い。
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誰が主人公と言うわけではないので、感情移入できる相手を見つけるまで(あるいは見つけられないかもしれないが)最初はとっつきにくい。舞台は第二次大戦でも最も過酷な戦場の一つだった北大西洋。Uボートだけでなく、凍える海と空が艦とその乗組員を苦しめ、絶望的な中で生き残るというよりは、如何にして死んでいくかを描いている。この話を「滅びの美学」と呼んだ人がいたが、まさしくその通りだと思う(ただし、決して戦争を美化する物ではない)。過酷な内容と淡々とした突き放した文体は、苦手と思う読者も多いだろうが、肌に合った人にとっては何度でも読み返したくなる。
内容の厳しさとしても、話の取っつきにくさとしても、読む者に覚悟(汗)を要求するが、
近代海洋冒険ものの名作と呼ばれる作品。(これを「冒険」と言ってはいけないのだろうが、分類状勘弁して欲しい)
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海洋冒険小説。厳寒の海の話だが、内容は熱い。
海と軍艦が舞台なので用語になじみが無かったり、ちょっと読みにくいところはあるかもしれない。それでも、登場する男たちの生き様が見られるので、お勧めです。
あとがきにもあるが、艦長が巡検するところは名場面の一つ。
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独ソ戦における援ソ物資の輸送船団を護衛する英国巡洋艦ユリシーズとその乗組員たちを描いた海洋冒険小説の古典的名作。さすが古典と呼ばれるだけあって、冒頭から極限状況で始まり、北極圏の航海の自然の脅威、Uボート、フォッケウルフなどとの戦闘などが最後までのべつ幕なし訪れるという、容赦ないストーリー展開も凄いが、なんといってもその場にいたものでないと描けないような描写が圧巻で、これはもう「すさまじい」としかいいようがない。とにかくその筆致で読ませる。極限状況にせまりきった結果辿り着いた人間像の描き方にも感銘を受ける。
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重いです。だけど、大名作です。何もかも忘れて没頭したい本、それだけの価値のある本。
第二次世界大戦の、輸送船団の話だから、まあ戦争物なんだけど、そういう安易な括り方をしたくない。いつも同じことばかり書いているみたいでやだけど、ここに出てくる男達のかっこいいこと。極限状態に近い(というよりそのもの)の中だからこそ迫ってくる、一種の純情さというか、男気というか、そういうものがいいんだ。
だから、安易なハッピーエンドなんか、はなから求めてはいけない。マクリーンの描く濃厚な世界にどっぷり身を沈めて、最後にどこに行き着こうが、ふっと深いため息をついて、ライトを消して、枕に頭をあずけるべき本だと思う。
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おそらく20代前半の読了、学生の頃。
海洋冒険小説の金字塔、読んでいくうちに自分が巡洋艦ユリシーズのクルーとなっている。船は女性に例えられる、最新鋭感知システムと武装を施された巡洋艦ユリシーズ、華麗なるドレスを纏った貴婦人が、極寒の海と暴風雨にさらされ、Uボートと空爆の猛威が襲い掛かる、男達は彼女を守るため戦う、疲れ傷ついた身体に鞭を打って…
涙なしには読めない物語。
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海洋冒険小説というジャンル。3・4年前の雑誌の書評に高評価であったの見て、いつか読もうと思っていたが、書店になく、本日偶然見つけ購入。
大航海時代ぐらいの小説かと思いきや、意外にも、第二次世界大戦のフィクション。
但し、作者が、戦艦勤務経験があり、経験者でなければわかりえないであろう日常がちりばめられている。
映画タイタニック、眼下の敵などの船モノの元ネタとなっているであろう古典的名作。感動的エピソードがふんだんにあり過ぎで、やや未消化。
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第二次世界大戦において船団護衛に従事するイギリス巡洋艦の物語。
原題は『H.M.S. Ulysses』なので邦題は確かに直訳だが(Her Majesty's Ship Ulyssesなので)、HMS自体英国海軍の艦船に対する呼称なので、おそらく英語圏では邦題ほどの意味はないのでは。
実際に作中でも王国だとかそういった要素はほとんどない。
日本で戦記物というととかく無常感がつきまとうが、これでもかと襲いかかる敵をはねのけ、それでもムルマンスクへ進もうとするユリシーズとその乗組員を描く本作は、ひたすら人間の「意志」を感じさせる。
専門用語が多く状況の想像は難しいが、そのすさまじいまでの描写にはぐんぐん引き込まれる。
長くて重いが読んで損はない。
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反乱事件を起こした巡洋艦ユリシーズ号。懲罰を拒否したヴァレリー艦長への懲罰的な出撃。ソ連への援助物資を運ぶ船団の護衛作戦。北海を進む護衛空母千段。ドイツ軍の施設した機雷、荒波の影響で徐々に離脱していく空母、巡洋艦、駆逐艦。ドイツ軍の空爆で傷つく船団。ユリシーズ内部での反乱の気配。ヴァレリー艦長の健康問題の浮上。Uボートとの戦い。ドイツの戦艦デルピッツの恐怖。司令部からもたらされたデルピッツ出撃の情報。ヴァレリー艦長の死。「およそ神が一艦長にあたえた最高の・・・・」
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第二次世界大戦中、極北の海で輸送船団を護衛する任に当たった英国巡洋艦ユリシーズ号の、壮絶で痛ましく、過酷で無謀で熾烈で無慈悲…といった言葉が読後脳内に逆巻く作品でした。
もちろん読んでいる最中にもそれらの言葉はよぎるのですが、読みすすめるほどに夢中になってのめりこみ、その時々では感想なんて生易しいものには思い至らなかったのです。
軍事関係の専門用語はふんだんですが、少々分からなくても、そんなものは蹴散らし進んで構わないかと思います。
もちろん分かるに越したことはないのでしょうが、充分、もしかしたら今は絶滅に瀕している男侠というものを堪能できるかと思います。
読了後、とにかく独りになって、ユリシーズの面々に思いを馳せるひとときが必要かと。
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大失敗でした。
私的な読書は通勤時と決めているので、この本も往復の電車の中で読みました。ところが読み進むにつれ、数ページに1度、各章の終わりには必ず、うめき声か涙をこらえるはめになってしまいました。
そして527ページ。とうとうタオルを持ち出しました。
挟持か、痛烈な皮肉か…。
ともあれ、艦そのものの意思表示のような、あのシーンに完全にやられました。きっと隣に座った人は「ヤバい奴」と思ったでしょう。
エピローグにまで感情を翻弄された本書。もう一度読み直します。
今度は自分の部屋で。
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ありがちな正義や悪、反戦、英雄は語られません。闘いには祖国のためといった大儀はないのです。なんとリアルなんでしょうか。目の前の難関を乗り越えることを使命として、命を賭すしかない人々に、虚しさより荘厳さすら覚えます。