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重力の虹 上 (Thomas Pynchon Complete Collection)
「一筋の叫びが空を裂いて飛んでくる。」V2ロケットが超音速で落ちてくる。突然の死をもたらすナチの新型兵器の恐怖が覆うロンドン、1944年。その調査に当たる主人公スロースロ...
重力の虹 上 (Thomas Pynchon Complete Collection)
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- 税込価格:54,010円(491pt)
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商品説明
「一筋の叫びが空を裂いて飛んでくる。」V2ロケットが超音速で落ちてくる。突然の死をもたらすナチの新型兵器の恐怖が覆うロンドン、1944年。その調査に当たる主人公スロースロップが作成するのは謎のナンパ地図。やつは予知が出来るのか、それともロケットが呼ばれるのか。因果の逆転、探求の旅の始まり。キーワードは…“勃起”!ロケットはペニスか。バナナはロケットか。歴史小説?科学小説?ミステリ?ポルノ?ギャグ?SF?ファンタジー?カテゴリーなど飛び越えて、物理数学工学などほんの序の口、神話に宗教、経済学に心理学、革命に暴力に陰謀史観、セックス・ドラッグ・ロックンロールのカウンター・カルチャーに女装や男色、ボンデージ、フェティッシュ鞭にロリータ超能力やら降霊術、自動書記に怪盗スパイに海賊アナキスト…天才作家の百科全書的な知の坩堝から立ち昇る、「虹」の彼方には何が見えるのか―?【「BOOK」データベースの商品解説】
【全米図書賞】1944年、ロンドン。連合軍情報局のスロースロップ中尉はV2ロケットに脅えながらもナンパにいそしみ…。エロスとタナトス、ギャグと知の伝説的問題作。ピンチョン研究の第一人者による翻訳。詳細な註も収録。【「TRC MARC」の商品解説】
世界文学史上に空前の伝説を刻んだ33万語、100万字超の巨篇――新訳成る! 耳をつんざく叫びとともに、V2ロケット爆弾が空を切り裂き飛んでくる。ロンドン、一九四四年。情報局から調査の命を受けたスロースロップ中尉は――。 ピューリッツァー賞が「卑猥」「通読不能」と審査を拒否した超危険作にして、今なお現代文学の最先端に屹立する金字塔がついに新訳。詳細な註と膝を打つ解説、索引を付す。【商品解説】
著者紹介
トマス・ピンチョン
- 略歴
- 〈トマス・ピンチョン〉作家。「V.」でフォークナー賞、「競売ナンバー49の叫び」でローゼンタール基金賞、「重力の虹」で全米図書賞を受賞。
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ロケットの軌道が描く放物線をモチーフに国際的な陰謀を想像を絶するスケールで描いた小説。
2014/11/07 16:08
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:abraxas - この投稿者のレビュー一覧を見る
『重力の虹』とは、ロケットの軌道が描く放物線の隠喩である。第二次世界大戦末期、英国に対する報復兵器としてナチス・ドイツが開発したV2号ロケットにまつわる国際的な陰謀を、想像を絶するスケールで描いた小説。場面が切り替わるごとに、とんでもない数の人物が登場しては、某議員なら「口にすることもできない」と口にするだろうSMをはじめスカトロジー、ペドフィリアなど異常性愛の百科全書完成を企図したかのような、ポルノ・グラフィーまがいの卑猥かつ下品な語句が機関銃のように連射される文章に交じって、ロケットやプラスティック開発に関する解説抜きの専門用語がぽんぽん出てくる小説で、万人向けとはとても言い難い代物。
作者自身が持つパラノイア的といえる被害妄想や誇大妄想が、抑圧からの解放を待っていたかのように爆発的に展開しているのが最大の特徴といえる。ふつうなら、これだけ多様な挿話をひとつの小説内に封じこめるのは無理と考えて、いくつかに分けて別の小説にするものを、無理矢理、力ずくで一つの作品にしてしまった。旧訳についで新訳、と二度読んだが、正直なところ読み通すのが、つらかった。波に乗り、集中力が持続するときは、ドライブ感がある文章に乗せられて、ドーパミンが出まくり、とんでもなく面白いのだが、一つ躓くともういけない。卑語、俗語の多用に辟易してしまい、読み続けるのが苦行と化す。読むのにある種の体力を要する小説である。
極めて映画的な小説でもある。映画に詳しい読者なら、作者が設定したキャスティングに従って脳内で映画化を試みるといいかもしれない。アメリカ人のグループが登場すると西部劇やらハリウッド映画が、ドイツ人たちにはウーファー映画からフリッツ・ラングやムルナウの作品、と有名な映像から男優、女優が多数招聘され、小説に華を添えている。
作品の主題や作家の世界観を真面目に論じるのも気が引けるような破天荒な小説なのだが、馬鹿を承知で無理矢理こじつけてみるなら、「この<戦争>は、政治とは無関係。政治は完全にお芝居、民衆の注意をそちらに向けておいておく(ママ)ためのものであり…その陰でテクノロジーの要請こそが、専横的な力を揮い、事態を動かしていた…人間と技術とが一体となって、戦争というエネルギー・バーストを必要とする何者かに変化したのだ。表向きは「カネがどうした、わが国(どの国も挿入可能)の生存がかかっているのだぞ」と喚めきたてているものの、その意味は、おそらくこうだ」のようなところに見え隠れしているのではないか。
ピンチョンに、アナーキストに寄せる偏愛があるのはよく知っているが、後にはストレートに示されるその傾向がネガティヴな形で噴出しているのが『重力の虹』ではないだろうか。誰にも愛される主人公があちこち引きずりまわされ、道化めいた扱いをされ続けた挙句ぼろぼろになってしまうあたりに、救い難い世界に対する苦味が強く感じられ、せっかくのヒューモアも打ち消されてしまっているように感じられてならない。「全小説」と銘打たれたシリーズが刊行され、次々とピンチョンの小説が訳される中、ようやく代表作の新訳が完成したことはまことにめでたい。訳者曰く「三度読めば分かる」そうだ。ファンなら、読むしかないだろう。
欄外の註については一言ふれておく必要があるだろう。OSS等の略語や化学・工学に関する学術用語、映画や音楽の引用、言葉遊び、宗教学・神話学・隠秘学関連の知識等々が頻出するピンチョン・ワールドに少しでも近づきたいと思う読者には実に懇切丁寧な解説がなされている。
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長編大作
2017/05/13 04:09
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
ナチスが開発したロケットと性欲に振り回される男の組み合わせが良かった。戦前のドイツ映画に対する異常な執着も感じられる。