紙の本
孤立? 自立? 孤独感との折りあいのつけかた。
2018/11/08 22:15
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投稿者:たけぞう - この投稿者のレビュー一覧を見る
追いかける対象の窪美澄さん。本作も楽しませてもらった。
五篇の短編集。各話のタイトルに植物の名前が入っている。
そして本のタイトルは「水やりはいつも深夜だけど」
表題作はない。だからこのタイトルが五篇を束ねているということ。
全部読み終わり、あらためて表紙を眺めると
じんわりとこみあげてくる。
誰にも見つからないよう、ひっそりと育てるココロの花。
理解されないもどかしさとうらはらにココロは育っていく。
そんな思いがよぎった。
> 他人はさ、私が思っているよりも私のことを
> 考えてくれるはずがなくてさ
こんな当たり前のことをあらためて気づかされた。
離婚、発達障害、いじめ。
決めつけるわけではないけれど、弱者の視点で
書かれている話が多い。
環境がそうさせるのか、周囲の人か、自分自身の心か。
答えなんてない。
弱者になって孤立して、その状況をどう受け入れるのか、
自分の心と対話する。心の持ちようによっては、
個としての自立になるのかもしれない。
でも、そんな簡単にものごとが運んでいくわけはなくて、
あちらこちらと逡巡する登場人物たち。
どの作品も読みごたえがある。
セックス描写はなく、心との対話が中心だ。
デビュー作から、こういった視点が気に入って
読み進めているのかもしれない。
個別の感想をちょっとだけ書くと、五番目の
かそけきサンカヨウがよかったなあ。
精一杯背伸びしている陽ちゃんがとてもいじらしくて、
甘えたい気持ちが見えかくれするところが心を打つ。
うん、次作も楽しみだ。
電子書籍
気づかなかった自分
2015/11/07 06:45
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投稿者:OTTER - この投稿者のレビュー一覧を見る
日常におおわれた自分でも気づかない自分が見つかってゆく出来事が丁寧に書かれています
紙の本
よかった
2015/09/19 17:49
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投稿者:ななこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作家の本を初めて読みました。
とても興味深く、味のある内容で、他の作品も読んでみようと思いました。
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5つの短編集。すべて泣いてしまった。どこかさみしくてでも暖かな5つの物語。
学生時代に暮らしていた田舎町でささやかだけど一生の傷跡に残り続けるいじめを受けた母親になった女
子どもが生まれてから子供を授かる前結婚する前の妻との違いについついくことができない男
妹が障害児として生まれそのまま死を迎えたことを浄化することなく母親となり自分の娘さえもどこかおかしいのではと疑い続ける母親
結婚して子供を持ち妻が(そして夫が)自分への興味を持たなくなったと感じ合う夫婦
幼い頃の母親の記憶がぼんやりななか父が再婚し義母と義妹と新しい生活を始める高校生の葛藤
どこかさみしくい。けど救われるから涙が出る。窪さんはこの手の作品が本当に上手。
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今年初の☆5つ。やや出来すぎた設定がなきにしもあらずだったものの、それを補って余りある内容だったと思う。5編すべての主人公に対して、読みながらがんばれ、がんばれと心で声を掛けていた。自分とほぼ同じ世代に属する家族たちの在り方がリアルに描かれていて、時に薄ら寒い気持ちになりつつも最後はすべてに救いがあったこと自体が救いだった。これまでの窪さんの作品で一番好き。
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植物をキーワードにした短編集は、一話終わるごとに思わずどんな花だったか確認したくなる。
カラカラの大地に生きるサボテンや、湿地に住むサンカヨウ、薬草のゲンノショウコ、、どれも目立つ存在感はないけれど、それぞれの言葉が聞こえてくるようで。
色々あっても、毎日は続いて行く。
そんな話が淡々と、響く。
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とある高級住地に住む5組の家族の物語。
共通するのは同じ幼稚園に通う幼い子供がいることと、それぞれが内に秘めた悩みを抱えていること。
子供が生まれると二人の世界は様変わりしてしまう。
思い通りにならない生活、自由のきかない時間、そして責任感。
夫婦の間には小さな亀裂が生じ、徐々に徐々に亀裂は広がって行く。
あんなに好きだった相手なのに、心が通い合わないもどかしさ。
ブログでしか自分の存在価値を見出せない妻。
妻と妻の両親に疎外感を抱く夫。
子供の発達障害を疑う妻。
妻への不満から浮気心を持つ夫。
新しい母親と妹を迎え戸惑う少女。
「寂しかったんだ・・・」
「・・・寂しかったのは、あなただけだと思う?」
相手に自分の気持ちを伝えようとすること。
相手の気持ちを受け止めようとすること。
ほんのちょっとの努力で流れは変わる。
それぞれの物語はどれも切なくて簡単にはいきそうにもないけれど、最後に光が見えた。
窪さんの小説にしては珍しく性描写を完全排除。
過激な描写がなくても根底に流れているメッセージは十分伝わってきた。
読み終わって温かい気持ちになった。
ブクログ献本企画で頂いた本です。
窪さんの作品がいち早く読めたことに感謝。
ありがとうございました。
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Booklogの献本企画に当選し、ありがたいことに発売前に読ませて頂きました。
窪さんの本を読むと、彼女はママ友関係に疲弊する主婦も、妻や息子や義両親に距離感を感じてしまう男性の人生も経験してきたのではないかと思ってしまう。本当にそんな人生を歩んできたかのような感情の描写。
それも何か特殊な事情のある人の感情ではなく、どこにでもいる人の、「言語化するほどではないのだけどなんとなく思っていること」を言葉にしてくれるので、形のないもやもやに名前がつくようで、読んでいる方は気持ちいい。そして自分だけではないんだと安心する。
最後に、この本が発売されたら「サンカヨウ」の検索件数が増えると思うのです。私もむろん、検索したもの。
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一気に読んだ。おもしろいんだもん。
なんか、とかなんとなく、でしかうまく説明できないことを、こんな風に作品にできるなんて、作家さんはすごいな。
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みんな幸せになりました。めでたしめでたし。
と、そこまで簡単じゃない。
でもしんどい思いをしている人が、答えはそれだけじゃないんだよ、と気付いたり、ギリギリのところで踏み止まれたり、それが自分からの気付きじゃなくても、他人の姿から得られた解答であっても、いいんだよ、そんなことは。
みんなもっと気楽に生きられたらいい。
幸せにいることが、自然と周りをも幸せにするんだから。
少なくとも幸せの方向が見つけられたら、ゆっくり進んでいけばいい。ちょっと曲がったって修正できるんだから。
回り道も、後で振り返れば、大した遠回りじゃなかったな、と、思えるから。
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『野性時代』掲載時に読んでいた短編をもう一度一冊の書物と綴られた流れで読み直すと最初に読んだ時よりも細部がグサリグサリと染み込んでくる。
僕は結婚もしたことも子供もいないのに五つの短編の中にあるそれぞれの家族や夫婦や子供の生活が限りなく自分に近しいものとして感じられる。
感情は登場人物に知らないうちに寄り添っていてぐるぐると苦しくなっていくがそれぞれの終わりに温かいものや希望に似た続いていく毎日がある。
窪美澄さんという小説家は読者に寄り添える物語を書ける少ない作家だと思う。
生き苦しさやどうしようもならないことや行き場のない怒りや罪にも似たような後悔なんかを抱えた登場人物の気持ちを毎日の生活をきちんと掬い上げてなにか希望に似た優しさや祈りに近い微笑みの先に彼らを、いや読者である僕らを連れて行く。
生活する中で抱える痛みを優しく撫でるように。
逃げてもいいんだよ、だけども死なないでという、生きていてという生への肯定を窪さんの作品を読んでいていつも感じる。
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壊れそうな家族の、ふわりと守られた最後の一線をやさしくすくいあげた5つの物語。
家族って最初からそこにあるものじゃなくて。人と人が少しずつ歩み寄って寄り添い合って作り上げていくもので。
簡単に枯れてしまうその「家族」という緑を育てていくには毎日の水と栄養が必要なんだな。
大きなホースでじゃぶじゃぶとあふれるほどかけ続けるんじゃなくて、多分、様子を見ながら毎日少しずつ上げなきゃいけないもの。思いやりとほんの少しの勇気。家族って、そういう小さなつぶつぶで出来上がっているだな。
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同じ幼稚園に子供を通わせる家族を描いた5つのお話。他人の男と女が一緒に上手く暮らしていくのは大変だなと改めて。誰もがどこか共感できる内容が生々しい。何れもちゃんと前向きなラストなので救われる。生きるのは厄介だ。
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「ソノ ヒトミニハ ナニガ ウツッテイルノ?」
どこか儚げで、悲しげな表紙の少女にそう問いたくなった。何か惹かれるものがあった。
窪さんはずっと気になっていた作家さんの一人。私にとってこの本が初の窪美澄作品となった。
誰の身にも起こりうる、意識してなければただ何となく通り過ぎてしまいそうなことに光をあてた家族の話。でも、だからこんなにも身近に感じたのだろう。
登場人物たちの心の動き、動作、仕草が実に丁寧に表現されていて精巧。それでいて作りこまれた感がなく、ごく自然。ドラマを見ているような感覚に陥った。
家族には、その家庭家庭で様々なイロ、カタチがある。本来、その家族のイロやカタチを誰かが否定したり、肯定するものではない。でもそういう人たちがいるから、人はいい夫、いい妻、いい子供を演じ「いい家族」を装う。本当のことなんて外からはわからない。たとえ“家族”という世間的に認められ、守られた一つの集団の中にいても、言いようのない不安やさみしさを誰しも抱えている。みんなさみしくて誰かに寄りかかりたいんだ。
家族だからこそ、目をつむったり、曖昧にすることも時には必要なのではないかと思う。強い繋がりだからこそ、一度壊れてしまったらもう元には戻せない。だからそうなる前にぶつかり合ってでも解決の糸口を見つけ、前に進もうとする。それはやっぱり“家族”でいたいからなのだろう。
読んでいる間中、切なくて、苦しくて、心がヒリヒリした。だから、少しずつしか読むことができなかった。
こんなにも心がざわついてしまった自分もまた、もしかしたら水やりを必要としているのかもしれない。土が乾ききってしまうその前に水やりをしよう。誰にも気付かれないように、そっと。今夜、深夜に。
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初めましての作家さんでした。読みやすくてでも人の心にチクッて刺さる何かがあって・・・。どの家族にも何かしらの欠陥があって、それは表面からはわからない・・・。私は最後のお話が好きです。