紙の本
孤島を舞台に繰り広げられる、断罪と鎮魂、そしてトリックの物語
2021/08/23 12:21
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投稿者:アントネスト - この投稿者のレビュー一覧を見る
七年ぶりの少年検閲官シリーズ第二弾。待ちわびていた人も多いでしょう。高まった読者の期待に十分にこたえた傑作なのは、本格ミステリベストテン第四位という結果からも明らか。
旅を続けるクリスは海沿いの町で、言葉を持たない逃亡者の少女ユユと出会い、さらに検閲官エノとも再会する。クリス、エノ、ユユの三人はガジェットを求め、孤島へと向かう。
そこでクリスたちを待っていたのは、癖のあるオルゴール職人たちと、もう一人の少年検閲官。そして凄絶な連続殺人と不可能犯罪だった。
質・量共ともに大盤振る舞いのトリックの連打。めまぐるしいどんでん返し。そして、どうしてもそれらのトリックを使わざるをえなかった犯人の背景。物悲しいクライマックスと、新たな希望の予兆を湛えたエピローグまで、巻措くあたわぬ傑作と言って過言でない、北山ミステリのマイルストーンです。
紙の本
一番の謎は
2017/05/22 17:00
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投稿者:るう - この投稿者のレビュー一覧を見る
大胆なトリックは興味深かった。少年たちの小さな友情、謎に翻弄される少女など魅力的要素がたくさんある。ただ、このシリーズ最大の謎は少年検閲官そのものなんだよなー。
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再会した英国人少年クリスと検閲官エノを待っていたのは、オルゴールを作り続ける孤島の洋館で勃発した連続不可能殺人だった! 著者渾身の巨編、〈少年検閲官〉シリーズ最新作。
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『少年検閲官』シリーズ第2作。
前作が出てからどれぐらい経ったのかもう覚えていない……確か前作はタイトルに惹かれて買ったのだが、今作も内容が気になる、印象的なタイトル。
今時珍しい四六判の二段組だが、全く長さを感じさせずに一気読み。大掛かりな物理トリックや、最後の最後まで飽きさせない展開などは流石。続きはきっと暫く出ないのだろうが、気長に待つことにしようw
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少年検閲官シリーズ2作目。
シリーズ前作の「少年検閲官」を読んでからのほうが良いと思います。
前作で、敵対する立場ながらも友情に似たものを築いたエノとクリス。
逃亡するクリスとユユの危機に颯爽と現れたエノには驚きました。彼がこんなにも大胆な行動をしたことが意外で、前作での二人の絆が思い出されるようで懐かしい。
今作の舞台は海面上昇により陸と切り離され孤島となった「海虚」。オルゴール職人たちが住まう謎多き閉ざされた場所「カリヨン邸」での連続殺人です。
滅びゆく世界の美しさと儚さが相変わらず素晴らしい。
更にはオルゴールが全体を通してキーアイテムとなっており、素敵な演出を果たしています。
本だけでなく音楽さえも規制の対象になっていく世界で、文化に心を寄せる人々が美しいです。
そして、それらの世界観がただの物語上の設定に留まらず、事件やトリックと強く結びついているのも上手い所です。
繊細で静謐な文章とは反対に、大胆で豪快なトリックが惜しみなく登場します。
この世界で生きるエノとクリスの壮大なシリーズの物語としても、悲恋物語としてもとても良かったです。
新たに登場した少年検閲官カルテや検閲局自体にも何らかしらの動きがあるようで、早くも次作が待ち遠しい。
気長に待ちます。
ネタバレ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回の一連の事件は目的、ターゲット、方法まで全て入念に計画されており、全ての犯行が行われて初めて犯人が見えてくるようなものだと思います。
大がかりな物理トリックが何度も登場しますが、そんな方法をとった理由がキリイ先生に直結するのが見事。
海虚という閉ざされた場所というのが目隠しになっていました。
犯人は現場にいなくてもよかった。ということは海虚にいる必要もなかったのでは?と一気にキリイ先生にスポットが当たったのにはゾワリとしました。
振り返ってみれば少年検閲官やカリヨン邸の人々、更にカリヨン邸内部やオルゴールの構造を熟知していることが必要であるということが分かり、それだけでもキリイ先生を指し示していたように思います。
旅を続けてきたキリイ先生ならばミステリの知識が多少でもあり、本を見たことがあっても不思議ではありません。少年検閲官がどういう行動をするのかも十分予想できたでしょう。
又、ユユともどこかですれ違っていたというのに説得力があります。
これは作品世界内ではエノしか解けないと思います。
殺害方法から何度も指摘されていたように、力の弱い人間の犯行という点からユユ、主人へと疑いの目がいき、三段構えの謎解きになっているのもおもしろい。
物理トリックに関しては、特に塔のトリックはかなり危うい方法だと思いました。
タイプライターを手に入れたクリスですが、あんな物を持って旅するのは大変そう。あの場所に腰を落ち着けるのでしょうか。
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少年検閲官シリーズ新作。
クリスと少年検閲官と、そしてオルゴール職人の物語。
北山物理トリック、もちろん健在。
終奏で語られる真実に慟哭し、涙する。
そうだ、彼の物語でもあったのだ。
何もかも失われていく世界で、クリスはどんなミステリを生み出すのか、見届けたい。
あと相変わらずエノ可愛い。
「行こうか。我々だけの真実を見つけに」
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2015年発読書。
待っていました北山先生。
そして期待を裏切らない。
分厚い。
恋人をオルゴール化した青年、
孤島、
密室ともうミステリ好きにはたまらんモチーフで。
小説内にも何回も図が出てきたり。
トリック的には多分新しいものではないとは思うんだけれど、やっぱり北山マジックで最後は号泣。
大好き
そして、やっぱり少年検閲官なんですよね。
クリスとエノのコンビがやっぱりいいんですよね。
でも、ちょっとびっくりしたのが全巻から3か月しかたってなかったの?という感じです。
だからまだ、二人の成長とかそういうのがまだ出てない感じで。
でもこういう北山先生が読みたかったのでほんとありがとうございます。
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北山猛邦さんの新刊は、『少年検閲官』の続編だという。僕は前作に大満足していたはずなのだが、もう8年前なので内容をすっかり忘れてしまった。
覚えているのは、徹底的に書物を取り締まるという作品世界。本作においても作品世界と主人公は共通である。あの少年検閲官も。近年、本格とは言えない作品が多かったが、久しぶりに物理の北山らしさを堪能できるだろう。
旅を続けていたクリスは、検閲官に追われている少女、ユユと出会う。必死に逃げる2人だが、万事休すかと思われた場面で現れたのは…。ユユは、海墟にある屋敷から逃げてきたという。こうして、成り行き上、屋敷に向かう面々であった。
ちょっと序盤が長すぎないか? それはともかく、「海墟」とは、元々陸続きだったが周囲が海に沈み、離島化した場所を指す。いずれは水没する場所に、わざわざ住み続けている主人。ここにも「ガジェット」があるというのだが…。
屋敷ではオルゴールが作られていた。この世界では、音楽もまた取り締まり対象になり得る。主人の目的が、音楽を後世に残すことではなかったのが判明するのは、終盤になってから。さて、離島といえば、すっかりおなじみのシチュエーションですねえ。
僕は前作の作品世界とミステリ性の融合を高く評価していたが、本作の読みどころは作品世界より推理合戦と言い切ってしまおう。それぞれもっともらしい推理が披露され、なるほどと思うとまた別の推理が披露され…。いずれも凝りに凝った物理トリックで、書物がご法度の世界でどうやって知識を仕入れたのか、苦笑してしまう。
二転三転、最終的に何転したっけ…ともかく最後の最後に明かされた真相に、呆気にとられてしまった。そこに思い至らなかったのは迂闊だったな。この粋なプレゼントを、クリスは活用できるだろうか。というより、所持していいのか?
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(15-8) 最近「本格ミステリ」を読むのがちょっと辛くなってきた。あまりに理詰めなので現実感が無さ過ぎて。でもこのシリーズはもともと物語の舞台が現実離れした世界だからか読めた。滅びに向っている世界。暴力や殺人を防ぐため、それらを描いた書物を規制。行き着いたところがあらゆる書物の焚書。ミステリは地下にもぐる。そういう世界で起きる殺人事件。ガジェットがいまいちイメージできないんだけどなあなどと思いながらも、この世界の魅力に引き付けられ面白かった。
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最後の最後に訪れる衝撃の展開に驚きを隠せない。頽廃的な世界観に引きずり込まれて、その切なさに胸が詰まる。設定を生かしたトリックも素晴らしいし、更なる続編に期待。
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発売日に買っていたのに気づけばもう2月。
単行本で2段組。400ページもあろうかというボリュームから「時間があるときに読もう」と先延ばしにしていたのですが、春休みも始まりついに重い腰を上げて読んでみた次第です。
すると、なんということでしょう!1日で読んでしまったではありませんか!
前作『少年検閲官』の設定が若干あやふやではありましたが、それを取り戻してからはページを捲る手が止まりませんでした。
大まかな内容は前作同様、書物が禁じられた幻想的な世界を舞台に不可能殺人が起こり、それを2人の少年が解決するといった物語です。
前作は持ち前の物理トリックと、異世界の理論で思いもよらぬ動機を浮かび上がらす部分が最大の魅力でした。
今作もそれらは健在なのですが、それに加えて多重解決という要素も入れて、ミステリとしての趣きがより増しています。
犯人をギリギリまで読者に悟られないように配されたミスディレクションも素晴らしく、北山猛邦の巧さを再認識しました。
早くもシリーズ3作目が待ち遠しいです。(いつのことやら…)
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少年検閲官第2弾!
続編きたー!!!
あんまり前段おぼえてないけど・・・。
書物のない世界で書物を巡る物語。
事がおこるまでの序盤がちょっとしんどいけど、それ以降はぐいぐいくる。おもしろかった。
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多重解決の末に明かされるトリックは著者の代名詞とも言える類のものでややバカミス的ではありますが、ちゃんとオルゴールというテーマが活かされていますし、これによって意外な人物が犯人候補に浮上するという、物語上必要不可欠なものになっているところが秀逸です。
また、冒頭の「月光の渚で君を」は出色の出来ですし、ヒロインの少女ユユの造形も魅力的。切ない余韻が残るラストも良い感じで、非常に充実しています。前作『少年検閲官』と比べると若干設定が緩いのが気になりますが、今年のミステリーランキングで間違いなく上位に入る傑作です。
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「書物」=危険思想と言う概念の元、書物が犯罪と結び付けられている世界……は、闇の喇叭的な感じで理解はできたのですが……(´Д`;)
多分テーマ的には、少年検閲官=ミステリの塊→殲滅対象につながる矛盾とかそう言うものなのだと言うのは分かったのです。ちょっと中2的。
序章の惨劇がもっと関わってくると思っていただけにちょっと物足りなかったのですが、最後まで油断できない解決は面白かった(* ´ェ` *)
どうやらシリーズ2作目なので、機会があれば1作目を見てみようかな……。
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「少年検閲官」シリーズ第2弾。
書物が駆逐された世界。旅を続けるクリスは、検閲官たちに追われる少女と出会う。そこへエノが現れ、三人は少女がいた海墟の館を目指すことにしたが…
海に沈んでゆく諦観に満ちた世界でオルゴールを作り続ける館、という舞台がステキ。大掛かりな物理トリックがけっこう出てきて、解決と思わせてひっくり返す多重解決。ミステリとしても面白かったが、一番インパクトがあったのは冒頭のオルゴール職人のエピソードかも。
今回、少年検閲官がもう一人登場するが、この人たちはやはり謎だ。