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  • カテゴリ:一般
  • 発売日:2014/11/21
  • 出版社: 早川書房
  • サイズ:20cm/355p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:978-4-15-209503-9

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紙の本

繊細な真実 (Hayakawa Novels)

著者 ジョン・ル・カレ (著),加賀山 卓朗 (訳)

ポール・アンダースンの偽名を与えられた外務省職員は、英領ジブラルタルのホテルの一室で苛立ちを露わにしていた。彼は閣外大臣クインの代理として、テロリスト捕獲のための“ワイル...

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繊細な真実 (Hayakawa Novels)

税込 2,420 22pt

繊細な真実

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繊細な真実

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商品説明

ポール・アンダースンの偽名を与えられた外務省職員は、英領ジブラルタルのホテルの一室で苛立ちを露わにしていた。彼は閣外大臣クインの代理として、テロリスト捕獲のための“ワイルドライフ作戦”に顧問として参加していた。だが、秘密任務に関わった経験は皆無で、なぜ自分が呼ばれたのか見当もつかない。やがてポールは、作戦が成功裏に終了したとだけ告げられ、任を解かれる。一方、クインの秘書官トビー・ベルは、大臣の不審な行動を監視していた。ジブラルタルでの作戦には胡散臭い民間防衛企業の男の影がちらついていたからだ。しかし、トビーの調査には隠蔽を謀る官僚たちの厚い壁が立ちはだかり…。“ワイルドライフ作戦”とは何だったのか?スパイ小説の巨匠が描く、世界の新たな闇。【「BOOK」データベースの商品解説】

英国領に極秘裏に設置された対テロ組織の数々の成功は虚偽なのか? 真実を求める元外交官は、隠蔽の首謀者から命を狙われる! スパイ小説の巨匠ジョン・ル・カレが描く、世界の新たな闇。【「TRC MARC」の商品解説】

英国領に極秘裏に設置された対テロリスト組織。その喧伝されてきた数々の成功は虚偽だったのか? 真実を求める元外交官は、隠蔽の首謀者から命を狙われる! スパイ小説の巨匠の新たな代表作! 【商品解説】

著者紹介

ジョン・ル・カレ

略歴
〈ジョン・ル・カレ〉1931年イギリス生まれ。オックスフォード大学卒業。「死者にかかってきた電話」で小説家デビュー。「スクールボーイ閣下」で英国推理作家協会(CWA)賞ゴールド・ダガー賞を受賞。

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評価内訳

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紙の本

腐敗した時代の堕落した英雄たちに楯突く若い外交官の戦いの顛末

2015/01/04 10:40

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:abraxas - この投稿者のレビュー一覧を見る

風采も人柄も問題はないが、思いやり溢れる優しい妻と、冷静沈着で親思いの娘のほかに、これといった能力、職歴は持ち合わせていないキットは外務省退職を目前に控えていた。人妻との火遊びがやめられない外交官トビーは三十代。持ち前の器量と上司の推挽もあって順調に出世街道を上っていた。本来出会うべくもない二人の男が、功を焦る閣外大臣の計画を機に、互いの人生を交差することになる。それは平凡な男二人にとって運命を狂わせる一大転機となるものだった。

イラク戦争が世間を騒がしていた頃。キットは、閣外大臣のクインに秘密任務を命じられる。ポールという変名でジブラルタルに赴き、アルカイダの中心人物を逮捕した後海上で待機する船に移送する、その現場に立会えというのだ。何が何やらよく分からないままに作戦は実行され、大成功だったとだけ知らされ帰途についた。

その少し前のロンドン。クインは悪評高い軍需産業関係ロビイストと組んで、秘密裡に「囚人特例引渡し」を計画していた。疑問を感じたトビーが控室に仕込んだテープには、大臣と作戦に参加するポールとジェブの会話がはっきり録音されていた。信頼する元上司に打ち明け、忘れろと言われたのも意外だった。五日後トビーはベイルートに飛ばされる。

三年後、退職しコーンウォルに住むキットの前にジェブが現われる。手渡されたメモには、作戦の陰でムスリムの母子が死んだ事実が記されていた。爵位まで得、悠々自適の引退生活を送っていたキットは真実を知ろうと動き出す。一度会いたい由の手紙がキットから届いたのはトビーの帰国後間もない頃だった。

東西冷戦下におけるスパイ合戦は、それなりにすっきりしていた。戦いの目的は国家のためであり、倒すべき相手は常に敵側だった。スパイ同士に暗黙のルールがあり、事は知的なゲームのように粛々と行われていた。ところが、冷戦が終了しても戦争はなくならなかった。軍需産業は営利を目的とし、国家の枠を超え、各国の官僚機構内部に巣食い、情報を売買することにまで手を伸ばした。外交や情報収集に携わる組織内部でも、私利私欲のために動く人間が頭を擡げ、そうでない一部の者は、自らの倫理観を頼りに内部の敵と戦わねばならなくなった。これはそういう腐敗した時代の堕落した英雄たちに楯突いた若い外交官の戦いの顛末である。

ごく普通の人間が、国家的大事件に巻き込まれた時、あなたならどうする、という問題提起。事は国家機密に関わるため、公にすれば自分が法に問われることになる。特定秘密保護法が施行されたばかりのこの国ならなおさら他人事とは思えない。ただ、そこはル・カレ。露骨な問題意識を表面に出すことなく、二人の人物の視点を切り換え、語りの順序を操作することで、シンプルなストーリーを興味深く語ってゆく。読者ははじめ戸惑うが、人物と共に関係者の証言を見聞きすることで、次第に事の真相に迫っていく。それと分からないように引かれた伏線が、後からそうだったのかと飲み込める。この展開はさすがだ。

新聞広告には「寒い国から帰ってきたスパイ」、「スマイリー三部作」と並ぶ傑作、とあったが、ル・カレの作にとどまらず、スパイ小説の代表作と呼ばれる四作に並ぶ小説を、いくらル・カレでも、そうそう書けるものではない。巧みなプロットと、語り口調のうまさは他の追随を許さないとしても、ル・カレの作品として特に傑出しているわけではない。それよりも、東西冷戦が終結して、これでもうスパイ小説も終わったと言われながら、次々と新しい対象や切り口を見つけ出しては、相変わらず健筆を揮う、その若々しさに敬意を表したい。

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2015/01/04 10:14

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2015/01/04 22:12

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2015/01/15 11:27

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2018/10/05 22:17

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