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東京劣化 松谷明彦著 急速に高齢化する都市の未来像
2015/4/12付日本経済新聞 朝刊
日本の人口減少が話題になっている。人口問題に詳しい著者の主張のポイントは人口が減る現象は簡単に止められないということだ。少子化の主因は出生率の低下ではなく、出産適齢期の女性人口の急減にあるためだ。未婚の女性が増えていることも踏まえれば、60年後までは女性と子供の激減とそれに伴う急速な高齢化が続くと予想している。
この人口動向の影響を最も受けるのが東京という。東京では2010年に約268万人だった高齢者が40年には412万人程度になる。30年間で144万人の増加だ。今でこそ、若年層の流入で東京は活力を保っているが、全国の人口が減れば流入者数も減少し、生産年齢人口も減る。
その結果、東京では所得水準の相対的な低下や財政の悪化が進み、高齢者難民が増えて街がスラム化すると指摘している。急速で大規模な高齢化も含めて、これら5点を「東京の劣化」と呼んでいる。
本書ではこうした問題への対応策にもふれている。そのひとつが家賃が安い公共賃貸住宅の整備だ。年金の給付水準の低下が予想されるなかで、借家で暮らす高齢者の受け皿をどうするのかという問題は確かに重要だ。
本書で描かれている東京の未来像は暗い。しかし、目をそらしてはいけない課題なのだろう。(PHP新書・780円)
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近い将来、東京の街は大幅に劣化する―それは予測でも警鐘でもなく事実です。2035-2040年における東京の高齢者数は411.8万人に達します。今後30年間で高齢者数が約1.5倍となり、適切な維持更新ができないインフラが年々増加していくとどうなるのでしょうか。
筆者は大蔵省主計官や内閣官房審議官を歴任した財政の専門家であり、人口減少問題の第一人者として度々メディアにも登場しています。
http://diamond.jp/articles/-/69539
その筆者をして、やってはいけない政策について以下の3つを挙げています。残念ながら、現在の政府はこの方向性に向かっています。
・少子化対策
・経済成長の追求
・増税による財政再建
一方で単に危機感を煽るだけではなく、現実的な処方箋も提示されています。200年の償還期間で建設する低家賃型集合住宅や、1000兆円に上る国債を永久債にして当面の財政バランスを安定させるといったアイディアは傾聴に値します。
地方創生という言葉が一人歩きし、東京の一極集中をどうにかしなければならないと声高に叫ばれていますが、その実は高齢者の流入による介護福祉サービスの破たんと、年金サービスの切り下げによる高齢者難民の激増といったところが危惧されているからです。
今後は高齢者が減少していく傾向にある地方にこそ、その難問を解く鍵があることでしょう。
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なかなか。
ユニークな発想。疑問な点もあるが、一つの提案としては
良いのではないか。
日本の未来は決して明るくないが、取り組み次第か。
自分としては何をべきか、国に頼らなくても良い覚悟
が必要か。
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高齢化、少子化、人口構造問題は日本の根本的かつ不可避な問題として以前から勉強をしてきたが、その中で松谷さんの本が一番、客観的で説得力があった。今回は一連の問題の中でも最も深刻となるであろう東京ないし東京圏における人口構造問題についてFocusしての記述となっている。相変わらず、人口構造の推移について凄まじく覚めた予測を出し(人口は増えない、高齢化はバリバリ進む等)、いま政府が打とうとしている各種施策(増税による財政再建、年金一辺倒、東京五輪)もすべて間違っていると、これも覚めに覚めまくって指摘をし、このまま行けば、東京は2025年、2035年、2040年という年をそれぞれターニングポイントにどんどん劣化が進み、2065年ぐらいにやっと平準化し、人口構造問題から脱却すると予測をしている。
これらはすべて、戦前戦後に人口を人為的に弄った罰であり、人口は個人の権利であり無為自然であるべきであると説いている。(なので、政府の少子化対策も次のいびつな人口構造問題を再生産するだけである、としている)
問題の処方箋として、"小さな財政"で対処すべしとして、あとはいつものご説である安価な公共住宅建設、公債の永年化、東京の職人技の再強化等々がならぶが、ちといつもよりも処方箋の迫力がないように感じた。まあ、それだけ東京に打つべき手はない、ということなのかもしれないのだが。。
私自身は、劣化する東京に見切りをつけ、そうそうに田舎に引っ越した、という派なのだと思うが、なにせ生まれ育ったふるさとが東京なわけだから、関心は常に持ち続けたいと思う。
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50年後、東京は大丈夫か?今ある社会インフラでオリンピックを開催するはずだったのに、いつの間にか、公も民も五輪協奏曲となってしまっている。2065年、今より財政体力が弱くなる中、今大規模開発で誕生したビル群やインフラが一斉に更新期を迎えることになる。都市計画は100年の計。50年後、「東京劣化」とならないよう、今考えなければならない。
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人口構造ほど確実な将来予測はない。東京がスラム化するのは間違いないだろう。選挙制度が変わらない限り、老人有利な政策が続行される。余命少ない人間が将来の事なんて考えるわけないし。だから著者の提言は無意味であり、警告の書として読むしかない。
今の団塊世代はどうにか逃げ切れるのかもしれないが、Jr世代が最も過酷な老後を過ごす事になる。この世代が死ぬまでのこれから40~50年間が危機なわけだが、自分の身は自分で守るしかないので、常に脱出準備はしておきたい。NYで起きた事は東京でも起こる。
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地方地方って危機感煽るけど、一番ヤバいの東京だよね、と思ってたらこの本を見つけて。僕は東京はいろんな意味で好きです。でも、決して自慢できないんですよね。基本的に消費や摩耗の対象であって、いざ不要になれば躊躇なく切り離せるくらい愛着が薄いというのがね。危機に際して金を取れるところから取って弱者に回す、というフロー型の解決策しかないのであれば、そりゃ金持ちはシンガポール行くって。筆者による解決策には必ずしも同意するものではありませんが、一刻も早く検討しておくべき課題にスポットライトを当てたという点で素晴らしい新書です。
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この世に住む人は既に生まれていて、例えば20歳の人が今日突然生まれたりすることはないために、人口動態は死亡率や出生率に非現実的な想定を置かない限り、相当程度正確に予測できる。
日本の人口は、今後団塊の世代が死んでゆき、出産年代の女性が減少し、かつ女性の生涯成婚率が減少する見込みであることから、既婚女性の出生率が現在の2人強から3人強に上がりでもしなければ、確実かつ数十%のオーダーで減少する。
その影響を特に強く受けるのは、過疎化が謳われる地方ではなく、東京をはじめとする大都市圏だ。
地方は十分に高齢化しているので、今後も年齢別人口構成に大きな変化はない。
大都市圏は若年層は引き続き流入するが、高齢層と死者の増大を打ち消すに至らず、顕著に高齢化するとともに2030年以降人口自体が減少する。
高齢化と人口減少は経済規模の縮小につながり、高齢者年金は破綻する。家賃を払えない高齢者は難民化する。労働生産性は改善するどころか低下が見込まれ、GDPも人口以上に低下し、国家財政も破綻する。1000兆を超える国債残高は減少することなく、永久債に借り換えるしかない。
という極めて暗澹となる著者の予測である。
200ページ足らずという分量のせいか、粗い議論も散見するが、大筋は納得できる。
著者の想定が全く間違っているか、シルバー民主主義に負けない長期・大局的な国家運営がされることを強く期待する。
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思ってることがそのまま書いてあった。
すでに東京は、アジアの中心ですらなく、経済はシンガポール、政治は北京に持っていかれてる。
日本の株式市場だって、NYや上海やロンドンのマーケットを鏡に映しているだけだし。
日本から海外の有名大学へ進学する留学生も減っている。
東京の劣化が進行している。
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確かに今後の「維持費」を全く無視して動いている、現在の「花火」だけで社会が動いている点に共感。シンガポールも10年後はどうかわからないけど、東京もどうか分からないな。
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タイトルのインパクト!笑
そして読んでみると、確かなデータに基づき、今言われてる事が間違いだということ、今後はこうなる事が予想されること、こうしていったらいいのではという意見。どれも理路整然と語られていて、かなり好印象。グラフとか読むの苦手意識強めの私には辛い所もあったけど、著者の他の本も読んでみたい。
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1945年~85年日本の生産年齢人口は4000万人増えました。
これが奇跡の経済成長の要因の1つです。
今後日本は40年で3000万以上生産年齢人口が減少します。
これが日本社会に与える影響は想像できません。
日本の社会は、人口が増加することを前提に作られたきたことを考えると、
今の社会は、これからの社会に全く見合ってないといってよいかもしれません。
早かれ遅かれ、社会保障にメスを入れざるを得ないしょう。
この20年グローバル化による、大きな変化も日本にも訪れましが、
今回の人口減少という波は、戦前の富国強兵策、戦後の人口妊娠中絶を手段として、
大規模な産児制限を行ったことによる、私たちが発生させたものです。
改めて考えると、その代償は大きいなと思います。
明治維新から太平洋戦争に及ぶ莫大な人的被害に及ぶほどの、「人災」が日本に今、刻々忍びよっているのは、間違いありません。
今までと同じで、学校に通う。
今までと同じで、大学に通って、
就活して、企業に入る。
今までと同じで、結婚適齢期で結婚する。
今までと同じで、きちんと、勤めあげて退職する。
それらの、今までの「平均的人生」が、
今後、間違いなく大変化します。
ただ、負の影響かどうかは、どんな専門家でも、はっきりしません。
東京に限っては大丈夫という認識がありますが、
あと20年で高齢者が150万増えます。
現在オリンピックに向けてインフラ整備していますが、著者曰く、愚かな決断だと。インフラは作るより維持する方がコストがかかります。
東京のインフラ維持と超高齢化で経済の活力を失われるとの指摘に、かなり真実味があります。
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超Sレベル 判っていても戦略パラダイムを変えられないのが日本の特徴
73年福祉元年は高度成長の「自然増収」を前提に設計したもの
時代が変わってしまっても、時代不適合の制度を変えられない
「既得権」にメスを入れる覚悟のリーダー=政治家が居ない
しかし追いつめられて日本は変わらざるを得ない
(冨山和彦先生) 野口悠紀夫先生も同じ 有識者は皆んな理解 政治のタイミング
人口減少高齢社会のタブー
(1)少子化対策 日本の団塊 「産めよ増やせよ」(戦前・前後)強力な産児制限
(2)経済成長の追及 生産性・賃金の低さ 後進国型の経済
(3)増税による財政再建 財政支出の削減 永久国債(コンソル公債)
後進国型大量生産の経済を転換する
→地方分散の多極化経済が実現できる
中央集権の仕組みから脱却しなければならない 教育・研究開発・マーケティング
デザイン・製品コンセプトが大事 想定ユーザーのニーズ
市町村合併・コンパクトシティは同じ発想 官の論理
首都東京の劣化 先細り「貯蓄」をどの投資に充当するか 戦略が大事
2020年東京オリンピックは歴史上、愚かな選択(57)
2025年をピークに成長率・一人当たりが急低下
財政の悪化 老人ホーム100万床 20兆円 インフラの維持
これからの東京経済
ビジネスモデルの終焉 技術輸入型大量生産モデル
利益率の激減 過剰設備投資 →生産管理がすべてで「経営」がなかった
終身雇用の中でビジネスモデルの転換は困難 社内の軋轢
行政システムの簡素化 地方に任せて、しかも手続きを省くことを許容
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高齢化に伴い日本の経済は縮小し、国際競争力は低下する。すでに東京は国際的な情報拠点の地位を上海とシンガポールに譲っている。そしてそのトレンドを覆す要素は今のところ見当たらない。日本人は内向きになり、新しい付加価値を持つ商品開発に着手することもない。
東京劣化を語っているというより、日本の国際競争力低下の現実を人口動態を通して語っているという書物。政策で人口をいじることはできないと論じつつ「産めよ増やせよ」「産児制限」の影響を語るなど、様々な突っ込みどころはある。
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「下流老人」に書いてあるような少子高齢化の影響を別の切り口で捉えている。
東京と地方という比較で見ると、
地方は、少子化が進み税収は減るが、それ以上に高齢者が死亡するに連れて人口が減り、それによって財政負担も減るので、全体としての財政赤字はあまりひどくならないが、
東京は、少子化が進み税収は減るが、今の中年層が老人になり、老人層の人口がなかなか減らないため、一気に財政赤字、インフラ維持困難、スラム化のリスクが高まるという。