紙の本
意外な怖さ
2015/10/29 11:57
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投稿者:りー - この投稿者のレビュー一覧を見る
うおぉぉ!怖いぃぃぃ!舞城だからよくわからん熱量とリビドー迸る理不尽文学かと思ったらちゃんとしたホラーじゃねぇか!しかし怖いけど読ませる。三章に分かれて物語は進むんだけど、一章めはただただ展開と怖さと謎で読ませ、二章めからは、「あれ?これもしかして」と思わせる一章めとのリンクで読ませ、三章めはホラーらしいホラーと舞城らしい理不尽さで読ませる巧さ。わかりやすい謎解きは無いので読者の裁量で読み方はいくつかあるものなんじゃないかと思うんだけども、これは普通にホラーとして怖面白いし読みやすいのでお勧め舞城だった。
紙の本
東京でもなく福井でもない
2016/03/28 10:00
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
舞城王太郎は福井県出身だ。本書でも地方から都会への憧れ、または東京から田舎への幻滅が見え隠れする。しかし著者が1番に求めるのは、物語を通しての自分の居場所なのかもしれない。
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語り語られる物語。薄ら怖さと優しさが共存した小説だった。
今までのパズルじみたメタメタメタな構造(世界を何層にもわたって描くことでむしろ世界が閉じ、矮小化してしまう問題をはらんでいる。舞城は「娯楽産業」なんて言葉で語ったこともあった)からいったん離れ、新しい形式をとり、それが成功しているとも思う。
ここでは詳しく書く気はないけど序盤から語りが奇妙で不可解で、読み進めていくうちに一人称がどうやら各章の主人公にぴったりつきまとっている守護霊とかそんな感じの存在であることがわかってくる。形としては、二人称小説っぽい。語り手が、語り手を知覚できない主人公に対して延々と語りかけるようにして描写されていく。でも、それだけじゃなくて……。という話。
人称形態そのものを物語とじかに接続して書き上げた点では評価したいし実際かなり高度なことをやっていると思う。「主人公が語り手を知覚できない」点では3人称っぽくもあるし、これってすごく新しいことなんじゃないか?知らないけど少なくとも僕はほかにこんなの知らない。物語のエモーションとしても十分だった、特に2章のラストとか……けど。うーん。何だろう。僕は何か不満があるというよりはまだまだ期待してるのかもしれない。たぶん舞城がこの次に書く小説はきっとこれより面白くなってるような気もするし、楽しみにしてる。
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ギャー怖い怖いやめて怖い!!
「ヒー‼:(´◦ω◦`):」ってなりながら読んでました。
短いセンテンスで、素敵なこというのねー。
印象的な台詞がちらほら。
真っ暗闇は怖いけど、素敵な光もいっぱいで、初めての舞城王太郎作品がこれで良かった。
LOVE&ピース&HAPPY!(&MORE…)
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実に気味が悪い小説だ。
描かれている出来事や人物という直接的な不気味さは勿論のこと、それ以上に「得体の知れないもの」が蠢いている感がすごい。行間に、ページの隙間にその気配は漂い、漏れ出て、読み終えたときには肌が粟立つようだった。思わず辺りを見回して、壁を背に塞がなければ落ち着かなかった。
私が最も不気味に感じたのは、正体の知れない「穴」や「裸の男」よりも、掴み所のない3人の「語り手」達の方だ。
主人公たちには感覚されない世界で、主人公をずっと(物語の始まる以前から)見つめ続け、記録し続け、主人公と共に在るという「語り手」の存在。これがどうにも割り切れず、大きな引っ掛かりとして付きまとった。
読後に辺りを見回してしまったのは、「穴」や「裸の男」が怖くなったからではない。
それもあるけれど、それ以上に、この「語り手」達と同じように私のことを見つめて、私には聞こえない声で「あなた」、もしくは「君」、「あんた」と呼びかける誰かがいるような気がしてしまったからだ。得体の知れない何者かに見つめられているということ、これ以上に気味の悪いことはない。
とは言え、この「語り手」の立ち位置によってこの小説が特徴づけられていることは言うまでもない。
「私」と「あなた」だけで完結しない呼びかけ。
誰かに聞かれ、読まれることを想定した呼びかけ。
二人称小説で、こんなに広がりのある世界が作られるとは知らなかった。
「語る者」と「語られる者」と「読む者」のこの三角関係は、もはや発明の域なのではないだろうか。
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噂の2人称で語られる舞城の新作。語ってるのは誰?って疑問が残ります。そもそも「淵の王」ってなんぞ?ってとこですが。話はホラー仕立てで特に最後の話は読んでて嫌な感じがしました。人生ってタイミングだけど、そん時気が付かないこともたくさんあるよなぁとふと思い出したのでした。
で、誰が語ってるのこれ?
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舞城的純文学・ミステリの1つの到達点。これまでのどの作品よりも想像力を喚起させられる作品だった。結末がどうとか異論もあるかもしれないが、ストーリーにしか目を向けられないのは読者の貧しさだろう。
間違いなく傑作。
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久しぶりに読む舞城王太郎。相変わらず、作風がよくわからない。なので、考えずに感じて読むといった感じで読了。やっぱり、わからない。あらすじを読んでもわからない。装丁と作品のインパクトは大だった。
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一見普通の小説のように思えるのだけれど、ホラーかな。個々の主人公をなぜか他の視点から見ている何者か。一見なんでもない日常の中でふと覚える違和感。そして突如として出現する謎の存在。いったい何なんだろうこれは。
やや抽象的な部分も多くてはっきりと解明できるものじゃないのだけれど。独特な雰囲気で楽しめました。印象的な言葉が多く使われているのもツボです。
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すごかったー。久しぶりに一気読みしてしまった。
この会話の絶妙さよ。
一見二人称にも見えるような不可思議な文体は、最初とっつきにくさを覚えるかもしれないけれど、読み進むうちに、癖になるというか、なんというか、じわじわと語り手と主人公の暖かい距離感のある血の通った文体である。他者として主人公を見る視点という語り手は、それだけで面白い。
そして怖くも面白い。いままで読んだことのない物語である。○○のようなとか説明できない。
読みやすいので、ホラーが嫌いじゃなかったら読んでほしい。
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おそろしい・・・
ある特定の地域(福井、調布)を行き来する人物たち。
三者三様の末路を辿ることになるのだけれども、
対峙する相手はどれも同質のもの。こわい。
闘おうとするのも立派だけれども、逃げるのも大事。
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うん。舞城王太郎だ。
「どんな話だった?」って聞かれると説明に困る。
なんだろう。人の心の裏側に隠してある黒い穴がひっくりかえって表になったときに、そこに引きずり込まれてしまった人の話、とでも。
ホラーだけど、愛なんだ。
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毎度毎度、どう消化すべきか悩まされる舞城王太郎作品。舞城作品としては筋は追いやすい方だろう。それでもやっぱり、今回も悩まされた。とっくに読み終えて放置していたが、今頃駄文を書き連ねることにする。
長編と称しているが、実質的には3人の男女が語り部を務める中編集である。3人それぞれが、それぞれに「闇」と対峙する…と言えばいいのだろうか。ホラーの要素もあるし、ミステリーの要素もある。文章だけならアクが強いこともなく、普通だが…舞城節には違いない。
ダントツに怖いのは、最初の「中島さおり」の章だろう。途中はともかく、友人宅に駆け付けるラストシーンに戦慄する。だって、実際にありそうだろう、こういう事例…。「闇」とか何とかより、人間の方がよっぽど怖えぇぇぇ! この1編だけ膨らませたら、長編としての完成度が上がっただろう。しかし、そんな安直なことはしないのが舞城王太郎。
続く「堀江果歩」の章。テニス少女が漫画家を志し、テニス漫画を描く。王道スポーツ漫画とは一線を画すどころではない彼女の作品は、大人気を獲得。しかし、原稿の中に、描いた覚えがない人物が…。並行してホラー漫画に取り組み、最終話で明かされる真相はっ! …うーむ、舞城さん、これ漫画として出してくれませんか。
最後の「中村悟堂」の章。曰くつきの空家に敢えて住む悟堂。いやぁぁぁぁ何その猟奇的事件!!!!! どうしてその現場に住むんだ…。3編中では最もホラーっぽいが、最も筋がこんがらがった難物。悟堂が骨のある男なのはわかった…かな。
最初の章の圧倒的リアリティが、その後の章のインパクトを弱めた感があるが、全体的には、日常に潜む落とし穴を描いたと言えなくもない。こういうずっしり重くなりそうなネタを、舞城さんが書くとなぜかカラッとしているのは不思議だ。
などとわかった風なことを書いてみても、いつもしっくり来ないんだよなあ。わかったようでわかっていない迷える一読者を、舞城さんは鼻で笑うに違いない。
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私は光の道を進まねばならない。自分の中の自分内他人が囁く。自分なのに自分は制御できない遠くへと行ってしまう。どんどん離れていく。自分の力ではどうしようもないけど、だけど、結局は自分の足で立つしかない。無力と気力。その狭間で考え苦しみながら立ちはだかる現実の壁を乗り越えていく。ギュッと拳をにぎり応援していた。時折感じるヒヤリとした冷たさも非常に良かった。
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小さな白い光が闇の渦の中に一本すうっと光線を伸ばしている。
私たちはその光の道を進まなくてはならない。
でもあんたはもうほとんど無くなりかけていて、でもだからこそ、そもそも無い私にもあんたを触ることができる。
あんたを集める。僅かな欠片も残さずに。
そして全部抱きしめる。
まとめて抱え、私はあんたとともに光の道を行く。
出口へ。
(P.312)