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紙の本
患者から「早く死なせてほしい」と言われたらどうしますか? 本当に聞きたかった緩和ケアの講義
著者 新城 拓也 (著)
在宅療養中の患者に緩和ケアを提供している医師が、痛みの治療、さまざまな症状の緩和、鎮静、看取りの前、医療者と患者とのコミュニケーションなどについて綴る。緩和ケアをめぐる1...
患者から「早く死なせてほしい」と言われたらどうしますか? 本当に聞きたかった緩和ケアの講義
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商品説明
在宅療養中の患者に緩和ケアを提供している医師が、痛みの治療、さまざまな症状の緩和、鎮静、看取りの前、医療者と患者とのコミュニケーションなどについて綴る。緩和ケアをめぐる10の提言、処方のコツも掲載。【「TRC MARC」の商品解説】
「麻薬ってどう使い分けるの?」「腹水は本当に抜いて大丈夫?」「薬のせいでせん妄になったと言われたら?」「鎮静をどう説明する?」「患者から早く死なせてほしいと言われたら?」――。本書は“3学期”構成となっており、さながら1年間の講義を受けているような流れになっています。23ある講義はすべて生徒の疑問から始まっていて、新城先生がその問いに一つひとつ丁寧に答えます。マニュアルだけでは解決しない、緩和ケアの悩みに答える一冊です。【商品解説】
著者紹介
新城 拓也
- 略歴
- 〈新城拓也〉1971年生まれ。名古屋市立大学医学部卒業。がん患者の外来・訪問診療を実践する「しんじょう医院」を開業。日本緩和医療学会専門医。同学会理事。共著に「3ステップ実践緩和ケア」など。
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紙の本
ようやく出会えた緩和ケアの医療者用の良書
2016/01/13 03:28
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:朝に道を聞かば夕に死すとも。かなり。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
緩和ケア領域において、他科にその魅力を伝えることの難しさに「緩和ケア領域において、患者、そして第二の患者である家族へ寄り添う。症状の最小化よりQOLの最大化」という視点があります。患者の行動一つをとっても、患者が医療者に遠慮するバリアがあったり、「気持ちの深淵」があります。
ハッキリ言います。私にとって緩和ケア領域の本でしっくりくる本は本書以外になかったです。医療者側が表現する緩和ケアにおいて、吐き気や嘔吐や腹水など、緩和ケア領域において、医師が経験や専門に大きく左右される、手探りでやっている部分があり、成功例があるとその成功例がまるで「ベスト」な感じでプッシュしてくる本もあったんです。不帰となる患者の苦痛や経過に対して症状の除去に焦点が置かれている本もありました。
痛みがコントロールできない時、私たちは無力を感じ、自責を持ち、立ち尽くす。筆者は素直に「医療者にも苦痛があって、目の前で痛がっている人がいると、見ている人も痛く、人の心にも痛みは伝播する。」医療者側も辛いんだよ、と述べます。
患者は小さな状態の変化を起こして病状は絶えず揺らいでおり、バリアンスが生じます。コントロール不可な痛みが眼の前にあり、後ずさりしながら「頼む、これで眠ってくれ」と歯ぎしりする。
その場しのぎの処方が必要になる「痛み」に対する三つのパターンってのが秀逸でして、「ああ、こういう機序だったのか」と膝を打ちましたよ。
医療用麻薬が効かない時、レスキューの頻度を多めにしたり、容量を多くしても、「鎮痛薬の投与が痛みを決着させるというよりも自然と嵐が去るように痛みが治まってくれるという感じ。」という瞬間があるわけで、その中でも医療者は家族にどう答えたらいいのか?って言葉に詰まる時、筆者は「私ならこうする」と逃げずに自分の考えを述べるのです。
私たちの不安や無力感はバーンアウトも生むし、鎮痛薬で眠らされたという家族の思いがないように事前から治療方針を適切に患者や家族に伝え話し合う必要がある、とします。それも単に確認作業じゃなく「いっしょに考える」姿勢を示し、コミュニケーション技法より、まず信頼関係を持ちましょうと。
目の前の患者も家族も自分たちの手持ちの知識を総動員しながら、苦痛を抱えています。食べられるようになれば元気になれると信じ、味覚や楽しむ余裕よりも、本能的な欲望が食行動の根幹となる場合があります。
医療者も苦しい!マインドがあっても、それでも私たちはプロなんだから時には型にはまった「振る舞い」は必要でして、患者は「自分がどうしたいのか」というニーズ以前に、心の「溜め」がない場合があり、医師の好奇心は患者にとっては希望の光になることがあります。だから心的疲労が溜まると、患者への興味がそがれるので、患者への関心が医療者自身の心的状態のバロメーターになります。
私たちは当たり障りのない表現としてつい「いつどうなってもおかしくありません」とリスク回避的言動をとりがちです。しかし、時にそれは「医療者の説明責任と免責の言動」より「呪い」であり、そのデメリットを考える機会は少ないです。
信頼関係が整うと、予期される、せん妄や鎮静の説明が可能で、の多くは病床の悪化によるもので、治らないことが多いことの説明を理解してくれます。
「私は苦しくないように地球することを約束します」という未来を保証することが大切で、もちろん軟着陸が理想形ですが、着陸できるようにいつも滑走路で灯火を照らすという緩和ケアの神髄が読後感に残る良書です。