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紙の本
俺の女社長 (祥伝社文庫)
著者 草凪 優 (著)
鶴谷愛子は急逝した父から建築会社を継いだ三十歳の三代目女社長。黒髪のベリィショートに白い小顔、きりりとした切れ長の眼と、筋の通った高い鼻、意志が強そうに引き結ばれた口許を...
俺の女社長 (祥伝社文庫)
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商品説明
鶴谷愛子は急逝した父から建築会社を継いだ三十歳の三代目女社長。黒髪のベリィショートに白い小顔、きりりとした切れ長の眼と、筋の通った高い鼻、意志が強そうに引き結ばれた口許をした気品のある美人だ。そんな彼女を、経理部の三上は副社長派からスパイを命じられ尾行していた。彼が見た、普段とまるで違う可憐で愛らしいもう一つの貌とは!?赤裸々な羞恥官能の傑作。【「BOOK」データベースの商品解説】
鶴谷愛子は急逝した父から建築会社を継いだ3代目女社長。30歳の彼女は気品のある美人だ。副社長派からスパイを命じられ、彼女を尾行していた経理部の三上は、ある日もうひとつの“貌”を知って…。官能小説。【「TRC MARC」の商品解説】
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紙の本
全てを失ったからこそ得られる男女の本当に求めていたこと
2015/11/11 20:18
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:DSK - この投稿者のレビュー一覧を見る
会社の行く末を案じる副社長の一派から跡取りである美人女社長の秘密を探るスパイを命じられた主人公……これが結局は「ミイラ取りがミイラになる」がごとく情が移り、情を交わす話となるのであろうことはあらすじからも予想できることだが、その予想を覆すことなく、むしろ現実的な流れで逆の意外性を醸しながら最後は男女のピュアな心持ちに辿り着く大人の官能小説になっていた。自らの趣味趣向に純粋な愛着を示す可憐な女社長は、異性への愛情もまた純粋なのである。
順調な出世街道を歩んでいた主人公にとって、そして妻のある身にとって、どう見ても不利な側の女社長と一蓮托生な関係にまでなってしまったのは果たして良かったのだろうか?というテーマが潜んでいる。いわゆる派閥的な世界が存在する組織に属していれば多かれ少なかれ巻き込まれる可能性のあるテーマでもあろう。フツーに考えれば利のある側につきたいものだが、女社長との体験とその魅力が逡巡させる。これを一般的な人柄や人徳などに置き換えれば組織人にとって普遍のテーマであることが分かる。官能的な世界を通じて社会的なテーマを題材にしていることが分かる。
自ら進んでピュアな世界に身を移そうとしたかの女社長に比べると、とんだ社命に従ったばかりに蒙ったとばっちりだとさえ思えてしまう主人公には不憫な一面もあるのだが、全てを失ったことで逆に失ったモノは無かったのだと、本当に大事なモノを得ることができたのだとする結末には含蓄があった。そして、そこに至るまでの経緯の後に、まるで花嫁姿のような衣装に身を包み、これをアナタ(主人公)のために着たのと言わんばかりに喜ぶ女社長の姿にはとってもキュートな魅力があって、何だかじわーっとくるものがあった。
さらに言えば、女社長の秘密は何も1つだけではない。颯爽と振る舞いながら内実では跡取りならではの重圧と戦い、分不相応と自覚しながら奮闘していた「本来の姿」は被虐的である。そのストレスの発散も兼ねて行われるのは主従の関係であり、それを官能的に描写することで女社長の、もう1つの隠れた面が暴かれていくギャップは本作のもう1つの肝であろう。歪みのある情交の形ではあるが、その歪みを恥じらいながらも正直に伝える女社長はやはり純粋な人なのである。そして、それに何とかして応えようとする主人公の本質もまた然りと考えたい。