紙の本
非正規労働者のみなさん、もっと怒ろう!
2015/11/08 01:39
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投稿者:くりくり - この投稿者のレビュー一覧を見る
先日、厚生労働省が労働者全体に占める非正規雇用労働者の割合が、4割に達したと発表した。正規雇用、非正規雇用といわれるが、最近の非正規雇用は臨時・一時的なものではなく、基幹的な仕事を担い、正規労働とほぼ同じ仕事を担っているにもかかわらず、賃金も労働条件も正規労働者に比べ著しく劣っている。労働者派遣法が改正されたが、改正ではなく、今まで正規労働者が担ってきた仕事が派遣労働者でもより担えるようにしたのであって、今後派遣労働者も増えるであろう。ますます、非正規化が進むことが予測される。本書は非正規労働者のこうしたいわれなき不当な扱いを身分社会と批判している。非正規雇用にしか就けないことが「自己責任」と感じている労働者が多いと思うが、森岡氏は企業に追随した政府の政策を批判している。
紙の本
労働運動が低調な時代に
2015/12/14 16:56
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投稿者:ぴんさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
労働組合の組織率が低下の一途をたどり、労働運動が低調化し、経営者側の論理だけで、不安定労働、低賃金が「標準」であるかのように語られる昨今、人間らしい労働とは何かを改めて考える必要がある。そのときに参考になる一冊。人間らしい労働とは、政権を握る権力者から恩恵的に与えられるものではない。労働者が疲弊していく社会に「一億総活躍社会」はないのではないか、と改めて考えさせられる。
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雇用身分社会から抜け出す道筋を考える
2015/12/16 16:40
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投稿者:チップ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書の中でいう「雇用身分」は中世や近世における階級的な差異をともなった身分とは違う。
かつての身分制は、武士と農民のように異なる階級間の支配・被支配の関係を含んでいたが現代ではそうではない。
現代日本の雇用身分制は賃金その他の労働条件において比較的恵まれた地位とそうでない地位との間の一定の序列を伴てはいるが、同じ「労働者階級」内部での階層の間の身分制である。
比較的恵まれた正社員でもしょせんは企業に雇用された労働者だ。
派遣はいつでも着られる身分
パートは賞与なし、昇給なしの低時給で雇止めされる身分
正社員は時間の鎖に縛られて「奴隷的」に働くかリストラされて労働市場を漂流する身分
こんな働き方でいいのだろうか?
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良書。
怒りが込み上げてくる。
日本人の給料は、悪い方向に向かっている。日本の経済は、低所得者に支えられている。
政府は、これを推進する政策を行なってきた。もっと国民は、怒らなくてはいけない。
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戦前の雇用関係の在り方や、現在の雇用関係の問題、その処方箋を考察する。
戦前の人材募集のやり方は甘い広告でひとを集めて、条件と異なる過酷な労働を課する。派遣労働の在り方なんかは、戦前のそれと変わらないと感じてしまう。
雇用から生まれる身分関係。正社員も決して安泰ではない。ブラック企業の存在や雇用の流動化の名の元に、雇用破壊を進める政府の政策。
貧困は決して他人事ではなく、誰もが簡単に陥る罠であると思いました。
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著者の結論は確かにそうだろう。最低賃金を上げ、労働時間を下げ・・・・。
そうだろうか。
被雇用者である限りは、永遠に豊かに(金銭的に)はなれない・・・という当たり前のことを知るべきでしょう。
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著者は関西大学で経済学部2014まで教えていた。専門は企業社会学。雇用の状態~正社員、パート、アルバイト、臨時、派遣などによって給料が違い、雇用が身分化して所得分布が階層化しているとする。
明治中ごろから紡績などに女工が集められたが、多くは募集人によって農村部から集められ工場に送り込まれた。この場合雇用関係は工場主と女工との契約の前に、工場主と募集人との契約関係であった。85年に労働者派遣法ができたことによりこの戦前と似た関係になった。くしくも85年は同時に均等法もできている。
雇用身分社会から抜け出す鍵として、1労働者派遣制度を抜本的に見直す~著者はゆくゆくは制定以前の規制に戻したいが単純業務の職種を禁止とすべきとしている。2非正規労働者の比率を引き下げる。3雇用・労働の規制緩和と決別する。 4最低賃金を引き上げる。 5八時間労働制を確立する。 6性別賃金格差を解消する。を提案している。これができれば安倍さんは苦労しないが・・
またディーセントワークという言葉を紹介している。これがこの本の最大の収穫だ。decentとは見苦しくない、礼儀正しい、恥ずかしくない、裸でない、人並みの、人間らしい、親切な、寛大な、適切な という意味。著者は「まともな働き方」としている。また、江口英一の「現代の低所得層」1979を紹介し、その中でワーキングプアは「あるべきものがない状態」、人並みの状態が「剥奪deprivation」されており、一般に当然と認められている状態から遠ざけられているので、社会参加不可能の状態に置かれている、と紹介し、デプリペーションはディーセントでない状態、であるとしている。
お金がないのは社会問題だというのは誰でも分かるが、根本の問題は、不安定な雇用により、まともな権利(正当な賃金と社会保障)から遠ざけられ、「社会参加ができなくなっている」ことだというのが分かった。この考えを政治家、企業家に認識して欲しい。
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最低賃金を上げ, 男女の雇用の差別を少しずつ無くしていくしかない。今のままでは貧困の連鎖が続いてしまう。株主資本主義の行き着く先は、欲望の最大化。
効率的な市場は欲望を最大化させるだけで, 人間的な尊厳を持った生活を万人に提供することはできないのではないか。自由競争は強い奴が勝つ仕組みであり、政府の人間が一部の大企業や機関投資家や銀行などのために規制緩和を続けているのは政治家としてどうなんだろう。
規制緩和の結果、一般市民に利益はあるのだろうか。裏で政治献金や賄賂をもらっているから,彼らに利益になるような政策を出しているのではないかと思ってしまう。
適正な規制と適正な規制緩和を考えるのが官僚や政治家の役割であって、なんでも規制を緩和すればいいのなら国家なんかいらないって理屈になるのではないか?
国家こそが個人にとって一番の規制だと思われるからである。
今のような状況が続くなら、雇用によって社会的身分が分かれ、個人個人が分断された社会が完成してしまう。
男女が協力しあい、長時間働きたい人は働き、フレッキシブルに働きたい人は自分お時間に合わせて働くそんな社会が望ましいと思う。
理想を語れなきゃ政治家なんていらない。
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現在の勤労者のおかれている状況を戦前の歴史からひも解き、現在の「雇用身分社会」という状況が出現した様が解説されており、わかりやすかった。そして今後の提言として、「派遣労働を規制し、最低賃金をパートやアルバイトであっても何とか生活できる水準にまで引き上げ、合わせて性別賃金格差を解消し、八時間労働制を実現するだけでも、働き方はいまよりはるかにまともになる」という提言は納得すると同時に、このような提言をしないといけないほど雇用破壊?が進んでいるという実感を持ち末恐ろしくなった。
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格差の問題を雇用形態、いわゆる派遣業務、派遣社員という切り口で考察している。
はじめは、戦前の「女工哀史」に代表される過酷な労働の様子から話しが始まる。
なんとも悲惨な労働を強いられていたかと暗澹たる思いになるが、それほど遠い昔の話ではない。自分の母親からも姉妹や従姉妹が繊維工場に勤めに行って体を壊して若くして亡くなったり、足を悪くしてびっこになったりした話を聞いた覚えがある。女工の勤務体系は斡旋業者の介在する、まさに派遣労働だったのだ。そして、終戦後労働法が整備されるまでは労働者の待遇はとてもひどかったと言える。
そして、その雇用形態は労働者と人集めの会社(あるいは親方)との雇用契約と、人集めの会社(あるいは親方)と実際に労働者を働かせる会社側の契約とは別々になっていた。このため労働者は直接働いている会社側に文句を言えない構造になっており、戦後はこのような形態の派遣業は禁止されてきていたが、1980年以降の雇用の規制緩和と共に次第に緩和されてきた。
つまり、現在の派遣業務は戦前の労働環境へ回帰しており、パートタイム労働、非正規労働など不安定な労働をどんどん生み出していると言うわけである。
それらの労働問題の大きな流れとそれぞれの問題点の提起はたいへん勉強になる。
結局のところ高度経済成長後の株主民主主義の台頭により、利益を得るのは企業と金持ちの株主だけになり労働者の地位はどんどん低下し、正社員もどんどん非正規社員に置き換えられていき、より格差が広がっていく社会になっていると言えるのだろう。
著者は最低賃金の大幅引き上げをはじめとするいくつもの提案をしているが、改善するのはなかなか難しいように思える。国会で審議しているのは結局のところ金持ちや企業から支援を受けている政治家ではないか。ピケティの金持ちは民主主義の敵だと言わんばかり主張はよくわかる。
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渋沢栄一も夜業をすすめた。
諏訪の千人風呂は、片倉財閥が立ったまま短時間で入浴できるように深く作ったもの。
ファイリングとビルメンテナンスを派遣に認めた頃から変貌した。
派遣業は蟹工船の周旋屋、女工の募集人などと同じ。
労働組合は正社員の解雇にのみ反対した。
限定社員の拡大=低賃金化。
バブル(地価と株価の上昇)は1983年ごろ。
総合職は有給が取れず、サービス残業、休日出勤は当たり前、転勤も拒否できない。
一般職は、休日出勤はない、有給消化率100%、転勤もない。しかし真っ先にリストラ合理化の対象になる。
正社員の消滅=同一労働同一賃金
キャリア上の死のキスを40歳で。
ワーキングプア=労働力のある低所得層
生活保護の利用率は、ドイツで9.7%、日本は1.6%、捕捉率もフランスで90%、日本で18%
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現在、関西大学名誉教授である著者が、2014年3月に定年退職する直前に構想が浮かび、昨年10月に発刊された新書。「雇用身分制」をキーワードに、日本の労働社会全体像を概観したことが特色(筆者談)としてあげられます。
「職工事情」「女工哀史」「貧乏物語」など、日本における資本主義が作られてきた過程の中で書かれた本の内容が紹介されていますが、今の労働実態をめぐる状況と比較しても遠い昔のことでなく、むしろ悪くなっているといえる現状に、恐ろしさを感じました。
非正規労働者が増えたということはそれだけ正社員が減らされたことであり、さらに縮小させられる方向と指摘。それに関連して、人材派遣会社パソナ関係者が「正社員が安定して雇用という常識はもう通用しない。正社員にはリストラや定年がある。フリーターなら本当の意味で一生涯終身雇用が可能」と発言したとの記述には驚きを隠せませんでした。
「派遣労働を規制し、パートやアルバイトであっても何とか生活できる水準にまで最賃を引き上げ、合わせて性別賃金格差を解消し、八時間労働制を実現するだけでも、働き方はいまよりはるかにまともになる」という提言は、ぜひ実現させなければなりません。
お勧めの一冊です。
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戦前の雇用差別と労働者虐使、派遣は戦前の働き方の復活。パート差別、時間に縛られる正社員。雇用形態が身分になった。政府は貧困の改善を怠った。最低賃金を引き上げ、非正規比率を下げ、長時間労働を制限し、賃金格差をなくせ。
もっと面白い題材だったはずなのに。歴史など、よく調べましたねレポートではあるのだけれど。正社員オジサンの限界かも。
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p184のグラフ "主要先進国の平均賃金の推移"を見て,我が国の政策が賃金を下げているのだと思った.日本だけが下がっているのだ.1985年の労働者派遣法の制定がこの憂慮すべき事態の原因だと感じる.あまりにも大企業寄りの法律で,一旦制定されると次々と改悪される.戦前の治安維持法と同じ.この悪法を廃止することを政策に掲げる政党は出てこないのかな.
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以前働いていた職場でこんなことがあった。製造業派遣が解禁される前、請負として大量の非正規職の人達が定年退職者の代わりとして入ってきた。やっている仕事は正社員と大差ない。それまで皆仲良く助け合ってやって来た職場だったが、突然正社員に特権意識が芽生えて請負作業者を下に見るようになり、職場の雰囲気も殺伐としたものになった。『身分社会』が生じた瞬間だった。
雇用形態の差が身分社会の形成や差別にまで繋がっているという著者の認識は実に的を射ている。雇用を取り巻く歴史的状況も俯瞰することができ参考になった。
一つわからないのは、高額所得者を含む全ての所得階層で所得が減っているとすると、この20年間の僅かばかりの経済成長の果実は一体どこに行ったのか? 統計に現れないほど極少数の資産家に集中しているのだろうか?この極端な格差の是正が最優先課題だ。著者の言う通り派遣法の改悪を元に戻すと共に、使いきれないほどの富を貯めている金持ちに応分の負担を求めなければならない。今の政治体制では絶望的だけれど。