紙の本
追悼・前川恒雄さん - あなたに感謝
2020/07/11 06:52
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
新型コロナウイルスが急速に広がり始めていた2020年4月10日、一人の図書館学者が亡くなった。
その後の4月23日の朝日新聞「天声人語」に「戦後日本の図書館のありようを大転換してくれた先人」と記されたその人こそ、前川恒雄、この本の著者であり、この本に描かれているように東京日野市立図書館の初代館長である。
私たちが現在使っている公共図書館は本の所蔵数にしろ館の広さにしろ館内の明るさにしろ、なんとも快適な施設である。
しかし、前川さんが日野市の図書館に関わるようになった昭和40年当時は図書館は暗くかび臭い印象がつきまとった施設であった。
何しろ当時の図書館員は胸を張って自分の仕事が言えないほどであったという。
前川さんが迎えられた日野市にしても、図書館があったわけではない。
前川さんはじめスタッフが一から図書館作りを始め、その最初が「ひまわり号」と名付けられた移動図書館だった。
移動図書館こそ「本当の図書館とは何かを、市民に肌で分かってもらうための唯一の方法」だった、とこの本に記した前川さんにとって、「本当の図書館」とは市民の求めに応じてしっかりと本を貸し出すところということだろう。
今ではどこの図書館も当たり前のようにやっている「予約(リクエスト)サービス」も日本では前川さんたちの日野の図書館が最初だったそうだ。
移動図書館から中央図書館の開館まで、この本に描かれているのは単に日野市の図書館の歩みではなく、この国の図書館の歩みでもある。
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投稿者:おどおどさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
自動車図書館に出会ってみたいけど、まだ出会ったことがない(時間帯など調べたらわかるだろうけど)
この移動図書館も同じようなものかな?いつか出会いたい。
紙の本
公立図書館の仕事は「公務」なのだなぁ
2019/03/06 09:25
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投稿者:ぱぴぷ - この投稿者のレビュー一覧を見る
いまは、公立図書館にも民間による業務委託も入っているようだけど、「公立」図書館というのは、基本的に公務員の仕事で、公務員の仕事とはこういうことなのだなぁと教えられました。
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「図書館は、市民の要求に合わせながら、主体的な判断によって本を選び、その選択がまた市民の要求に影響を与えてゆく。良い選択が行われている図書館にはレベルの高い要求がでて、市民も図書館も高まってゆく。」とか、前川さんが助役になって、「市民を高めるような要求、行政がぜひ取り上げなければならない要求もあったが、市民の自立をさまたげるような要求もあった。そのような要求は、日野か他の市が市民に媚びるような施策をしたり、要求に屈したりした実例から誘発されたものだった。」とか(いずれも239ページ)この人の根底にある考えかたは、ここなんだな。
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公共図書館の在り方について、様々な角度で意見が取り交わされている現在、初心に戻って日野を見つめ直したい。
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職場の人と話をしていて、いまが読む機会なのだと思い、図書館で借りて読んだ。
昭和四十年代、日野市立図書館と図書館界のあゆみ。
初代館長による記録、2016年復刊。
感動し、反省しました。
ここ半年いろいろあって、向上心のない馬鹿になっていました。
諦めず、より良いものごとを目指して実践を重ねていきます。
今さらでしたが読んで良かったです。
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”帯の言葉「1965年、図書館のなかった市に、1台の移動図書館が誕生する。本を求めている人がいるなら、どこへでも行く。若い彼らの実践が日本の図書館を大きく変えていく。本と、市民と、図書館で働く人たちの、暑い記録」
いやはやこれはスゴイ本。図書館や本に関わる人はもちろん、公共サービスや組織内スタッフとして働く人たちにも感じるところが多数見つかるだろう一冊。
著者・前川恒雄さんの「気骨ある誠実さ」が文章から伝わってきました。「復刊に際して」からは危機感のようなものも…。
夏葉社 島田さんへの感謝の言葉には「自ら求めて本を読む人」が増える社会への強い願いも感じます。
<キーフレーズ>
・日本の図書館は教育し与える図書館であり、イギリスの図書館は奉仕し使われる図書館であった。(p31)
・館長以外の人は一般に数年で他の図書館に移り、いくつかの図書館で能力を磨いてゆく。館長になると、大体は長く一つの管にとどまって、館の経営と職員の教育に専念する。(p33)
※昭和38?39年、イギリス研修で前川さんが見てきたこと。
・昭和40年3月、私はあり山から、図書館を作るために日野に行かないかと言われた。(p40)
★なかなか眠れないままに、今後どうすべきかをあれこれと考え、(略)朝もう一度考えなおしてみてから、確信をもって有山に相談に言った。私の結論、それは移動図書館一台だけの図書館だった。(p43)
<きっかけ>
夏葉社で復刻した名著。twitterでのコメントで絶賛されていたのが気になって。”
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2020.4
こんなに力を尽くした人たちがいたのか。当たり前にある図書館は当たり前じゃなかった。徹底的にやるってこういうことなのか。厳しい。自分にそれだけの覚悟があるか、怖気づく。でも本を特別に想う気持ちと子どもに手渡してあげたいという気持ちは劣らないはず。さて。
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日野市に市民のための本当の図書館ができるまで、さらにその後の話。
周囲の無理解と闘いながら、信念を貫く姿に熱くなる。
図書館、本に関心のある人はもちろん、自分が身を置く世界に想いを持って臨む者、変えるべく挑む者にも、強いエールとなるだろう。
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今読んでもまったく古びていない主張に驚かされる。と同時に、何年たっても同じような障壁の前で足踏みしている業界の成長のなさにあきれもする。
すてきな装丁で生まれ変わった本書は、これからも多くの司書の指針となるだろう。
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フォローしている方のレビューを読んで、図書館ヘビーユーザーの自分としては、そのありがたい存在の道のりを学ばねば…と思い図書館で借りた。
nejidonさん、いつも自分ではたどり着けない本を教えて下さりありがとうございます。
あまりにも当たり前に利用している公共図書館。
しかし、私が子供の頃は、今とだいぶ違っていたのだ…
この本を読み、過去の記憶を辿った。
40年ほど前、地元横浜市には県立図書館しかなかった。近場にあったのは、この本でも触れられていた青少年図書館。
母に連れられてバスで行った記憶があるが、本の解説通り残念な図書館で、子供の本は少なく、あっても魅力を感じない本、しかもボロボロだった。
仕方なく借りてはみたものの、読む気が起こらず、返却日に返しに行った後は行くこともなかった。
静かに本を読むより、外で走り回る方が好きだったこともあり、読みたい本は地元では有名な有隣堂で買ってもらうか(今は大分寂れてきてしまったが、昔は本好きでなくとも心ときめく本屋だった)、学校で借りるかしていた。
それが、10年ほど経ったころ、近所に素敵な図書館ができたのだ。
高校の図書館がこれまた、あまり魅力的でなかったために…いつ行っても生徒は私の他に一人いるかいないか…この新しい公共図書館には大いにときめいた(割と建物フェチである)。
受験もあってあまり通えなかったが、行くと必ず読みたくなる本があり、安心感と高揚感が合わさったもので満たされた。
そんな有難い図書館の基礎を作り上げて下さったのが、この前川さんなのだ。
今年の4月に亡くなられたそうだが、どんなに行政側にひどいことを言われようと、一歩ずつ地道な努力を積み重ね、市民に良書を届け、その実績と信頼を得て山を動かした。
信念を貫いた前川さんと前川さんを支えた人々に、当たり前と思っていたことを申し訳なく思う。
少子高齢化、電子書籍など、図書館のサービスもまた変化の時期を迎えているだろうが、前川さんの精神を受け継いでいってほしい。
余談だが、件の青少年図書館は、この本にある通り「コミュニティハウス」に変身したようだ。ググって確認した。
最後に印象に残ったフレーズを。
なんか今話題の学術会議の任命拒否にもつながるような気がする…。
「みんなをあんまり賢くしてもらうと困るんだよなあ」人々が賢くなり知識を持つことを恐れてる者たちが、図書館づくりを陰から妨害する。自分の貧しい精神の枠内で人々を指導しようとする者たちが、図書館の発展を喜ばず、人々を図書館から遠ざける。152p
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知り合いの長野県内の自治体職員ブログで紹介されていたので、読了。
昭和40年代の東京三多摩地区での、図書館と市役所内外の政治との関係、図書館と公民館との関係など考えさせられる内容だった。職員になりたての頃、自治研活動で名前を聞いた浪江 虔氏の名前が出てきたのは発見。
何より、図書館は建物ではなく、システムだということ再認識。
そして、身近な市政についての資料の充実の必要性について感じた。
自治体職員など地方自治に携わる皆さんにぜひ読んでほしいと思う。
自分も市立図書館の協議会の委員を引き受けているが、改めてその責任の重みを感じた。
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現在各方面から信望の厚い夏葉社から気になる本がでているなあとは、だいぶ前から気になっていました。書店、図書館関係の本を定期的に読みたい人なので、この題名は大好物の予感がしました。
ところが予想を外れ、さらに上を行く素晴らしいほんでした。
戦後、図書館が発展をして、どの市町村にも図書館が有り、人々の「読みたい」という欲求にフルパワーで答えてくれています。
しかし最初から図書館が有ったわけでもなく、誰もが図書館に理解が有ったわけでもなかったのです。
著者の前川恒雄は、図書館の無かった東京都日野市に移動図書館と作る事からスタートし、住民との絆を築きながら日本屈指の貸出数を誇る図書館に育て上げます。
今でこそ誰も図書館の存在意義の有無を声高に言う人はいないでしょう。水面下では要らないと思っている人が居るとしても。
しかし、僕が生まれる少し前にはまだまだ図書館という存在は盤石ではなく、周囲と戦って居場所を獲得して行かなければならない存在だった事が分かります。
古来から情報や知識は権力の象徴であり、民衆に無用な知識を与えないというのは為政者にはセオリーでした。最も効率的に知識を得る事が出来るのが書物であった事は間違いのない事です。なので昔は本を読むと反抗的な人間になる、ろくでもない人間になると言われていたわけです。
それを公に平等に皆が読む事が出来る図書館という制度は、とても重要な仕組みです。
本当は民衆に知恵を付けて欲しくない為政者が、進んで提供してくれているのですから使わないと本当に損だと思います。
こうして厳しい戦いの中で築き上げてきた図書館システムに感謝して今日も本を読みます。
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『未来の図書館のために』も続けて読んだ。
今までに感じたことのないような力強い本であった。人が人として生きるってこういうことなんだろう、いや、絶対こういうことだ、と確信した。
前川恒雄さんは、強く、熱く、そして全てのひとの幸せを願って、図書館をつくり、守り続けてきた。そこに少しの妥協もなく、生きてきた。生きてくれた。
感動と、感謝と、生き様に心震えた。
本を読んでよかった、楽しかった、驚いた、本が大好きだ、そう思う人全員に読んでほしい。
図書館が元気な国であってほしい。みんなが好きなことを学び、知り、語らうことで、社会は豊かになる。誰かと比べて幸せだとか不幸だとか、勝ってるとか負けてるとか感じることなく、それぞれが生きている楽しさを感じる世界がいい。そのために、図書館は、元気であってほしい。
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日本の公立図書館の姿を作り出した、日野市立図書館の物語。新しいサービスが、生まれ育ち、市民の中に定着していくプロセスが、熱気あふれる筆致で描き出されている。