紙の本
イロモノにならずに恐怖感を出す
2017/06/07 00:07
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投稿者:サラーさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
恐怖をテーマにしていますが、化け物や超常現象の類はなく、感じるのは身近な狂気、ちょっと異質な環境におかれた場合の狂気とそれを読者に伝えられるから名劇作家なのかと思いました。特に度胸試しで蝋人形館で一夜を過ごす話は臨場感があり面白かったです。
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19世紀末から20世紀半ばまで、パリの夜に悲鳴を響かせた
恐怖大衆演劇のグラン=ギニョル座、
そこで百本以上の脚本を書き「恐怖王」の名を恣(ほしいまま)にした
座付き作家アンドレ・ド・ロルドの短編小説集。
劇場の成り立ちとロルドの人物像については
『グラン=ギニョル―恐怖の劇場』http://booklog.jp/item/1/4624700651
で知っていて、具体的な芝居の内容は
『グラン=ギニョル傑作選』http://booklog.jp/item/1/4891768088
で大まかに把握していたが、小説版は初めて読んだ。
1編がコンパクトで、おやすみ前にちょうどいい。
が、まだ影響を受けたような筋書きの悪夢を見るに至っていない(笑)。
各編は意外にマイルドで、
もっとえげつない話を期待していた読者としては、
やや肩透かしを食った感があるが、
小説なので、読み物としての完成度を高めることを優先すると、
こうなるのかな、といったところ。
雰囲気が好みに合うという人は、これを取っ掛かりに
上記の戯曲集にアタックするのがよいかもしれない。
脚本の方がズバズバッと容赦なく残酷。
ちなみに「恐怖」と言っても、ここには幽霊や超常現象は登場しない。
描出されるのは、今日明日、誰の身にも振りかかり得る災厄の数々。
個人的にはこちらの方が余程リアルに怖い。
ところで、ブルトン『ナジャ』で言及されており、
『グラン=ギニョル傑作選』でも少しだけ紹介されている、
グラン=ギニョル座とライバル関係にあったドゥー・マスク座(雙面劇場)の
「気のふれた女たち」(「狂気の女たち」)という芝居が、ずっと気になっている。
女生徒を捜索していると、その少女は夜明け前、
医療戸棚の中から頭を下にして床に崩れ落ちてくる……というもの。
邦訳は出ないだろうか。
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グラン・ギニョルの座付き作家だった著者の怪奇短編集。
そもそもの『グラン・ギニョル』については巻末の解説で紹介されているが、著者については東京創元社の『怪奇小説大山脈』にも紹介があるようだ。言われてみれば何編か収録されていたな……すっかり忘れていた。
作風はといえば、サイコサスペンス系というか、所謂『怪奇小説』から連想する王道のものではない。幽霊や超常現象とは無縁で、人間の業であったり、因果応報であったり、現実に有り得そうな恐怖を描くタイプ。また、各編が文庫で大体10ページ前後と、非常に短いのも特徴的だった。
他も読んでみたいので、続編が出るといいのだが……。
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20世紀初頭のパリで絶大な人気を博した恐怖演劇グラン・ギニョル座の劇作家アンドレ・ド・ロルドの22篇の短編集。
本当に短い作品で、10ページ程しかない物もある。
ラストで怖いと感じさせる。
怖いといっても、嫌な感じがするという程度の物ではあるけれど。
恐怖小説といっても、幽霊や怪物といった絵空事ではなく、人間自体の恐ろしさ、狂気に走った心の恐ろしさといったもので、結局一番恐ろしいのは人間だなということだ。
どれも恐怖を扱う作品であるが、ひとつ「死にゆく女」だけは、死んでいく女性が息子を思う気持ちが描かれており、ちょっと感動的だ。
冬に恐怖小説も悪くないなと本屋さんでたまたま見つけた本書を読んでみたが、軽く読めるなかなか愉しめる一冊だった。
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22話の短編集。1話あたり10ページ未満なのですぐ読了。恐怖劇場のタイトル通り、精神病院や精神疾患や浮気の復讐、外科医からみの話が満載。
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タイトル通りの恐怖小説短編集。グラン・ギニョルの劇作家だったそうです。でも「恐怖」といっても、幽霊も怪物も超常現象も出てきません。それでも怖い、のか、だからこそ怖い、のか。
お気に入りは「恐ろしき復讐」。たしかにこれはもっとも恐ろしい復讐法と言えるかもしれません。この状況を想像するだけで気が狂いそう。あっさり殺される方が何倍もましだと思います。
似た趣向のものでは「もうひとつの復讐」もあるけれど。こちらは怖いというより、皮肉に笑える作品です。この復讐法を思いついた彼が偉い、と思いました。殺したって何にもならんよなあ。
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・アンドレ・ド・ロルド「ロルドの恐怖劇場」(ちくま文庫)を読み終へた後、「訳者あとがき」を読んで納得できた。なぜこんな作品ばかり書くのだらうかと思ひながら読んでゐた。その疑問がある程度は解けたのである。 解説はかう始まる、「前世紀初頭、パリの狭い路地の奥にたつ小さな劇場で、夜ごと奇怪な芝居が演じられていた。(中略)劇場の名はグラン・ギニョル座。」 (255頁)この一座は有名な人形芝居一座である。これが「恐怖芝居専門劇場の色合いを強めるのはその二年後、マックス・モレーが二代目支配人の座についてからだった。彼のもとでグラン・ギニョル座の座付き作家として数多くの作品を提供したのが、『恐怖のプリンス』なる異名を取ったアンドレ・ド・ロルド (一八六九~一九四二)であった。」(同前)私の知るグラン・ギニョルはこの二代目以降の恐怖芝居専門である。wikiにはかうある。「そこでは浮浪者、 街頭の孤児、娼婦、殺人嗜好者など、折り目正しい舞台劇には登場しないようなキャラクターが多く登場し、妖怪譚、嫉妬からの殺人、嬰児殺し、バラバラ殺人、火あぶり、ギロチンで切断された後も喋る頭部、外国人の恐怖、伝染病などありとあらゆるホラーをテーマとする芝居が、しばしば血糊などを大量に用いた 特殊効果付きで演じられた。(原文改行)個々の芝居はふつう短篇で、複数本立てで上演されることが多かった。観客動員数ばかりでなく、『観客のうち何人が失神したか』も劇の成功・不成功を測る尺度だった。」つまりは、とんでもない芝居小屋であつた。この台本の多くはロルドの書いたものだつたのであらう。本書は本文250頁に満たぬ中に22作を収める。平均すれば10頁ちよつとである。短い。テーマはwikiにあるやうのものかといふと、実は必ずしもさうではない。より頻出して重要なのは医学的な問題である。孫引きになるが「圧倒的なのは、医学的恐怖、とりわけ精神医学的な恐怖である。」(真野倫平訳「グラ ン=ギニョル傑作選」)これは芝居にもロルドの短篇にも言へる特徴である。この医学的恐怖が本書の作品に圧倒的に強いのである。医学関連でないものはいくつあるのか、本当に少ない。なぜかうなのかといふ疑問はグラン・ギニョル座座付きであつたと知れば解ける。さうか、あの関係かである。それゆゑに、この 「恐怖劇場」は超自然の怪異を扱はない。個人的には超自然の怪異が好きなので、どうしてもこの書名にそれを期待してしまふ。ところがそれが見事に裏切られ る。これも、なぜこんな作品をと思ふ所以である。私はグラン・ギニョルは知つてゐたが、ロルドは知らなかつた。だからさう言はれれば納得もできてしまふのである。
・巻頭の「精神病院の犯罪」は題名からしてロルドらしい。精神病院に入院してゐる少女が結局は目をつぶされる話である。次の「蠟人形」は蠟人形館に一晩こもる賭けをした男達の話である。これらはそのまま人形芝居にできさうだし、あるいは逆に人形芝居から短篇になつたのかもしれない。視覚的に恐怖のイメージを膨らませることができる。人形劇が先か、小説が先かである。ロルドは本質的にグラン・ギニョルの座付き作者であつたのであらうか。「あとがき」の中に 「短篇のなかには��曲をもとに書かれたものも少なくないが、決して単なる焼き直しではなく、小説ならではの工夫もこらされている」(258頁)ともある。 さもありなんと思ふ。これらの短篇は視覚的な要素が先にあつて、それをこのやうな形に定着させたものであつた。おもしろくはあるが、同趣の作品が並ぶと最後は食傷気味になる。これは編集ではなく作者の問題なのであらう。
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古典クラシックホラーの趣がある大変に面白い本でした。
ホラーといえど幽霊や化物が出てくるようなものではなく、人間の狂気や死が悲劇的な結末をもたらしたり、恐ろしい事態を招いたりするものばかり。こういったホラー大好きです。
素晴らしかったです。
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怖いモノ見たさとしては、アンドレ・ドロルドは押さえておきたいな~~と思いまして・・・。
精神病患者ネタが多いんだな・・・。単純にミステリぽいのもあり。
思い込みの激しさゆえにオチは悲しいなあ・・・いつ自分がそっち側に行っちゃうか分からない怖さ・・・。
「告白」のある意味ヤンデレな夫の話が個人的にすきですね~~。
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面白かった。確かに全部、直球(笑。でも、「究極の責め苦」なんて映画化されたキングの「ミスト」じゃん!「精神病院の犯罪」なんかストレート過ぎてメッチャ怖いよ!
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もうとっくに処分してしまったと思い込んでいた物が思わず見つかって、驚き、喜び、そしてちょっぴり恐怖。いや、あなたのこと、忘れてたっていう訳じゃなくって。。。
本の感想。非常にクラシカルに怪奇を表現されてます。それがオカルトでなく、人間の心の内側の黒いよどみ、精神的に入院している人達の現実離れした恐怖など。まあー、ほんとにねー、子供の頃図書室の本を引っ張り出し、床でそのまま読んでた時代にあったのよね、こういう感じの内容に挿し絵が入ってた素敵な。雰囲気は懐かしいけど、内容は結構ダイレクトにがっちり来ますね。
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グランギニョル座の劇作家ロルドの書く小説はオカルトではない。狂った人間とスプラッタの恐怖であり、顔に硫酸、目玉に針を刺される恐怖だ。こんな作風の現代作家は日本では丸尾末広くらいしか知らない。ロルドの父は医師で死体を怖がらない子に育てたくて病院の死体安置所へ連れて行った。結果、ロルドは死体好きな人に育ってしまったそうだ。精神病院を退院間近の少女が見る悪夢は幻なのか現実なのか(精神病院の犯罪)。目玉への執着、いざりや小人、ナイフと鮮血。理屈を求める本ではない。ぶっ続けに読む本でもない。枕元に置いておいて変な夢を見たい寝苦しい夜に一編ずつ読むような、そんな一冊である。
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グラン・ギニョル座の劇作家であり、「恐怖のプリンス」と呼ばれたロルドの恐怖小説集です。グランギニョルと聞くと、やはり血腥くスプラッターなイメージが浮かび、そんな先入観で本短編集を読み始めたのですが…予想に反して理智的。身体的な恐怖と言うよりは精神的な恐怖といった趣の、「狂気」に近い作品が多かった印象です。とにかく医者がいっぱい出てくる。解説を読むと理解できますが、精神医療と人間の闇。この手の恐怖表現は当時は新鮮でより恐ろしいものと見なされていたようです。現在からすればその分面白みも半減してしまうかもしれませんが、「ヒステリー患者」なんかは面白く読めました。
あと「大いなる謎」。どこかゴシックロマンス的なイメージと幻想小説みがあって、個人的にはお気に入りです。
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血生臭く恐ろしい話もあれば、悲しみに満ちた話も、読後、嫌なしこりを残してくれるものも……。飽きなかった。
最初に記されている通り、書かれた時代もあって今読むと「それはいけないだろう」となる箇所も多々あり……時の変化を感じた。
「究極の責め苦」「ベリギーシ」「告白」の辺りが好き。究極の責め苦、告白などの読後感はたまったものじゃないのだけど、こういった話にどうしようもなく惹かれる感覚を覚えるのはなぜだろう。
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一話が短くてスイスイ読めるし面白かった。
今ではありがちな話にも思えるけど、当時はすごく斬新だったりしたんだろうなって。
好きなのは、「無言の苦しみ」と「究極の責め苦」あたりかな。
某有名映画のラストみたいな絶望感。