紙の本
「自分を誇りに思える生き方」をするには
2017/01/08 17:32
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ごみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
Jポップの15曲の詩を通じて、自分、恋愛、時間、死、人生のテーマについて、先人の哲学者の考えを紹介。
その結果「自分を誇りに思える生き方」に辿りつくための考え方を指南。
先生と女生徒との対話により、Jポップの詩の解釈しながら思索を深める形式で書かれているため、読みやすくて、理解も深めやすいところがお薦め。
【学んだこと】
・自己:私という概念が成立する為には、他者(非我)が存在しなければならない
・恋愛:私と恋人は直接的で相互的な関係に置かれている
・日常的な記憶:情報として記憶され、手段として必要のない情報は忘却される
・非日常的な記憶:抽象化されずに現在まで浸透、持続される
・未来:目的は必ず未来にあり、未来に向かう現在の行為は手段となる
・待つことの価値:自分の欲望を滅却させて未来と向き合う態度
・現在の価値:日常生活から切断された瞬間的な時間を過ごすこと。有用性では計れない価値を持つ。
・死を考えることの価値:死に至るまでの人生をどう生きるのか(本来性)
・死:死ぬその瞬間まで、私たちには何度でも自分自身を変えていく可能性が開かれている
・人生の決断(2つの選択肢)
1) 自分を肯定することと引き換えに孤独になること
2)孤独を避けることと引き換えに自分を否定すること
・決断をした人生:私が私であるからこそ選ばれるような生き方
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良書。取り上げられている楽曲を聴きながら読み進めると、心地よいトリップ感が得られて楽しい。読んで楽しいだけでなく、哲学の入門書として非常によくまとまっていた。「自分」「他人」「恋愛」のトピックを順序立てて説明されていて、腑に落ちやすい展開になっていた。
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本当は”自分を問い直すための15人の哲学者”なのだけれど、Jpopをフックに使うことで取りつきやすさを得ています。少し人生に倦んでいる中年にオススメ。
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哲学するきっかけとして、よくできている。
テンポの良い対談形式で話しが進んでいく。
いくつかのJポップがいかに時代と人間に向き合って作られているのか、本書を読んで驚いた。
知ってはいて、いい曲だと思ってはいても、ここまでの内容を持っているとはつゆも思わなかった。
構成、分析、最後のまとめといい、哲学を人生にひきつけて考えられる良書である。
・ヴェイユ:待つとは注意することを伴う
・one ok rock の歌詞の深さ:死についての認識変革 ,SEKAI NO OWARI のRPG:地球を愛すること
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哲学的な本は苦手で全然読んだことがなかったけど、J-POPを題材にしているから、読みやすかったし、読んでいて楽しかった。
でもやはり話が難しいため、あまり詳しく内容を覚えることができなかった。
本の構成的に、先生と麻衣が対話している形なのが読みやすかったし、読んでいる私自身が思い出せないことを麻衣が解説してくれるのがありがたかった。
特に印象に残ったのは、ワンオクの"A new one for all,all for the new one" といきものがかりの「YELL」。ワンオクは普段から聴くから、いつも聞いている曲にこんなに深い意味があるんだ、ということに驚いた。いきものがかりの曲は、自分が進む道を自分自身で決めることの重要さが示されていて、進路で悩んでいる私的にはとても面白かった。
自分とは違う生き方をしている人を、尊敬できるかどうか、が畜群であるかどうかを判断すること、というところが心に残った。つまり、自分が自分の人生に攻めの姿勢でいて、その上で自分と同じように自分の人生を自分で決めている人を尊敬できる、ということだと思う。自分よりも畜群から抜けることに恐怖を持っていない人に対して、ひがむのではなく、尊敬できる、というのが大切。
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自分・恋愛・時間・死・人生の5つのテーマを、J-POPの歌詞から読み解く形。
個人的には、いきものがかり「YELL」から、ニーチェの「星の友情」につながることがとても興味深かったです。
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Jポップの歌詞と哲学。とてもわかりやすかったです!
よく聞く楽曲だったところにも、なんだか因果関係がありそう。哲学科の人は、RADを聞くのかー♪
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2018/6/18
104||ト (3階文庫)
最近のヒット曲の歌詞で「自分」・「時間」・「人生」 etc.を考えて
みませんか !?
● 乃木坂46 「君の名は希望」
● ONE OK ROCK 「A new one for all,
All for the new one」
● SEKAI NO OWARI 「RPG」
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歌詞ってあまりまじめに読んだことがない。女子大生と哲学の先生との対話形式で、歌詞をネタに哲学的トピックを紹介してゆく。楽しめた。紹介されているのは最新のものが中心の超有名曲たちだが(知らないのもあった…)、やっぱり時代的なものが反映されているものなのだろうか。
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哲学的思考のプロセスが対話型文書で分かりやすく表現されている。歌は自己表現やメッセージなので思考を広げるには良い機会になった。結論も腑に落ちる。
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【きっかけ】
本屋で見つけた。中高生には難しいか。
【内容】取り上げられた歌と歌手と哲学者
① ミスチル『名もなき詩』カント
② ゲスの極み『私以外私じゃないの』フィヒテ
③ 乃木坂46『君の名は希望』ヘーゲル
④ AI『STORY』ブーバー
⑤ 西野カナ『会いたくて会いたくて』メルロ・ポンティ
⑥ 宇多田ヒカル『誰かの願いが叶うころ』レヴィナス
⑦ バンプ『天体観測』ベルクソン
⑧ Aiko『キラキラ』ヴェーユ
⑨ 東京事変『閃光少女』バタイユ
⑩ ラッド『おしゃかしゃま』キルケゴール
⑪ 浜崎あゆみ『dearest』ハイデガー
⑫ ワンオク『a new one for all,All for the new one』サルトル
⑬ 嵐『Believe』パスカル
⑭ セカオワ『RPG』ヤスパース
⑮ いきものがかり『YELL』ニーチェ
【感想】
齋藤孝『大人の読解力を鍛える』でもJPOPの歌詞が取り上げられていたが、こちらはより本格的。哲学が絡んでくるので抽象的で難解な部分もある。先生と女子大生・麻衣の対話形式で読みやすくはあるが。
①名もなき詩
「自分らしさ」を意識して周囲と接していると、結果的に「自分らしさの檻」の中に閉じ込められ、息苦しくなるという逆説的な現象。「自分らしさ」とは何だろうと考えるとき、その対象「自分」と主体「自分」は一体となっている。他者について考えるとき、対象とは主体は別々。自分について考えることは、それ自体がおかしい行為。テレビを見ている自分の映像をテレビで見ると、そのテレビの中ではテレビを見ている自分が延々と移り続けているという入れ子構造。
②私以外私じゃないの
「私」を考えるとき、「これが私自身だ」と確実に言えるのは、「私ではないもの」。「私」はリンゴやA君ではない。フィヒテによると、非我により「私自身」が分かっていく。「私は~ではない。~でもない」と限定していくと、「私自身」が分かってくる。
③君の名は希望
透明人間だった僕を君が照らしてくれたことにより、僕は自分の存在を自分自身で認識できた。相互承認にはほどよい距離感が必要。そのバランスが崩れると支配や相互依存になってしまう。
④ストーリー
他者のうち、恋人が最も他者性を帯びている。他者(恋人)は明確に言葉で説明できない。リンゴなどの一般的なものは言葉で説明できる(赤くて、丸いものなど)。言葉で説明できるということは、一般化できるということである。一般化できるかできないかに、他者とそれ以外のものの違いがある。私と物事の関係性は「私―もの」「私―君」の2種類に分けられる。他者、特に恋人は相互的かつ直接的な関係。
⑤会いたくて会いたくて
他者(恋人)と自分が一体になっている。その一体になっている恋人と会えなくて「震える」というのである。「震える」とは生命の危機。一体になっている恋人と別れることは、体の一部をもぎ取られることに等しい。従って、「震える」という表現には強いインパクトがあり、自分の生命を脅かすような意味合いを帯びている。ポンティによると、これは人間の癒合性。私と他者の共同性。
⑥誰かの願いが叶うころ
自分の幸せはあなたと一緒になること。あなたの幸せ(願い)は私と別れること。自分と他者の関係の限界を示している。他者との共同性を突き詰めるとそれは暴力になる。みんなの願いは同時には叶わない。
⑦天体観測
記憶の想起、過去を題材としている。日常的な記憶と非日常的な記憶。日常的な記憶は、履歴書に書かれるように情報化される(履歴書的な記憶)。対して、非日常的な記憶は、純粋記憶(ベルクソンによれば)。非日常的な純粋記憶から、日常生活に必要な分の記憶を捨象したものが日常記憶になる。非日常的な記憶(=純粋記憶)こそが、その人の本来の記憶。しかし、人は非日常的な記憶に浸っていたら、まともに日常生活を送れないというジレンマに陥る。天体観測の歌詞は、過去の自分が経験した純粋記憶を思い起こしている場面を描いている。
⑧キラキラ
未来を題材としている。目的:手段=未来:現在という関係。目的は未来のことであり、手段は現在のこと。人は目的:手段という関係の中で生きている。目的(=未来)に早く達したいがために、いろいろな行動=手段をとる。その意味で人は目的や未来に縛られている。ただ、「待つ」という行為は来るべき未来を予感しながらも、現在を直視する行為である。本歌の歌詞はそういう意味合いが読み取れる。一刻も早く未来を実現したいという欲望に囚われることない、「待つ」ことの精神的な強さ。
⑨閃光少女
現在を題材としている。目的と手段に囚われた日常、また、過去と未来に囚われた日常から脱却するには、蕩尽することが必要だ。今という一瞬を全力で生きることが、今という現在と向き合うことになる。いろいろな柵から逃れて、過去や未来に囚われず、現在と向き合うには、遊ぶことが有効である。遊びは目的:手段の関係に囚われず、今遊んでいることに夢中になること=過去や未来のことを忘れること=現在を生きること。
⑩おしゃかしゃま
人間が作った絶対的な権威である「神様」を否定して、「神様」をつくった人間を批判する。神様が人間をつくったであると同時に、人間が神様という概念をつくった。ここに矛盾が生じる。そして、その矛盾から目を背けようとする人間を自己欺瞞だとして批判する。「神様」が人間の創造物なら、「死後の世界」も同様ではないか。本当に死後の世界は存在するのか?肉体的な死と魂の死。宗教=神様は魂の死を絶対的な恐れだとした。しかし、神様=宗教は人間がつくった産物だと気づいたとき(キルケゴールによると絶望したとき)、人間は初めて本当の死というものを意識する。本当の死を意識することで、逆にどう生きるかということに目を向けるようになる。
⑪dearest(意味:親愛なる人、いとしい人、あなた、おまえ)
日常生活において死は覆い隠されている(公共の場所では死体はすぐに撤去されるなど)。ハイデガーによると「非本来性」。「非本来性」とは本来の生き方から目を逸らすこと。逆に、死に直面することで明らかになる自分自分の本来の生き方を「本来性」と呼び、「本来性」を自覚することを「先駆的覚悟性」と呼んだ。
⑫a new one for all,All for the new one
死を大切な人の死とその他大勢の死に分けたとき、本歌は前者のことを歌っている。大切な人が死んだあとも日常生活を送れるようになることが、その人の死を受け入れたということ。サルトルによると、その人の死を意味づけするのは、その死んだ人自身ではなく、後に残された人。「他有化」。
⑬Believe
前進しなければいけないが、どこに進めばいいのか分からない逼迫感。目先のことで精一杯で、最終的な到達点がどこか分からない不安感。自分の人生についても分からない不安。情報過多、低成長などの現代の社会状況が明確な目標を見渡せなくしている。世界の相対化。パスカルによると「広漠たる中間」。相対化された社会「広漠たる中間」の中での人間の生き方は「気晴らし」「虚しさ」「倦怠」に分けられる。パスカルによると、戦争でさえも国王が自分の不安から目を背けるための「気晴らし」らしい。「気晴らし」はあくまで「気晴らし」に過ぎないので、「虚しさ」が次にわき起こる。「虚しさ」のまま何もしないでいると「倦怠」に陥る。このスパイラル。
⑭RPG
決断をしない人生=「方法」的かつ「世間」的に生きること。世間と同じように生きていれば、自分だけが苦しんでいるわけではないと慰められる。孤独ではないという安心感を得られる。決断するとはこれとは逆のこと。ヤスパースによれば、決断(=飛躍)が人間の人生を表現する。決断するとき、人はもはや世間に囚われていない。「無制約性」
⑮YELL
「翼はあるのに飛べずにいる」自分の人生を決断しきれない。まだ世間に囚われている状態。ニーチェによるとそのような人は「畜群」。人は「畜群」になることで、自分を助けてほしい、自分は有害ではないと示したいと思っている。こう思うのは、人が一人では生きていけない弱い存在であり、孤独を恐れているから。しかし「畜群」を演じ続けることは、他の人々から迫害を受けはしないこものの、疲労が蓄積してくる。孤独でもあってもニーチェによる「星の友情」があれば問題ない。「サヨナラはかなしい言葉じゃない それぞれの夢へと僕らを繋ぐYELL」という部分は「星の友情」の本質を表している。「畜群」というのは世間に同調し、孤独を恐れ、周りにびくびくしている存在で、皆と一緒がいいと思う存在であるが、自らそう望んでいるのなら、「畜群」ではないのでは? 「畜群」かそうでないかの分かれ目は、「自分と違う生き方をしている人を尊敬できるか」「自分を誇りに思えるか」の有無。
終わりに
哲学は散歩に似ている。
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先生と麻衣さんの対談形式で、Jポップの歌詞を引用しながら、哲学のテーマである「自分」「恋愛」「時間」「死」「人生」について考えていくという本。各テーマについて3つの小テーマを考えるので、全部で15曲が引用されています。
Jポップは90年代後半の頃から好きで聴いていましたが、どっちかというとメロディーにばかり意識がいってしまって、歌詞にはほとんど注意を払っていませんでした。こうして改めて歌詞について考える機会があると、存外深い意味をもったものなんだなと気づかされました。特に、一番最後に出てくる、いきものがかりのYELLはすごいですね。
肝心の哲学について言うと、まあ正直ふわふわした理解しか得られませんでした。とっかかりを与えてくれるものなのかなという理解です。それぞれの小テーマごとに関連する哲学者が紹介されているので、自分の興味をもったところについて、さらにその哲学者に関する本を読み進めるなど、深堀するとよさそうです。
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先生と非実在的大学1回生女子がJ-POP聞きながらみんなが好きな感じの伝統的大陸系哲学(あるいは実存主義)入門するという趣向。選曲がかなりよくて成功していると思う。優秀。それに「某本はこうあるべきだった!」という強い意思が感じられる。そういう事情から、一番の読みどころはやはり乃木坂の「君の名は希望」の章と最後のニーチェだろう。「君の名は希望」は名曲っすな。そのキモさについても語ってほしかったが、今後の期待。
(後日記)「君の名は希望」については、自分でも書いてみた。私だとこうなる。ははは。 http://yonosuke.net/eguchi/archives/5201
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個人的に哲学は近寄りがたい&自分には縁のない学問だと思っていたが、非常に身近なJ-POPの歌詞から哲学を考えていくスタイルは自分に合っていた。
非常にはっとさせられたのは、宇多田ヒカルの「誰かの願いが叶うころ」の考察で出てきた「共同性の暴力」である。いくら恋人同士だとしても、「私」と「他人」の関係性からは抜け出せないし、恋人の他社性を否定することは暴力的なことであるとのことだったが、過去の恋人とうまくいかなかったのはコレだわ…と大反省した(笑)
ちなみに私の場合は、恋人なんだから私が考えていること分かるよね?と期待しては勝手に落ち込む、ということを繰り返し、もういい!別れる!みたいな感じのパターンだった。今考えるとめちゃんこ子どもだし相手に申し訳なさすぎる。。。
一方で「誰かの願いが叶うころ」の「私」は相手を尊重しており幸せを願っているからこそ、動けない…のだそう。ちなみに「私」は相手が自分に関心がなくなっていることを分かっている。切ない。
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哲学に精通した著者がJPOPのヒット曲の歌詞から5つのテーマについて哲学の観点からの考察を対話形式で書いた一冊。
自分、恋愛、時間、死、人生という5つのテーマについてJPOPの曲から考えるという斬新なものでありながらも内容は深く各楽曲の深い世界観を味わいながらも哲学の概念も学べて勉強になりました。
相互承認や至高性といった哲学者たちの概念や恋愛における癒合性、星の友情など言葉にできない人間の心理的な描写を哲学で表現することによってより歌詞の意味を感じることができると感じました。
また、歌詞における主人公の置かれた立場や状況を考察することでより曲の世界観や作詞家の意図なども読み取るきっかけにもなり、音楽の芸術的な見地も深めることができました。
本書を読んで学んだ考え方をもってそれぞれのテーマに対する他者との関係性や哲学的な視点で自分自身を俯瞰することで新しい視点が生まれ、より深い人生観を感じることのできるきっかけになると感じた一冊でした。