「honto 本の通販ストア」サービス終了及び外部通販ストア連携開始のお知らせ
詳細はこちらをご確認ください。
このセットに含まれる商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
商品説明
江戸詰めを終え伏見で落ち着いた日々を過ごしはじめた茶人・小堀遠州は、千利休、石田三成、藤堂高虎らとの出会いを振り返り、茶とは何か、ひとが生きるとはどういうことなのかを見つめ直す。『本の旅人』連載を単行本化。【「TRC MARC」の商品解説】
千利休、古田織部、徳川家康、伊達政宗――。当代一の傑物たちと渡り合った茶人・小堀遠州の静かなる情熱、そして到達した"ひとの生きる道"とは。さわやかであたたかな遠州の心が胸を打つ、歴史時代小説。【商品解説】
著者紹介
葉室麟
- 略歴
- 〈葉室麟〉1951年北九州市生まれ。西南学院大学卒業。歴史・時代小説作家。地方紙記者などを経て、「乾山晩愁」で歴史文学賞を受賞しデビュー。「蜩ノ記」で直木賞受賞。ほかの著書に「秋霜」など。
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
さらに高みへ
2016/12/08 07:34
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
まずタイトルについて書いておく。
「孤篷(こほう)」というのは「一艘の苫舟」という意味の庵号である。
その庵号をもらったのが、豊臣の世から徳川時代前期にかけて名声を誇った茶人であり建築家であった小堀遠州だ。
つまり「孤篷のひと」とは、小堀遠州のことであり、この長編小説は遠州が生きた時代を描いている。
この作品が素晴らしいのは遠州の69年の人生を描きながら、その一つひとつの章がまるで短編小説の如き完成度だということだ。
さらにいえば、時々の遠州を描くことで時代に翻弄される人物も描かれて、まるで世界が複数の鏡のようにしてある。
冒頭の「白炭」では遠州の師匠でもある千利休が、続く「肩衝」では関ケ原前の石田三成が描かれていくようにである。
あるいは古田織部や細川忠興といった人物も描かれている。
時代の厚みを持った歴史小説といえる。
では、小堀遠州は狂言まわしかといえば、それはちがう。
時代時代の中にあって、遠州は茶や作庭によって出会う人たちから教え、導かれ、自身の生きる道を模索している。
利休や織部のようなアクの強さはこの物語では削ぎ落され、遠州は静かなまさに「孤篷のひと」と描かれている。
遠州と人びととの出会いを、あるいは心のふれあいといっていいが、葉室麟はさりげなく「ひとは会うべきひとには、いつか巡り合えるものなのですね」と女人の言葉で語らせている。
葉室麟はこの作品でさらに物語の奥深い高みにまでのぼりつめたような気がする。