紙の本
ミステリ仕立てにする理由?
2017/01/04 09:46
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投稿者:AKR1703 - この投稿者のレビュー一覧を見る
引き込まれて一気に読んだ。特に伊狩が家の外壁に絵を描き、それが集落の人々に広がっていく辺りはとてもよかった。疲弊した日本の地方の町や村に起こりうるかもしれない、希望の物語という感じ。ただこの小説の場合、伊狩の過去を時系列を入れ換えてミステリ仕立てで描く必要があったのかなとは思う。確かに笑里の闘病の部分に感じた違和感は最後に解き明かされるのだが…。ラストの一文は、伊狩が絵を描く一番の意味なのだろうが、それなら伊狩の視点で描かれている最初に壁に絵を描こうとした場面に何らかの描写がほしかった。
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なぜか良く判らないけど、人を引き付ける絵というものがある。
この田舎町の家々の壁に、上手いとはいえない絵を原色で描く男、伊刈。町の人もどうやらその絵を気に入っているようだ。その理由を探りにルポライターまで取材に来る。
しかし、伊刈は多くを語ろうとしない。
作中でその理由は徐々に明らかになるのであるが、最後の頁を読み終えたとき、ストンと自身の腑に落ちるのだ。
そして笑里ちゃんは、きっとその町を見ているのだろう、良かったね、と思うことができる。
正直、前半の病気の所は読みたくなくなりかけたし、澤谷との幸せな時も、暗転することは判っているので、その楽しい描写さえ恨めしく感じたが、これこそが著者の得意とするところだ。
おそらく、人を魅了する絵というものは、これほどの情念を持って描かれているのであれば、まったく納得できる。
なぜ絵を描くのかということだけで、一冊の本が出来るのか疑問で、読むのが遅くなってしまったが、もったいなかった。良い小説であった。
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【絵を描き続ける孤独な男の半生と隠された真実】小さな町の家々の壁に、ひたすら壁画を描き続ける男。笑われても笑われても理由を語らぬその沈黙の裏には、ある哀切に満ちた理由が。
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なんとも切ない物語。栃木県のある街は異様な光景が広がっていた。家々の壁に稚拙な絵が描かれている。その絵を描いた男、伊苅。伊苅はなぜこのような絵を描いたのか。ラストには全てが解き明かされる、というか、心に染み渡ってくるのだが、ラストに至るまでの経緯が本当に丁寧に描かれている。
この物語は、伊苅側からの視点と、この絵を描いた男に興味を持ったノンフィクションライターの鈴木の視点から成り立っている。読者もこの鈴木と同じく、なぜ伊苅はこのような絵を描くことになったのか。そして、伊苅の人となりが語られていく中で、伊苅自身に興味を持つことになる。
そして、読み終えると、静かな感動に浸ることになるだろう。
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伊刈はなぜ家々の壁に落書きのような稚拙な絵を描き続けていくのか。
前後する時系列が違和感なく、逆にスッと入っていく気がして、上手いなと。
笑里闘病時の梨絵子へのスッキリしない部分なども含め、最終章でまとめあげられ、まさかあんな展開が待っているとは思わなかった。
何をとは言えないのだが、ただあと少しだけ書き足して欲しかったような気もした。
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北関東の小さな集落で、家々の壁に子供の落書きのような奇妙な絵を描く伊刈。
伊刈の半生を描いた感動作です。
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孤独な男の半生を描いたストーリー。
読み進めるごとに伊苅の過去が明かされて行きます。
帯には「ラストには言いようのない衝撃と感動が待ち受けるー」とありますが、、最後まで読み終えて、薄いかなぁっと。。
初期の貫井作品は衝撃的な作品が多くて好きだったんだけど、最近のはあまり衝撃を受けない。。
貫井サン、もっと衝撃をくれぃ。
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貫井徳郎作品はすべて読んでいるし、重くしんどい作品も多かったけれど、ある意味、今回の新刊ほどしんどい作品は初めてだろう。
ある北関東の集落で、家々の壁を彩る奇妙な絵。決して上手くはないが、なぜか見る者を惹きつけてやまない。ちょっとした観光スポットになった町に、フリーライターの男が、絵を描いた人物を訪ねるが…。
当然ながら、容易に心を開かない、作者の伊苅。絵を描くようになった経緯に、フリーライターの男も何とか迫ろうとするが、物語の大部分は、伊苅の独白によって進む。各章が時系列順になっていないのは、理由がある。
伊苅の母は美術の教師であり、二科展に入選するほどの腕前。それなのに絵が下手なことに、彼は幼少時から劣等感を抱えていた。彼だけではない。父もまた、妻に劣等感を抱えていた。僕自身、劣等感を抱えて生きてきたので、2人の気持ちはわかる気がする。母の言葉は正論だが、正直割り切れなさも残る。
伊苅以上に、後に妻となる女性の生い立ちも、歪んでいる。伊苅だからこそ、理解してあげられたのか。幸せな結婚生活は、長続きしないとだけ書いておく。僕自身が家庭を持ち、子を授かった今、こういう話にはめっきり弱くなった。
帰郷する前、彼は会社員として真面目に勤めていた。子会社を見下ろす態度をとる本社の人間というはありがちだが、彼は常に対等に向き合う。だからこそ、家族ぐるみで付き合う関係になった。だからこそ、こんな悲劇に直面した。
その名前が出てきた時点で、え? と思ったが、これは酷い…。これはないよ貫井さん…。現実にこれに近いことが起きているだけに。しかも…。これほど運命に翻弄されれば、なるほど下手な絵にもパワーが宿るだろう。
今なら、『慟哭』も読めないかもしれない。本作を読み終え、そう思った。貫井節の筆致が円熟味を増しているだけに、しんどい1冊だった。でも、読んでよかった。
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なるほどそういうことかというのはあった。それにしても利絵子が結局どうして伊苅と結婚したのか?利絵子は笑里をどう思っていたのか?堀越はあれだけのことだったのか?もっとストーリーの中で複雑に絡んでいたら面白かったのではないかと思った。
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伊苅さんっていう一人の人間を形成する過去を
少しずつ剥がしてくお話。
大切なものを少しずつ失くしていく男の
悲しいけど、悲しいだけじゃないお話。
でもやっぱ悲しかった 私は。
小さくって愛おしい存在を失うお話は
母親となって以来ほんとうにしんどい。
凡庸な言い回しだけど
絵とか音楽とか
生きてくのに決して「必要」でないものが
ひとを生かしてくことって確かにあると思うんだ。
創るほうだけじゃなく
それがそこにあることが「必要」なひともいるし ね。
■ ■ ■ ■ ■
闇をまとうほうの「貫井作品」を期待して読んだひとは
ちょっとがっかりかも。
帯の惹句にあるような『感動』はともかく
『衝撃』はぶっちゃけあんま無い。
っちゅうことで、フラットな気持ちで読むことをお勧め。
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素晴らしい出来栄え。
描くべきところをきちんと描き、いらないところは完全に削ぎ落とされた、完璧とも思える作品だった。
物語への引き込み方、それぞれの登場人物の思いの描き方はとても丁寧で、言葉も美しく柔らかだ。
1人の人生を矛盾なく、しかも効果的な順で描く手法には脱帽です。
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北関東のさびれた町。その町全体を覆いつくす芸術とは程遠い、思わず苦笑してしまうような絵。しかし、その絵には見る者に訴えてくる力があった。ネットで話題となり、今や観光地となったその町の、その絵に興味を持ったルポライターが取材を試みる・・・
その絵を描いた男の孤独な半生が、淡々と描かれる。
たった一人の娘を病で失い、妻も職も失い故郷に帰ってきた男は、昔の同級生からもよそ者扱いされる。
心の空白を埋めるように男が自宅の壁に描いた絵が、いつしか町全体を覆いつくすに至った経緯。絵の持つ力。
時系列が頻繁に前後して、ちょっとわかりづらい。
男の哀しい半生も、絵を描く動機もわかるのだけど、終わり方も唐突な感じがして、帯にあるような「ラストには言いようのない衝撃と感動が待ち受ける・・・」とはならなかったのは私の読み込み不足?
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最初はどういう話かよく分からなかったけど、読み進めるとどんどんのめりこんでいく。驚きは少ないけど、面白かったと思う。
それにしても本当に梨絵子が嫌い。
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地方都市で自宅の塀に絵を書き話題となる
男の母が美術の教師、入賞ありだが、自分に絵の才能なし
ガンで死んだ娘の思い出で書き始めた
娘は会社同僚の遺児。
結婚した妻は学生時代の浮気女。浮気再発して離婚
東京の大学に行き町を出た。娘が死に町に戻って塾をはじめた。母が死んだのでアトリエで塾
塾の壁に絵を書いてみたのがきっかけ
隣人から絵を依頼された
死んだ孫の思い出
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面白くて一気に読み終えたのだけど、やりきれないストーリーに、ちょっと食傷気味。もう少し明るさが欲しい。