紙の本
建築家を取り上げた歴史小説
2021/05/08 18:11
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投稿者:想井兼人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書の主人公、ウィリアム・メリル・ヴォーリズは、歴史上、決して有名な人物ではないが、現代日本のある制度に大きな役割を果たしていたという。
メリルは専門家ではないものの、多くの建造物を日本で建てていた。
しかし、多くはすでに失われている。
メリルの作品に限らず、多くの歴史的建造物が、災害や戦災、人の手など、さまざまな理由で取り壊されてきた。
東京オリンピック開催で、都心を一新するためにも多くが壊されたらしく、残念だ。
温故知新という言葉がありながら、新しいものを追い求める風潮は、近代建築が建てられていくときにも当てはまることだろう。
それでも、いくらかの古い建物は今も利用され続けている。
本書はメリルを負いつつ、建物の深い見方を教えてもくれる実用書ともいえよう。
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激動の時代の日本にあって、今もなおあちこしにその足跡を残す一人のアメリカ人。
伝道師として、建築家として、商人として、そして現代日本の一つの基礎を作った人として、その偉業の大きさに比してあまりにも知られなさすぎるような。
大同生命や、びっくらぽんやら、メンソレータムやら、マッカーサーやら、とにかくあちこちに彼の人生のかけらが残っている。
アメリカ人として戦中の日本で生きることの困難さは想像に難くない。信仰を捨て、国を捨て、名前を捨て、それでも受け入れられない理不尽ささえも飲み込んで生き抜いた彼がかけた屋根は今も日本とアメリカの両国をつなぐ。橋ではなく屋根。屋根は冷たい雨も、刺すような日差しも、さえぎってくれるのだ。
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明治から昭和というめまぐるしく時代が動いた日本で、帰化し生涯を終えたメレル。アメリカ人でも日本人でもなく、両者をつなぐ橋でもなく、両方に大きな屋根をかけた人物の波瀾万丈だが前向きに生きた一生が描かれていた。広岡浅子や近衛文麿、そして昭和天皇など馴染み深い人物も多数登場し興味深かった。
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単身来日した建築家ヴォーリズの物語。
何事にも情熱を傾け無駄のない合理的な洋風建築を次々に建てる。
日本人以上に日本人の彼は、戦後の天皇制維持に訴え、やがてさる御方との対面を果たす。
日本とアメリカを結び、双方に大きな屋根をかける!
戦後の天皇制にこんなにも大きく関わっておられたなんて‼
あの朝ドラで有名になった広岡浅子氏との出逢い。
その繋がりで結婚した満喜子夫人も素敵!
満喜子夫人の物語も読んでみたい!
勿論ヴォーリズの現存する建築物も見てみたい!
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伝道師であり建築家であり近江商人となった実在のアメリカ人メレル 氏の日本での半生。
日本の国籍を取るも、アメリカ人か日本かと思い悩む。
才能があり、建築家としても商人としても成功するが、思いは複雑だったのかもしれない。
戦争に纏わる話も興味深い。
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W.M.ヴォーリズの一生を描いているのだが、そこに散りばめられた物語に強く心を揺すぶられた。ここまで想像力豊かに描ける門井さんは、本当に素晴らしい。
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ヴォーリズといえば、残念なことに取り壊されてしまったけど大丸の心斎橋店や明治学院のチャペルを設計した人、近江兄弟社の創始者というくらいは知っていたけど、まさか建築学については素人同然だったなんて知らなかった。キリスト教の伝道者として来日し、神に仕え、日本とアメリカの架け橋ならぬ建築家らしく屋根をかけるという、理想家な面だけではなく、『何とかなります』が口癖で商売上手な合理的な人としてチャーミングな面が描かれていて面白かった。戦時中の話は胸が痛くなりました。ただ、来日から天に召されるまでを365頁で描いているので、駆け足になっている感は否めませんでした。
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アメリカ人 伝道師
ウィリアム・メレル・ヴォーリズの話
彼の事は全く知らなかった。
どこまでが事実でどこからがフィクションなのか。
この手の作品はその辺りのファジー感がたまならい。
そして気になる。
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1905年、アメリカYMCAよりキリスト教伝道者として派遣された24歳のメレルは、近江八幡の商業学校の英語教師となった。同じ学校の日本人英語教師でクリスチャンである文次郎とともに、彼の下宿でバイブルクラスを設け盛況となるが、2年後耶蘇嫌いの校長に突然解職されてしまう。仕事も住まいもなくし貯金もない彼は、留学を取りやめ彼について行くという悦蔵とともに、宗教家として寄付を募る他に、建築家として収入を得る道を模索し始める。
伝道者でありながら建築家・実業家でもあり、戦後は「天皇を守ったアメリカ人」とも称されたウィリアム・メレル・ヴォーリズの半生を扱ったフィクション。
関心を持ったことに積極的で「何とかなります」が口癖のメレルと、彼を支える真面目な悦蔵とのコンビが快い。
「フィクション」としてはあるが、彼の生涯をかなり綿密に「紹介」してあり、そのためか特に中盤以降物語としての面白みには欠ける。
しかしながら、私自身建築の勉強をしたにも関わらず、彼のことを知らなかった(覚えていなかった?)ので、好奇心は満たされた。
文体は簡潔だが、句読点が多い傾向にあり、読書のリズムを取りにくく感じる。
内容は平易だが、宗教とそうでないものとの境界線やビジネスの現場を扱っているので、中学生以下にはわかりにくいでしょう。
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ヴォーリズは建築家として知っていたが、アメリカから日本の近江八幡にやってきて、WWIIのときも日本にとどまって生き抜いたことは知らなかった。元華族の妻とともに気高く生き抜いた姿に、自分の信念を持ちつつ懸命に生きる素晴らしさを感じた。冒頭はヴォーリズが日本に来て、近江八幡の学校で英語教師をし、そこから建築家になる流れが丁寧に描かれているが、後半になるとスピードアップしてあまり丁寧に描かれていない。あまり記録がないためもあるのだろうか。戦争中に軽井沢に住んだ時の話は特にさらっとしている。妻が疎開してきた子供たちのための学校を立ち上げていたようだが、妻の話ももう少し盛り込まれると物語にもっと膨らみがでるように思った。
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私にとっては、全く知識のなかったヴォーリズ。その波乱万丈の思わず先を読みたくなる生涯。よくぞ書いてくれました。楽しく読めて、有意義なひと時をくれた作者に感謝。
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2020.9 銀河鉄道の父はよかったんだけどなぁ。
文章も紋切り型が多いし、淡々と進んで感情移入もなく今ひとつ。
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#読了 主人公はまったく存じあげない方だったんだけど、「天皇を守ったアメリカ人」なんて呼ばれる方がいらっしゃったんですね。まさしくアメリカと日本に屋根をかける人だったんだろうな。
建築家として著名な方らしいのだけれど、その他にも近江八幡が舞台ということで布団の西川はじめ今の企業につながる商人たちの名前や広岡浅子なんかも登場。
序盤は少し退屈に感じたけれど、後半になるにしたがってどんどん面白くなる。
伝道師なのか、商人なのか。アメリカ人なのか、日本人なのか。大胆なのかシャイなのか。それぞれ相反する属性だとは思うんだけど、共存させてしまうメレルさん、面白い人でした。
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明治末期にキリスト教布教のために来日したアメリカ人建築家、昭和天皇を守ったアメリカ人として有名になったウィリアム・メレル・ヴォーリズの一生を描いた小説。
日本名、一柳米来留。
有能かつ感性豊かな偉大な人物。
24才教師として近江に赴任。その後、類稀な才覚で日本の洋風建築の第一人者となり、メンソレータムを日本に広める商人としても大成し、戦後のアメリカ統治下日本で昭和天皇を救った男。
たまたま一本の瓶にさまざまなレッテルが貼られているが、中身は変わらない。これほど多面性を持った奇才の人間も少ないだろう。
彼は戦時中に日本人として、伴侶満喜子と一緒に生きることを選び、 終戦後は昭和天皇を守るために奔走した(満喜子が元皇族だった事も関係)。
有名なお菓子クラブハリエや、大同生命創始者の広岡浅子氏、メンソレータムの近江兄弟社との関わりも面白い。
昭和天皇との掛け合いが最後に出て来るが、会話の中身はフィクションなのでしょうか?
フィクションであるとしたら作者の門井慶喜さんのセンスは素晴らしいと思います。橋ではなく屋根とは。実際のお話は侍従の話しとして残っているのでしょうか?とても気になります。
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建築家、ウィリアム・メレル・ヴォーリズの日本に来てからの人生をヴォーリズ氏の一人称で物語れている。一人称で書かれているところからして、かなり詳細な取材を行って書かれたんだろうなと思いました。
若い建築家として、満喜子夫人との馴れ初めや日本で精力的に活躍した話は半分くらい、実業家としての近江兄弟社の経営者が2割、残りが戦争から戦後の日本人としての生き方、考え方、昭和天皇への思いなど。どこまでも深く深く、日本、近江八幡を愛し、日本とアメリカに大きな屋根をかけた人の話。
その愛情と日本に愛された姿には感動しました。