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広瀬隆ふたたび! 彼を振り返ることは、とりもなおさず今いちど、真の私たちのこの国を考えることになる気がします。
たとえば、今こうして任意に頁を開いてみると・・・・・、
「竹下登が一族に入り込んだ竹中工務店は、戦前・戦中に、満洲・中国・インドネシア半島に続々と海外侵略の拠点を築きあげ、大日本帝国の軍隊を内部から動かした軍閥産業のひとつであった。そのため、満洲竹中工務店の社長だった竹中錬一は、戦時中の総理大臣・米内光正の三女・和子と結婚した。」(単行本215頁)
ともかく、どの頁どの頁を開いても金太郎飴のように、誰かが誰かを利用して、富と権力の勢力増長を目論んで、娘はそのための生贄同然、政界・財界はまるで近親相姦のごとく戦国時代を思わせる政略結婚、これが今も続いているのだといいます。
そして彼らは国家を私物化する。
事実は小説より奇なりといいますが、広瀬隆の書くものは原発ものにしろ権力論にしろ、一見絵空事のような、もしかしたらフィクションではないかと目を疑うようなアプローチや展開で、それこそ奇をてらった妄想ではないかとさえ思えるほどの奇想天外さで、いつも驚かされっぱなしなのですが、それはまったく逆で、推理とか予測とか想像などいっさい入り込む余地のないほど、徹底した資料に基づくデータ主義を貫き通して、禁欲的なまでにまともに書かれています。
ですから、いわゆる物語としての面白身に欠けるといえばいえなくもありませんが、フィクションのようなちょっと揺さぶれば消えてしまいそうな、砂の城を描くより数百倍もリアルな事実そのものが、とてつもなく豊かな重くてダイナミックな太筆で迫って来るのです。
まだこの本のすごさの1/10も書けていません。