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紙の本
吉野源三郎と遥かなるバーミアン
2001/09/19 19:20
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:クォーク - この投稿者のレビュー一覧を見る
まず、一読して思ったことは、この本はタイトルで多少のそんをしているのではないかということだ。
内容は、岩波文庫のカバーの説明にもあるように、「著者がコペル君の精神的成長に託して語り伝えようとしたものは何か。それは人生いかに生くべきかと問うとき、常にその問いが社会科学的認識とは何かという問題と切り離すことなく問われねばならぬ、というメッセージ」が内容の本なのだ。
それだけだったら小生は購入しなかっただろう。もしかしたら小生はカバーにある、丸山真男の「回想」が付載という謳い文句に誘われたのではと、ふと思ったりした。
ところが、実際に読んでみると、そんな杓子定規な説明など吹き飛んでしまったのである。第一章の「へんな経験」と題された一文からして、とても美しい叙述が続く。主人公であるコペル君が叔父さんに連れられて銀座のデパートの屋上に立っているシーンが印象的なのだ。
霧雨の降る昼間、デパートの屋上から雨に濡れる街の情景がキラキラするように描かれると同時に、著者の多角的に情景を眺める視線が効いていて、ちょっと見過ごすことの出来ない著作だと思わざるを得なかった。吉野源三郎氏の文章は柔らかく温かで、タイトルの杓子定規ぶりとは大違いなのである。
最後の第九章がまた小生には印象的に銘記される文章になってしまった。その章は「水仙の芽とガンダーラの仏像」と題されている。お彼岸の頃ということで話題がお彼岸から自然に仏像がいつ、誰が作ったのかという話になる。叔父さんの答えはギリシャ人が作り出したのだ、というものである。
「仏像がはじめて出来たのも、国からいえばインドさ。だが、インドで作られても、作ったのはインド人じゃなくて、ギリシャ人なんだよ」と叔父さんは続ける。
つまり、仏教は言うまでもなく仏陀が始められ、アショカ王が広めた教えである。それがやがてヒンズー教に圧倒されていく。が、後年イギリス人の進出で仏教が隆盛していた形跡がガンダーラの地で発見されるのである。仏教彫刻として一番古いものが発見されたのだった。ところが、彫刻の技術としてはギリシャ人なのだが、表情などはインド人のものなのだ。
叔父さんの結論として、二千年くらいの昔、ギリシャ人たちがやってきた。ギリシャの文化を伝えると同時にインドの文明にも浸っていった。こうした人々によってはじめて仏像というものが世に生まれたというのである。
つまり元々インド人には仏陀の姿を像に刻む習慣はなかったのである。
ところでバーミアンというのは今、話題のアフガニスタンにあって、ガンダーラの直近の町といっていいだろう(昨年だったかタリバンによる偶像破壊という大義のもとに、石仏破壊されたことでもバーミアンは有名になった)。
また、少なくともギリシャ人勢力がかの地に根付くまでは仏陀の姿を示す像は刻まれなかった。しかし、中国や遠く日本に仏教が新しい教えとして伝わる時には、様々な仏教文化と共に、仏様のキラキラしい像が当初は国家鎮護の宗教ではあったが大きな役割を果たしたのに違いない。
そうした遠い島国へ仏教が伝わる際に、ギリシャ人の影響(アレクサンダー大王の遠征などの影響)が果たした役割が大きいことに、何か遥かな思いが過ぎる。
日本に伝わる仏教に偶像崇拝的要素がなければ、つまり仏陀など仏様の姿を像に刻むという要素がなければ、今日の隆盛に繋がったかどうか。その前に日本に伝わることさえなかったのかもしれない。
紙の本
君たちはどう生きるか
2017/12/29 17:31
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:なま - この投稿者のレビュー一覧を見る
コペル君に、真の意味で立派な人に育ってほしいと願う叔父さんの思いがよく伝わる本であり、その思いを通して人はどう生きるべきかを考えさせられる本である。この本が書かれた時代はずいぶんと前のことである。しかし、その時代に問題となっていたことが回り回って2017年の今、現実味を帯びた問題になっている気がする。
紙の本
悩める思春期の人生の参考書
2013/01/13 18:38
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:結子*uco* - この投稿者のレビュー一覧を見る
とても良い本。
中学2年生くらいから読めば人生でつまずいて、誰にも言えないような、誰でも経験するような出来事の意味…みたいな
人生の参考書になると思います。
紙の本
話題となった道徳書
2021/12/12 07:49
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぽんぽん - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦前に少年向け道徳書として刊行。盧溝橋事件が勃発し、軍国主義へと向かっていった時代。著者のアバターであろう叔父が旧制中学1年(12歳)のコペル君に生き方を説く体裁。自己の良心に従うことを説き、経済状況等による貴賤なしとする内容は現代でも変わらぬ価値観だし、特に上級生の横暴を傍観し悔やむコペル君に、母親が自身の経験を踏まえて語るくだりは圧巻。だが時流に流されず自己を貫き通すは言うが易きでもある。そんな著者が、戦後は所謂・進歩的文化人として現実を見失うのは皮肉。だが、それとても著作の価値を損ねるものでは無い。