紙の本
これって、もしかして小野不由美『十二国記』に匹敵する?思わずうなってしまう人間、いや暴力を日ジョウトする武士に対する視線のストレートなこと・・・
2007/04/07 20:54
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
『源平の風』に続く第二弾で、前巻があまりに面白かったので続きを読むことにしました。この本は最初に出たのが1998年で、手元にあるのは2006年に7刷とあります。各巻年1刷のペースで増刷しているので、成功したシリーズといえるでしょう。高畠純の手になる挿絵、装釘は共通しているので、これ、といって目を惹くものではありませんが、ご老人の懐旧の念を掻き立てるには十分なもの。
ただしこのお話、外見は古臭くても、内容は恐ろしいほどに進歩的です。その核にあるのが主人公である狐・白狐魔丸の武士に対する見方で、これは未だに日本文化が拠って立つものは武士道であると勘違いしたまま、それを子々孫々に刷り込もうと躍起なご老人、自民党、官僚、或は文化人と称するスノッブには、到底受け入れられないもの、といっていいでしょう。
巻末に年表が載っているので、そこから書けば、前巻が1184年、ひよどり越えをする直前の義経に出会い、1185年、義経の逃亡を助けて、白駒山に眠る2年間を扱ったのに対し、この巻はそれから85年後、1271年、蒙古が「元」と改めた年から1281年の弘安の役を終えて再び白駒山に戻って眠るまで10年を扱います。構成も、前巻が2年・12章に対し、この巻では10年を20章で描いています。
カバーの紹介を補っておけば、白狐魔丸は仙人の勧めで京の都の出ます。そこで六波羅探題南方の北条時輔の郎党・市谷小平太を助けたことから、時輔の食客となり、時輔・時宗の骨肉相食む争いに巻き込まれることになります。そこで出会ったのが吉野の狐・雅姫でした。
ここでも白狐魔丸は愛すべき友人を失います。その小平太から頼まれたのが、友人である竹崎季長に、自身が描いた絵を届けることでした。二年以上の歳月をかけ、季長を探して日本中を旅した白狐が最後に辿り着いたのが九州です。その地にひたひたと迫るのは元の船団。
人が殺しあうのを見たくない、人間の、特に武士の身勝手な価値観に人々の平穏な生活を壊させたくない、と思う白狐魔丸、仙人、或は日蓮は・・・
個人的には、日蓮を起こした奇跡を描いた部分に引っ掛かりを覚えはしました。武士もですが僧侶の独善的な行動も民を結果的には苦しめる、私はそう思っているので、このまま日蓮礼賛になったら、読むのやめようかと思ったのです。それは杞憂でした。狐の視線は、そして斉藤の筆はそれ以上日蓮に向かうことはありません。
それはいいのですが、もっと描かれるべき北條時輔、雅姫の物語も途中で消えてしまいます。そのかわり、重みを増すのが京都で出会い白駒山にも現れた妖狼ブルテ・チョノです。彼が見せようとするもの、それが後半を盛り上げていきます。私などには噴飯物の説ですが、この手の話は子どもには受けるのでしょう、高一の次女などはそれを聞いただけで、この本を読みたい、と騒ぐ始末です。
怒りのままに思わぬ殺生をしてしまった仙人と白狐魔丸の心の動きは、まさに師弟そのものです。累々たる死人の山、荒廃した都を前に己の力の至らなさを知りうなだれる二人。敗戦後の焦土となった日本を見て、心から悲しみを覚えた帝国軍人が何人いたか、彼らが沖縄の人々に、朝鮮から強制連行した人々に何をしたか。結局、彼らは武士と同じ、殺人者の集団でしかなかった。
もっと書いて欲しい、もっと読みたい、そう思わせる物語です。古代テーマの日本製ファンタジーの多くが結局は根拠のない皇室礼賛の罠に陥り、無批判に武士を偉いとするのに対し、なんと斉藤の筆は自由なのでしょう。それだけでも立派です。小野不由美『十二国記』と並んで、今後とも書き継がれ、読み継がれていくべき児童文学の枠を越えた作品と言っていいでしょう。
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『蒙古の波 白狐魔記2』
2017/04/10 21:59
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投稿者:百書繚乱 - この投稿者のレビュー一覧を見る
白駒山の仙人に出会い化身の術をさずかったきつねの白狐魔丸
源義経とその家来たちと別れてから眠りつづけて八十五年
目ざめたのは北条時宗が執権となっていた時代だった
京の五条大橋で助けた武士にかかわったことから
元の大軍と対峙する武士団にいた竹崎季長と出会い...
人間に興味をもったきつねの目を通して描く斉藤洋の歴史奇譚
1996年からの人気長寿シリーズ、既刊6冊の第2作は1998年初版
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より強くなった
2005/02/16 17:18
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投稿者:江川あおい - この投稿者のレビュー一覧を見る
白孤魔丸という、人間に変化できる狐の話、第2弾。目覚めたら元寇の時代。前回より術が強くなったのは、やはり白ちゃんが大好きな「修行」のおかげでしょうか?(笑) 何度もしつこいようですが、歴史小説苦手の人もスムーズに読み進むことができる作品だと思います。
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白駒山の仙人の弟子となり、修行ののち、人間に化けることができるようになった狐白狐魔丸の人間探求の物語。「源平の戦い」のあとの長い眼りから、狐がめざめたところから、本書ははじまる。時は鎌倉時代。北条時宗が執権となり、日蓮は国を憂い、いまや、元の大軍がおしよせようとしていた。
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斉藤さんの本は、読みやすい。メッセージが理解しやすいですね。
私も全巻読みました。
主人公は、狐。
白駒山の仙人の弟子となり、修行ののち、人間に化けることができるようになります。
仙人から白狐魔丸という名前をもらいます。
そして、戦国の世のなかで、戦い続ける人々と知り合い、人間とは・・ということを知ろうとしていきます。
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人間に化身する狐・白孤魔丸の第2弾。源平より85年後、白駒山の洞窟で長い眠りから覚めた白孤魔丸が、頼朝の開いた鎌倉幕府を見に行く。執権北条時宗の治める鎌倉、佐渡に流罪となる日蓮と出会った後、京へと旅を続ける。腹違いのため弟・時宗から陥れられる北条時輔と、その家来市谷小平太に出会い人間を好きになる。戦いの末、命をおとした小平太に絵を託され、西国への旅にでるが、訪ねた九州で蒙古の襲来にあう。
うん、面白い!!
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白孤魔丸シリーズの二作目です。
子供のためにと思って買ったのに、子供より先に読んでしまった(汗)
歴史の断片とそこに身をおく感覚が持てて、子供も大人も十分楽しめると思います。
ただ子供には、史実に基づく物語であることは理解してもらわないとね。
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これは・・・どんどんおもしろくなるタイプのシリーズだな。
白狐魔丸に感情移入していくからなのか・・・。
小学生の男の子も女の子も楽しめそう。
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うんうん、やっぱり面白い!! このシリーズはホント楽しめますねぇ。 前巻で都落ちする義経主従が無事落ち延びることができるように、攪乱作戦で大活躍した主人公の白狐魔丸。 まるでその疲れを癒すためかのように85年という長~い眠りにつき、ようやく目覚めたところから物語は始まります。 普通の人たちならそんなに長生きできなかった時代だったろうけれど、白狐魔丸とお師匠さんの2人だけ(1人と1匹だけ と言うべきか?)は、まるでその年月をひょいっと飛び越えてしまったかのように、ほとんど変わりない姿で登場します。
で、変わっていないのは2人だけで、世の中の方はめまぐるしく変化していて、義経は平泉で討たれちゃっているし、その命を出した兄頼朝もとっくにあの世へ行っちゃって、北条得宗家が栄華を極めている(?)鎌倉時代です。 前編では京都周辺をウロウロしていた白狐魔丸だけどこの物語では日本各地(除く東北 & 北海道)をあちこち歩き回ります。
情景描写やら風俗描写なんかは結構史実に基づいているんじゃないかと思うんだけど、最後の方でいわゆる「義経不死伝説」の極め付け、「義経≒チンギス・ハーン説」まで取り入れちゃっているので、大人が読む分にはかなり楽しめちゃうけれど、子供が読んだらどこまでが史実に近い話でどこからがいわゆる「ファンタジー」なのか、混乱しちゃうきらいはあるんじゃないかと思わないでもありません。 それでもこんなに楽しめる物語だったら KiKi は身近な子供に薦めちゃうだろうなぁ・・・・・(笑)
人間に興味はあるものの、「武士」という特殊な種族(?生き物?)はどうも苦手な白狐魔丸。 でも扱っている時代が時代なだけに武士と関わらずに人間探究な~んていうのはできるはずもないわけで・・・・。 そして、そんな苦手な武士の中にも白狐魔丸と親しくなる「ちょっと変わった武士」がいたりもして、そんな武士達と白狐魔丸の関係が物語を進めていきます。 前編ではそれが「佐藤忠信」だったわけだけど、今回は六波羅探題南方の北条時輔の家臣、「市谷小平太」とひょんなことから親交を結ぶことになる白狐魔丸です。
そして所謂「二月騒動」で市谷小平太が亡くなる直前に、彼が描いた最後の絵を「・・・後の国にいる『竹崎季長』という武士に届けてほしい」と頼まれます。 ここから白狐魔丸の全国人探しの旅が始まるわけですが(何せ「・・・後の国」と言えば丹後、越後、備後、豊後、筑後、肥後とある)、その道中で彼は生まれ持っていながらも本人(本狐)にはその自覚があまりなかった「気の力」をみるみるアップさせていきます。
そして最後の最後には、第2回の元寇の際に「神風」を知らず知らずのうちに巻き起こすまでに至るのですが、そうなるまでには白狐魔丸と同じ「人に化けることができる狐」である雅姫と出会ったり、元からはるばるやってきた「人に化けることができる狼」であるブルテ・チョノと出会ったりと、不思議な存在もどんどん増えてきて、「不思議な存在」のオン・パレード状態になります。
反面、第1回の元寇で「神風」を起したことにより反省モードに入ってしまった白狐��丸の師匠、白駒山の仙人は「穢れを清めるため?」か天竺への旅に出てしまい、仙人びいきだった KiKi にはちょっぴり残念な顛末もあったりしました。
いずれにしろこの物語、歴史の節目節目で目覚める白狐魔丸が歴史上の偉人と邂逅しては「人間の歴史とは何ぞや??」ということを狐目線で考察する(← 実はこの目線が狐目線であるようでいて、いわゆる一般大衆目線に近いものと推察できる)という体裁で貫かれていく物語になっているようです。 そして「元寇」の次はどうやら「鎌倉幕府の滅亡」へ進むらしい・・・・・。 早速次の物語に進んでみたいと思います。
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このシリーズは白狐魔丸が人間とは何ぞや、武士とはどういう生き物なのか、ということをその人物に関わりながら考えていくところが良いのです。主人の為に命を投げ出すということに何故なのだろう、とか兄弟で争うのは何故なのか、地位や権力争い、主君の絆など動物にはない人間の生き方について白狐魔丸は自分なりの答を見出そうとします。争いを好まない白狐魔丸が、戦に巻き込まれていき、歴史上のさまざまな人物と関わっていく…。今回は元寇のことが書かれて、興味深く読みました^^
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白狐魔丸はこんどは元寇に。
戦うことはやっぱりむなしい。狐は正論で攻めてくれるのでとてもスッキリする。
季長は絵で大成できたのかしら。
☆調べたら実在してた!元寇の自分の手柄の絵を描いてた、、、
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面白いシリーズ。このあたりから段々大人向き臭がただよいはじめるが、私としては良。小学四年〜向けかな?でも充分大人も楽しめる。主人公の立ち位置と対象との距離感、世情の書き方が絶妙なのだろう。
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NHK FM 青春アドベンチャー「白狐魔記 蒙古の波(全10回))」の原作
http://www.nhk.or.jp/audio/html_se/se2014018.html
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今回の真の主人公はお師匠様だった気がする。。。
吉野の女狐も登場したりと今後の展開がきになる。
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白駒山の仙人の弟子となり、修行ののち、人間に化けることができるようになった狐白狐魔丸の人間探求の物語。「源平の戦い」のあとの長い眼りから、狐がめざめたところから、本書ははじまる。時は鎌倉時代。北条時宗が執権となり、日蓮は国を憂い、いまや、元の大軍がおしよせようとしていた。