紙の本
読者へと向かって開かれた扉
2001/08/09 10:13
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:花村翠 - この投稿者のレビュー一覧を見る
初めて彼女の小説を読んで「痛み」を覚えました。それは一部には自分自身の経験と重なって…というのが大きかったのですが、語り手である「クーチ」に自分を投影するのと同時に、主人公「塁」に自分が関わってきた様々な人たちを重ねたせいです。人によっては「クーチ」がまったく描かれていない、作家は主人公以外に興味がない、と言い切ります。なるほど「塁」はこれまでの中山作品に共通の自堕落な王子様タイプに他ならず、その点はまったく変わりません。けれども、私の感覚のアンテナは初めてナルシストの主人公に共鳴しました。
周囲に迎合することを自己主張としている女と、ただ一人でいることが生きていることだと逃げている女。魅力よりも共感。私自身はおそらく実際こんな人が目の前にきたらぴしゃりと心を閉じてしまうであろうと思われる、そういう人々に、実は一番近いかもしれないと感じました。彼女の作品をこれまで読む度に、ただ「そうか。中山可穂とはこういう人なのか」としか感じられなかった一人よがりな感覚が、確実に読者側へ扉をひらきつつある、そんな予感に変わりつつあります。
この変化は、彼女の作風がエンタテインメントよりになってきたせいなのか、それとも彼女の持つ純文学への拘りが大衆文学へとスライドしてきたのか、現時点ではまったく見えません。ただ、その変化の大きさは、この作品が大衆文学の登竜門とも言える「山本周五郎賞」を受賞したことからもうかがえます。
とある人がこの本の書評で、「三島由紀夫賞受賞」と間違えていてぎょっとしたけれど、ふと気づけば中山可穂もまた、寺山修司や天井桟敷と交流のあった三島と同じく演劇には造詣深いはず。比較してみると面白いかもしれません。同じ情念と性の世界を描きつつ、三島のような暗喩は中山可穂にはみられず、あくまで直接的描写によってのみ、表現が達せられています。
三島由紀夫にとっての「海」や「火」のようなテーマに深く根差すような背景は、中山可穂にとっては何になるのでしょうか。彼女が「演劇」や「小説」といった彼女にとっての直喩的背景から離れたらどんなものが出てくるのか。それを見てみたいと思う私です。
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同性(女性)同士の恋。同性だから、周囲には秘めなければならない、欺かなければならない関係と辛い選択。意外とさらりと読了。
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久々再読。独特の濃さにくらくらします。この濃密さが良い。恋愛小説はあまり読まないのですが、中山可穂は好き。
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塁とクーチと、そして猫。
古巻さんと・・・そうだったんだ。
最後まで一気によんだ。
最近、中山さんにはまってる。
うーーん、今回も切ないというか、苦しいというか。でもやっぱり、こんな重苦しいような感じが好き。
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-私は脳髄の裏側に、白い薔薇を咲かせたことがある-
女性同士の恋愛小説です。
何故か好きで、何度も読んだ作品。
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女同士の恋愛小説。Lの世界。描写は嵌る感じだったけど、感動はい今一。
後半の終わり方は非現実的すぎてピンとこなかった・・・
モヤモヤが残る作品。
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えー…、まあ、女性同士のお話でよかったです。というのはまあ上澄みの部分ですが、このことを前面に出すことによって大切なことを浮き彫りに出来たのでしょうか。
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テーマが特別な世界なので、読者層は狭いのでしょうが、完成度の高い小説であると思います。素直に引き込まれました。
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暗い。なんでこんなにも暗いの!ていうぐらい暗い。けどこの空気、厭世観ただよってる感じ、嫌いじゃない。
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この作者さんのエッセイを読んで、強烈に小説が気になり読んだ本。
終始濃厚なレズが描かれると言うか、二人ともが本当の性愛っていう物を知ってしまった瞬間の離れ難さみたいなものが生々しく描かれていて、これは本当に知ってる人じゃないと書けないよなぁ…と思う。ある意味、本物の愛を知った主人公クーチがうらやましいとさえ思った。
なんだろう、この嫉妬する感じは(笑)
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山本周五郎賞受賞作。
小説家とOL。
女性同士でありながら魅かれあう二人。
苦しく、重い、愛の物語。
何もかも捨てて人を想える、
そんな気持ちを、どこかで味わったような
経験してみたいような。
ラストは無理やりクライマックスを設けた感あり。
もっと並行に終わってほしかった。
カラダの相性、セックスの相性は
何よりも大事である。
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ただひたすら一気に読んでしまった。設定とか伏線とか、何も考えずにただただ読ませる力が凄まじい。結末が分かっているだけに途中から読んでいて苦しかったが、これこそが恋愛なのかも知れないと思った。
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だんだん話がよくわからなくなった。
終始暗いけど、読みやすかった。
世界観に引き込まれるというより、こんな愛の形もあるんだと客観的に、冷静に読み進んだという感じ
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文章すべてが過激で刺激が強すぎる。
この一言に過ぎる。
同性愛、不倫、殺し合い、近親相姦、性犯罪などが次々と起こっており、息つく暇がないくらい、衝撃的だった。
主人公と塁が何日もかけて互いの全てを奪い合うような性行為をする描写、塁の劣悪な生育環境、離れようとしても離れようとしても離れられず何度も互いを傷つけ合うように行う性行為などが気持ち悪い。主人公にどうしても感情移入できなかった。
しかし、今までこのような小説は読んだことがなく、新鮮だった。
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ニューヨークの書店で、かつて特別だった名前と再開を果たしたとく子は、日本での会社員時代を思い出していた。
山野辺塁と過ごした、自分の人生を変える愛の日々を。
こんなに綺麗で純粋な性愛の物語は初めてだった。
実際にこんな出来事が人生に起こることはそうそうないだろうけど、これぞフィクションにしかできないことかもしれない。