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紙の本
ギリシア彫刻のように美しい男の身体。小林丸人の写真と、山田詠美の文体がエロティックな世界へ誘う。
2002/02/18 22:15
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投稿者:挾本佳代 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ちょっと普通の写真集ではないことに驚かされる。まず、被写体はフランス人の男性ばかり。そのフランス人一人一人の顔や名前や容姿からイメージされるオーラを山田詠美がくみ取って書いた、ちょっとした小説も載っている。そして、そのどれも美しいフランス人男性を撮った写真家もまた、男性である。
男性が男性の身体を「美しい」と思うその気持ちと、女性が男性のそれを「美しい」と思う気持ちは少なからず違うのだろう、とこれまで思ってきた。しかし、本書の写真家・小林丸人さんが巻末に寄せているように、ギリシア神話の神々の美しさをもった男たちは存在する。確かに。この写真集をながめていて、そう思った。それほどこの写真集に収録されている男性の視線は痛いほど厳しく、皮膚はなめらかで、姿全体からはエロティックな雰囲気さえ漂わせている。タイトルにあるように、彼らはみな、ちょっとはかない巴里製の皮膚から作られた菓子であるかのようだ。「ああ、美しいなあ」と思わず口からもれてしまうほどだった。だから、男性である小林丸人さんと私の「美しさ」の基準はそう変わらないのだろう。もしかしたら「美しい」という観念さえも。多分、女性である山田詠美さんも、だ。
本当に「美しいもの」は、それを見る人が男であろうが女であろうが一切関係なく、その目を惹きつける。対象から人間が本来的にもっている野性味すれすれの部分が匂ってくるや、見ている者と見られている者は感覚的に境がなくなるのではないだろうか。というのも、見ている者は、自分の中にも確かにある野性味のかけらに驚かされるからだ。これはもちろん、筋骨隆々の肉体だけがもつ荒々しい野性味のことをいっているのではない。それは、遺伝子で受け継がれてきた生命力の強さとでもいうべきものだ。巴里製皮膚菓子は、一見ほろほろと崩れてしまいそうな人工的なはかなさを漂わせながらも、本来的な強さを備えて、私たちに挑戦してくる。
本書に収録された、グザヴィエやアレッサンドロやセドリックを、そんな野性味から眺めながら、自分の野性味と比べてみるのはどうだろうか。 (bk1ブックナビゲーター:挾本佳代/法政大学兼任講師 2002.02.19)
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