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紙の本
十三妹
2023/04/09 18:15
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
時代も舞台も異なる三つの中国古典文学の登場人物を組み合わせ、続きを書いたもの。中国文学に精通した武田泰淳ならではだが、ここまで面白くできているとは思わなかった。
紙の本
武田泰淳氏の中国清末期のヒロイン十三妹が活躍する武侠小説です!
2020/08/23 12:55
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、大正から昭和にかけて、『司馬遷』、『蝮のすゑ』、『風媒花』、『ひかりごけ』、『富士』、『貴族の階段』、『快楽』など数々の名作を発表してこられた武田泰淳氏の作品です!同書は、もともとは『児女英雄伝』(じじょえいゆうでん)と呼ばれた中国・清末期の文康(ぶんこう)による武侠小説ですが、武田氏がそのヒロインである十三妹(シイサンメイ)を表題としました。清の康熙末から雍正のはじめごろの話とされており、北京西郊の双鳳村に住む安学海は漢軍八旗の正黄旗に属し、清廉の人であったのですが、老年にいたって思いがけず科挙に合格し、南方の地方官の職を得、一人息子を都に残して任地に向かいます。しかし汚職の横行する官界で清廉な安学海は総督に嫌われ、洪水の危険のある場所に任命されます。前任者の手抜き工事によって洪沢湖があふれたため、安学海は責任を問われて獄に繋がれることになります。安学海の子の安公子は賠償金を届けるため、自分の科挙を放り出して淮安まで慣れない旅に出るのですが、雇った荷運び人足が安公子をだまし討ちにして金を盗もうとたくらみます。世間知らずの安公子は彼らに騙されてついていくのですが、途中で逃げ出した騾馬を追いかけて古寺にたどりつき、そこで一泊することになります。しかし、寺の住職は実は赤面虎黒風大王という賊で、安公子を柱に縛り上げて殺そうとします。そこへ現れた十三妹が飛び道具や倭刀(日本刀)を武器にひとりで賊を全滅させます。十三妹は賊にとらえられていた張金鳳とその両親を助け出します。彼らは農民でしたが、道をまちがえてこの寺にたどりつきます。賊が張金鳳を我が物にしようとしたのですが、金鳳の操が固いために閉じ込められていたのでした。続きは、ぜひ、同書をお読みください。
紙の本
隆慶一郎、山田風太郎に先立つ1960年代半ばに、戦後文学の巨塁がこんな面白いエンタメを書いていたんですね。しかも、中国三大古典のパスティーシュで武侠ものの伝奇ロマンとは!
2003/11/01 01:20
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:中村びわ(JPIC読書アドバイザー) - この投稿者のレビュー一覧を見る
最初に「解せないなあ」と思ったのは、ライトノベルもどきの表紙である。戦後日本文学最高峰のひとつと評価される『富士』(いずれ読むつもりで積んでいます)と同じ中公文庫だというのに、どうしてこういう造りなのだろう。中央公論も新社になってから読売色が濃くなったのかな…などと嫌らしいことを考えていたのであるが、一読して「この表紙で正解だよ」と納得できた。
とびっきり上質で楽しめるエンタメ小説に仕上がっている。これを「文学」という囲いに入れて、それらしい重厚な表紙をつけていたのではもったいなさすぎる。新しい読者、若い読者にどんどん手に取ってもらえる造りにすべきだと思えた。
私は長ったらしいロシア小説の人物の名前より中国の漢字の名前が苦手ということもあり、『三国志』『金瓶梅』『水滸伝』『西遊記』など中国古典にはなかなか挑戦できずにいるが、この伝奇的なロマンは、そういった有名どころに比して読まれる機会の少ない三大古典が元になっているそうである。以下、田中芳樹氏の解説に沿ってパスティーシュの種明かしを書き出してみる。
『三侠五義』という宋代後期を舞台にした冒険小説から「白玉堂」という勇者の名を拝借し、ヒロインの周りにちらつかせている。仁宗の名臣だった包公を出して勢力図を作り、白玉堂のライバルに展昭を配している。
美貌と豪腕、内助の功を兼ね備えたヒロイン「十三妹」は『児女英雄伝』という清代後期を舞台とした仇討ち小説からのキャラクターである。安公子という彼女の夫君の名も、ここから来ている。
科挙という官吏登用試験の制度をめぐる知識人たちのあさましいエピソードの数々は、やはり清代後期を描いた『儒林外史』の批判精神に満ちた叙述からの発想だという。
物語は、安家の第二夫人におさまっている伝説の女侠・十三妹が、夫や義父の立身出世、つまり嫁ぎ先のお家のために、身についた忍術や武術を使って暗躍するというものだが、賊の首をかっ切るヒロインの丈夫ぶりが痛快である。これぐらいかっこいい女性というと、恋しい忠臣を自ら押し倒して思いを遂げる富士正晴の『豪姫』ぐらいか、対抗できるのは…と思いついたが、どうであろうか。
もっとも内助の功ゆえ手を汚して働くというだけでは面白くなくて、そこには新しい恋の萌芽が用意されている。自分でもまだ恋とは認められない曖昧な思いを抱え、相手と真っ向から戦う羽目になるのだが、そのやるせなさにずっと引きずられて読み進めていくことになる。
新聞の連載小説だったためなのか、知に走ることなくイキのいい描写で、ぐんぐん前に進んでいける文体が魅力である。そして泰淳という作家のふところの深さというのか、ユーモア精神からくるサービスも旺盛で、ときどき書き手が顔をのぞかせて説明を加えていく点が読み易さにつながっている。
清代の事情で分かりにくいと思われる箇所では、日本の事情に置き換えるとさしずめ何に当たるかというような語りが挿入されている。それが癖になっている場合はウザいということになろうが、さすがにこのクラスの作家ともなれば、引くべきところで引き、物語の運びを損なうような真似はしない。
続編の企画もあったようだが、時代はまだこの手のジャンルの小説を受け容れる準備ができていなかった由である。実にもったいない話ではないか。
紙の本
武闘派少女の活劇、と言うよりは……
2002/08/02 01:08
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:三鏡 智史 - この投稿者のレビュー一覧を見る
中国の「忍者」とも言える少女、十三妹を主人公とした小説。
さぞ痛快な活劇を繰り広げてくれる……と思いきや、
実はその旦那である書生青年の登場の方が遥かに長い。
この旦那は無罪の罪で苦しむ身内のために長旅に出かけるのだが、
慣れない旅をするばかりにあちこちで苦難に襲われる。
そして十三妹はそれを陰から手助けするというのが大まかな粗筋である。
「忍者」的な主人公だけに派手な活躍をしないのは理に適っているかもしれないが、
しかしあまりに彼女の印象は薄い。
彼女に密かに恋焦がれながらも敵対するライバルといった登場人物はいるが、
どうもその設定を生かしきれていない気がしてならない。
一読した限りでは青白い書生青年の成長物語といった感を受ける。
「切れる妻を持った情けない旦那の憂鬱」といったものが根底に流れる
テーマとしてあるようで、その辺りの描写は見事である。
受験勉強ばかりしてきた男が世間の荒波に揉まれつつ、
切れものの妻を持った事で思い悩む小説と言うべきか。
少なくとも扉絵の少女の物語と思って読むと肩透かしをくらうだろう。
この小説の主人公は彼女ではなく、その旦那の方である。