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紙の本
同世代の同性愛者が読んでみて…。
2003/03/04 22:16
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投稿者:くう - この投稿者のレビュー一覧を見る
恐らく、これまで上梓されている同性愛関係書の著者の中では最も『普通の』若者である。『セクシュアル・マイノリティー』の中の『マジョリティー』と云うべきか。
インターネットという新たなコミュニケーション・ツールは、同性愛者のような社会的マイノリティーが活用してこそその真価を発揮する。彼に限らず多くの同性愛者がネットを通じてどれだけ救われ、どれだけ多くの仲間と出会えたことか。
そういう意味で、インターネットとの出会いを機に、様々な仲間と巡り合い、同性愛者としての自我を確立していった著者は、まさに『同時代的な』青年なのである。
しかし、余りに『普通の』青年であるが故に、僕達同性愛者にとっては本書はやや物足りない。何せ、考え方や感じ方のほぼ全てが自分と同じなのだ。勿論、それこそが本書の狙いでもあるのだが。
個人的には、『働くゲイとレズビアンの会(アカー)』の若者達の青春を追った『もうひとつの青春(井田真木子著)』の方が、『物語』としては胸に迫るものがある。しかしながら、『もうひとつの〜』に登場する若者達は、インターネットという手段を持っていなかった点で明らかに『前時代的』だ。インターネットの普及によって、僕達同性愛者は高い壁をひとつ越えることができたと同時に、活字にして第三者の興味を惹きうるほどの特殊性や閉鎖性を失ったのかも知れない(それ自体は好ましいことである)。
その辺りに本書の難しさがあるように感じた。この若さで自身の半生を公表した著者の勇気と誠実さは尊敬に値するが、本書に綴られている著者の半生は、彼のウェブサイトで公表しても充分目的を果たせそうに思えた。辛うじて活字にする意味があるとすれば、『すこたん企画』のスタッフとして数々の講演や活動を行ってきた経験を彼が持っていることか。
それでもなお『活字媒体』にこだわるならば、彼のウェブサイトをおよそ訪れないであろう人達に読んで貰ってこそ意義がある。常にもどかしく思っているのだが、同性愛者(特に男性同性愛者)に理解を示してくれるのはほとんどが女性である(理解を示して貰えること自体は感謝すべきことだが)。
このような本は、著者と同世代の男性にこそ読んで欲しい。『毎日顔を合わせている自分の友人が実は同性愛者かも知れない(その可能性は少なく見積もっても3〜5%程度ある)』という点では、著者と同世代の男性異性愛者こそゲイの存在は見過ごすべきではないし、また、身近な問題なのである。
その点から見ると、苦心の跡が見えるタイトルも、淡いブルーを基調とした装丁も、やや気恥ずかしいほどに平明簡易な文体も、男性(異性愛者)には却って敬遠されそうな懸念を感じた。
『活字媒体』としての意義づけのためにも、男性読者に受け容れられやすくするためにも、『第三者(それも男性異性愛者)の視点』を採り入れた方がよいのではなかろうか。私見だが、藤井誠二さんあたりに、彼を含む『すこたん企画』のメンバーの日常をルポルタージュ形式で追って貰うってのはどうだろう? 誰か企画してくれませんかねぇ?
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