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紙の本
人類讃歌
2003/02/13 00:38
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投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
読後、なにか大きなものに包まれたように感じた。パングボーンの一昨年復刊された「オブザーバーの鏡」の時と同じ、あの感じだ。
核と生物兵器による世界戦争によって文明は崩壊し、わずかに生き残った人々が中世的な暮らしを営んでいる。今からすれば陳腐な設定かもしれない。本書は1964年に書かれたが、1961年には核戦争の恐怖を現実的なものにしたキューバ危機があったことを考えればそれほど目新しいアイデアというわけでもない。
描かれる世界は、これもお決まりのように、退廃と暴力、抑圧的な宗教などに彩られ、主人公の少年デイヴィ−がその中で成長していく物語だ。
現在の北米大陸北東部らしき舞台にはたくさんの共和国が存在しており、科学は失われ、旧時代の本を読むことは教会に禁じられている。デイヴィーはふと、太陽の昇ってくるところまで行ってみたいと思う。そして放浪の旅で多くの仲間や人生の師、愛する人と出会い、少しばかり機転のきいた少年はいくらかの権力を手にしさえする、その過程が28才のデイヴィーのペンによって振り返られる。
その内容はきまぐれで破天荒だが、自慢げな冒険談でもなければ、背徳的な表現で読者をそそったりもしない。負の遺産の残された世界の悲劇的なエピソードが冷静に描かれるほど、旧時代、つまり現代の我々に突き刺さってくるが、デイヴィーはこうも言う「往々にして悲嘆というものが、いつの間にか人を哲学者に変えてしまうのは、悲嘆が哲学でなくてはならないからだ」こんな陳腐なことを考えていたのだ、と。
読後に感じた自分を包むものが何か、人類愛なんて言うとデイヴィーに笑われそうだ。そんな言葉には散々裏切られている。
ただ悠久の大地と、広大な海があり、人間は生きている。言葉を失いただ包まれているだけでなく、僕達がこれから残せる地球のことを考えてもいいのかもしれないと思う。
紙の本
翻訳家
2002/08/23 15:50
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投稿者:遠藤宏昭 - この投稿者のレビュー一覧を見る
『デイヴィー 荒野の旅』は、ひと言で言って、不真面目な文体で語られた、真面目な小説だと言えます。主人公デイヴィーが、宗教、政治、哲学などという難しい話を、冗談やら際どい話やらに交えて、すごい勢いで喋りまくる、そういう作品なのです。訳者としては、原作の持つそういう深刻さと猥雑な生命力を、読んだ方が感じられるようにと腐心しました。楽しく、また難儀な仕事でありました。
ところで、この作品、二十年ほど以前にサンリオSF文庫からの出版が計画されていました。その計画が頓挫したあと、訳者の元に原稿が残り、それがひょんなことから、今回、扶桑社に発掘されて、ついに日の目を見ることになったものです。それだけに訳者としても思い入れの強い作品で、なるだけ多くの方にお読みいただければ幸いです。
紙の本
編集者コメント
2002/08/23 15:43
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投稿者:担当編集 - この投稿者のレビュー一覧を見る
昨年『オブザーバーの鏡』が復刊されたエドガー・パングボーンですが、なんと彼の幻の代表作が突然扶桑社から出版!
ということで、驚かれたかたも多いかと思いますが、じつは担当編集者本人も驚いている次第。
核戦争から300年後のアメリカを舞台に、少年の成長と遍歴を描く本書は、1964年に発表されるや、スタージョン、ハインラインほか並みいる作家たちからこぞって絶賛を受けた名作です。
それだけに、日本でもさまざまな機会に紹介されてきましたが、ぜひ実際に手にとってお読みください。構成、筆致、内容、どれをとっても一級の作品であり、この小説を日本語で読めるようになった幸せを、みなさんで噛みしめようではありませんか。
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