サイト内検索

詳細検索

ヘルプ

セーフサーチについて

性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示を調整できる機能です。
ご利用当初は「セーフサーチ」が「ON」に設定されており、性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示が制限されています。
全ての作品を表示するためには「OFF」にしてご覧ください。
※セーフサーチを「OFF」にすると、アダルト認証ページで「はい」を選択した状態になります。
※セーフサーチを「OFF」から「ON」に戻すと、次ページの表示もしくはページ更新後に認証が入ります。

e-hon連携キャンペーン ~5/31

hontoレビュー

ほしい本の一覧を見る

帝国 グローバル化の世界秩序とマルチチュードの可能性 みんなのレビュー

予約購入について
  • 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
  • ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
  • ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
  • 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。

みんなのレビュー18件

みんなの評価3.6

評価内訳

15 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

全世界のウゾームゾーよ、抵抗せよ

2003/04/06 03:31

11人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:梶谷懐 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 とにかくあちこちで話題沸騰のこの本、読んでみると想像していたより読みやすかったし面白かった。しかしその面白さは主にマルクス、フーコー、ドゥルーズ=ガタリ、ウォーラーステイン(+従属理論)、といったおなじみの理論が現実の国際情勢を分析する際のツールとして手際よく整理されているということからくるものだと思う。だからこの本に、一部の人が期待しているような、現実を変える理論的支柱になるような力があるかといったら、それは大いに疑問だ。この本に対する評価の高さは、むしろ上記のような思想家の著作になじんできた人たちの「俺たちの読んできたものは世界を理解するために有効だったんだ」という安心感からきてるんじゃないだろうか。しかし、肝心の内容はというと、次のような決して小さくない問題点を抱えている。

 まず、すでに指摘されていることだが、<帝国>に抵抗する主体として本書で重要な位置づけが与えられている「マルチテュード」という概念にはあまりにも実体がない。筆者たちは、とりあえず「国民」に代表される近代的な「主体」概念はダメだ、というポストモダン思想の前提を受け継いでいるが、同時に、主体が存在しないところには変革もない、ということも痛感しているようだ。そこで考え出されたのが、何らかの境界線で閉じられることのない「多様性」を抱えた主体「マルチテュード」というわけだ。具体的には、シアトルのWTO会議に反対するために集まった人々のような存在をさすらしい。でも、先進国で裕福な暮らしをしていて一種の正義感からグローバル化に反対する人と、途上国で本当に食うや食わずの生活をしている人とを、本当に同じ概念でくくれるんだろうか。また、たとえばウヨクな人たちなんかは、やはりその「開かれた多様体」から排除されるんだろうか。そしてそのことに正当性はあるんだろうか。
 僕はこの言葉を「ウゾームゾー」とでも訳してはどうかと勝手に思っている。「全世界のウゾームゾー」が騒いでも何も起きそうにないけれど、それを「全世界のマルチテュード」といいかえると何か変革への希望がわいてくるとしたら、それは単に言葉の魔術、イメージ操作だ。でも本書がやっていることは基本的にそういうことなんじゃないのか。  
 第二に、<帝国>の秩序概念は、グローバル化した資本主義による経済的なものだけではなく、デモクラシーなど個人の内面の価値観にまで行使される「生政治的」な権力のあり方も含んでいる。だとしたら、本書のようなその分析者も含め、<帝国>秩序の「外部」に立つことは可能なんだろうか。本書の議論がフーコーの権力論を下敷きにしている以上、それは避けられない問いのはずだが、みたところ著者たちはこれにまともに答えてない。それどころか、従来の従属論の思考にのっとって、WTOに反対するマルチテュードをグローバル経済の「外部」に立った批判者として手放しで賞賛しているように見える。フーコーならきっとそういう安易な「希望」を抱くことを戒めただろうに。 
 第三に、本書には、丹念な実証的作業によって現実に新しい光を当てよう、という態度が根本的に欠けている。そこが、マルクスやフーコーといった先達との大きな違いだ。マルクスは、現実の労働者のおかれている悲惨な状況をできるだけ詳細に把握・記述しようと努めたし、フーコーはそれまで語られてこなかった「歴史」の再構成(「知の考古学」)のために膨大な文献考証を行ったのだった。
 というわけで、悪い本じゃないんだけど、残念ながら『資本論』や『言葉と物』といった、スケールが大きいうえに緻密な議論が積み上げられた偉大な古典には遠く及ばない、というのが正直な感想だ。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

ラディカルな理論の書

2003/08/24 14:33

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:オリオン - この投稿者のレビュー一覧を見る


 資本主義と一体となった近代国民国家は、空間的「外部」と時間的「他者」を糧とした。ここで言う「空間」は領土だけでなく、内在と超越といった形而上学的な区画割りを含む。また他者が「時間的」であるとは、国民(ネーション)が歴史を発生場所とする幻想であると、あるいはエネルギー革命や技術革新が生産時間を短縮すること、より端的には価値が労働時間ではかられたことを念頭においている。

 外部は、政治権力の存在基盤であった。何よりも権力は境界確定者として、内部と外部の媒介者として振る舞う。内在的な諸力の錯綜による矛盾を外部(神であれ悪の帝国であれ)への言及でもって、とりわけ危機の演出によって解消する。こうした権力の超越論的なあり方を時間軸に沿って論理展開することで、資本主義経済は最終決着を繰り延べる。都市と農村の賃金の差異や生産技術の革新を通じて利潤を獲得すること(工業経済)、細胞分裂的な差異そのものを生産すること(情報経済)。

 そして今、グローバル化による「外部」の消失と、情報化や大交流による均質化を通じた「他者」の解消がもたらされ、国民国家と資本主義は根本的な変質を余儀なくされている。新しい地図の作製と新しい時間性の構築、新しい共同性の構成へ向けた転換期を迎えている。

 ──これまでのところは、『〈帝国〉』の要約ではない。ヨーロッパ近代の権力と資本主義的生産様式をめぐる本書の系譜学的叙述は、以上のような平板で図式的な整理をはるかに凌駕するとてつもない濃度を持っている。とりわけ、スコトゥス‐スピノザ‐ニーチェ、あるいはマキアヴェッリ‐トクヴィル‐ヴィトゲンシュタインといった「内在性の平面」や「構成的権力」をめぐる思想的系譜の摘出は、実に的確である。しかし、『〈帝国〉』の大半を占めるそうした叙述は、ネグリとハートが本書で提示した〈帝国〉という概念の理論的背景をなすものにすぎない。

 「今日私たちは、帝国主義から〈帝国〉への移行、言いかえれば、国民国家からグローバルな市場の調整への移行に立ち会っている」。来るべき〈帝国〉は領土を持たない。つまり、〈帝国〉はアメリカではない。それは、核兵器と貨幣とコミュニケーションを手段とするグローバルな管理ネットワーク(「単一の支配原理のもとに統合された一連の国家的かつ超国家的な組織体」)である。

 「〈帝国〉が具体的なかたちをとるのは、言語とコミュニケーションとが、言いかえれば、非物質的労働と協働とが支配的な生産力になるときである」。つまり、〈帝国〉はマルチチュード(これもまた〈群衆〉とでも表記すべき概念である)に寄生する。そこでは、腐敗が遍在している。アリストテレスの「生成消滅論」を踏まえるならば、マルチチュードが交雑による共通種「生成」の担い手であるのと裏腹な関係において、〈帝国〉の本質は「消滅(腐敗)」である。

 「ただマルチチュードのみが、その実践的な実験をとおしてモデルを差し出し、いつ、いかにして、可能的なものが現実的なものに生成するかを決定するだろう」。だが、マルチチュードによる「愛のプロジェクト」がもたらす「モデル」について、著者たちは、ただアッシジの聖フランチェスコ伝説を持ち出して、「存在の歓び」や「愛、素朴さ、そしてまた無垢」といった美しい言葉をちりばめるだけである。

 要するに、本書は徹底的な、ラディカルなまでに徹底的な理論の書なのだ。「しかし、理論を軽視してはならない。(略)新たな実践はそれまでの理論を総体として検証することなくしてはありえないのである」(柄谷行人『トランスクリティーク』)。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

2006/11/25 13:59

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2009/05/09 23:11

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2010/10/05 15:58

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2011/09/19 22:10

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2012/08/04 03:04

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2012/10/22 22:41

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2013/02/16 21:30

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2013/03/10 16:10

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2014/10/31 08:40

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2016/04/12 11:05

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2013/09/21 19:49

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2022/01/12 21:48

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2023/05/05 10:44

投稿元:ブクログ

レビューを見る

15 件中 1 件~ 15 件を表示
×

hontoからおトクな情報をお届けします!

割引きクーポンや人気の特集ページ、ほしい本の値下げ情報などをプッシュ通知でいち早くお届けします。