紙の本
淡々とした筆致だが胸を打つ、苦難のサバイバルの回想録
2003/11/13 00:08
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:APRICOT - この投稿者のレビュー一覧を見る
映画化されて有名になったので、紹介の要もないと思うが、ユダヤ系ポーランド人のピアニスト、ウワディスワフ・シュピルマンが、ナチス迫害下での自らの苦難のサバイバルをつづった回想録。
シュピルマンは自らの苦難を、驚くほど淡々とした、他人事のような冷静な筆致で描いている。内容的にはつらく悲しかったが、文章的には堅苦しさもぎこちなさもなく、非常に読みやすかった。シュピルマンという人、作家ではないかもしれないが、文才に恵まれた人だと思う。
シュピルマンはごく普通の、無力な人間である。彼の文章は、このような普通の無力な人々がいかにして、なすすべもなく大きな渦に巻き込まれ、真綿で首を絞められるようにじわじわと追いつめられ、死に追いやられていったかを、まざまざと描き出している。ナチスのユダヤ人迫害といえば、強制収容所での大量虐殺がすぐ頭に浮かぶが、その前段階であるゲットーでの軟禁生活も、生殺し同然の非常に残酷なものだった事を、本書で初めて知った。
シュピルマンが幸運と、多くの人々の助けに恵まれなければ、生き延びられなかったのは確かである。だが、彼の超然とした冷静さ、忍耐強さ、そして生き抜こうとする強靱な意志により、最後まで自分を失わなかった事も、彼がサバイバルに成功した重要な要因の1つとして、見逃してはならないと思う。
ドイツ人将校に救われる“事実は小説よりも奇なり”のクライマックスは、有名すぎて読む前から知っていた。それでも、シュピルマンとホーゼンフェルト大尉との触れ合いは、短いがしみじみとした味わいがあり、胸を打つ。またエピローグでは、シュピルマンが戦後ホーゼンフェルトを救おうとして果たせなかった事実が、さらりと描かれている。ナチスから解放されたと思ったら、今度はソ連に押さえつけられた東欧の悲劇が垣間見られ、もの悲しい余韻が胸を打つ。
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映画を見てひとめぼれなこの本内容はかなりくらいです。でも感動します。第2次世界大戦時のワルシャワで暮らすユダヤ人ピアニストのお話。第75回アカデミー賞主演男優賞受賞作(受賞者:エイドリアン・ブロディ)すごくかっこいいので、DVDやビデをも必見。
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映画よりは感じるものがあると思います。ただ日記のような形なので読み難いと感じる人もいるのではないでしょうか。
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この作品の他にアンネの日記などドイツ進行に関する本があるが、それらと共鳴する作品である。また、主人公は自分の職業に誇りを持っているため指を大事にする。戦争の最中にも将来を見出す力があった事に驚いた。
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戦場のピアニストの原作です。映画の脚本の方ではなく、シュピルマン氏が書かれた方です。
やっぱり、映画より此方のほうが詳しくて良かったですね…。特に、ホーゼンフェルト大尉とのシーンは省いちゃいかんだろー等と思いましたね…。映画だと、どうも誤解が生じそうで…。
それにしても、想像していたよりはとても読みやすくてスラスラ読めました。作者はピアニストですが、中々の筆が立つ人だなぁ…等と思いましたね。読む価値は大いに有ると思います。
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第一次世界大戦のことを材料に書いた小説や映画は山程ある。
私が最初にこの戦争のことを知ったのはおそらく小学校1年生のとき。
本が大好きな私に母が入学祝いに買ってくれた本が「キュリー夫人」の伝記だった。彼女が小学生のときに、やはりドイツ軍がワルシャワを占領して、小学校ではドイツ兵がいないときにポーランドのことを勉強し、見回りが来ると裁縫の時間になる。頭がよかったキュリー夫人がドイツ人の質問にドイツ語で答えるというもの。
そして、そのあと見たビデオは「アンネの日記」
これで、ユダヤ人とナチスドイツについてのことを少し知ることになる(のちに、高校でも芸術鑑賞会で演劇版を見させられた)が、があまりに恐くて、親友の愛読書「アンネの日記」も読むことなく終わった
私の大好きなオードリーヘップバーン主演の「戦争と平和」
ちょっと作り物っぽい感じで、どうにも実感がわかない。無信教の私としては最後のやたらと出てくる「神」という言葉が余計架空の出来事のような気分にさせられる。
最後に読んだ本が「シンドラーのリスト」
でも、なんだかちっとも進まず、途中でほおり投げて誰かにあげてしまった。
今回の「戦場のピアニスト」は「ピアニスト」という言葉に当然のことながら惹かれてしまった。「海の上のピアニスト」を彷佛させられて、邦題としてはあまりよくない気がする。原作名は「The Pianist」。2003年のアカデミー作品賞最有力作品と思われていた(なぜならアカデミー賞の審査員はユダヤ系が多いから、きっと共感を得る人が多いと思われていたのだ)のだが、結局監督賞と脚色賞に終わってしまう。
それでも気になってすごく映画が見たかったのだが、友達の意見だと
「絶対映画で見るようなものじゃないから本のほうがいいよ」
ということで、本を読んでよかったら映画を見るということにした。
最初は演奏家として著者であるシュピルマンが登場する。いろんな曲があって思わずサントラ版を買おうかと思ってしまう。
ところが、だんだん「演奏家としてのシュピルマン」ではなく「ユダヤ人としてのシュピルマン」の色が濃くなっていく(あたりまえと言えばあたりまえなのだが)。
ドイツ軍にワルシャワが占領されるにつれ、どんどん逃げて行く仲間たち。それでも市内にとどまろうとする一家。しかし、ウムシュラークプラッツというユダヤ人収容地に1人の弟と姉以外の家族が、とうとう送られることになる。そこで新たにまた、ドイツ軍のために働ける人と死への道を歩むことになる人が選別されるのだ。ユダヤ人警官はドイツ軍のいわば奴隷になっているので、死なずに済む。そこでたまたまいた知人のユダヤ人警官によって助けられるシュピルマン。しかし、この一家のあとを追ってきてしまった姉と弟はほかの家族と一緒にガスで溶かされて死ぬ運命になってしまった。
なんとか死を免れたが家族もいないシュピルマンは市内に戻りあちこちのポーランド人によって助けられることになる。正直言って、家族と離ればなれになるくらいなら生きていても仕方がないというものだろう。しかし、どうせ死ぬならユダヤ人としての誇りをま���とうして死にたいという気持ちが彼を生へ導かせる。匿われている間、彼はわずかな食料と水で音をたてることなく本を読んだり英語の勉強をしたりして過ごした。が、あちこちに逃げながら生きながらえていくうちにだんだんそれも不可能になってくる。最後には手元に本も食料もなく、体力温存のためにじっと身動きせず頭の中で今まで弾いた曲の1小節ずつを思い出しながら頭の中で歌ったり、読んだ本の一節を思い出したり、頭の中で憶えた英語のクイズをしたりして過ごすのだ。そして、もし生きながらえたときのために、常に自分の手に細心の注意を払っている。ピアニストにとって手こそが命だから…。
今までいろいろな本を読んでいてこの当時のドイツは本当に憎むべき国だったし、人々も悪い人ばかりだと思っていた。しかし、最後シュピルマンを救った決定的な人物は、彼の隠れている現場に遭遇してしまった1人のドイツ人大尉だったのだ。彼はとても自分達のおかしていること(相手がユダヤ人だということで意味もなく人殺しをすること)をとても恥じている人で、シュピルマンに安全な隠れ家と食料を提供してくれる。彼はこう言う。
「君がこの5年間この地獄を生き抜いてきたのなら…。それは、明らかに、生きよ、という神の思し召しだ。あと数週間頑張れ。戦争は遅くとも春には終わるぞ」
この本にはなんとか危機を乗り越えて残ることができた(もしドイツ政府になど渡ってしまったら大変だったと思うのだが、きちんとドイツの家族のもとに届けられた)そのヴィルム・ホーゼンフェルト大尉の日記も掲載されている。彼はその日記に救ったユダヤ人のリストまで残しており、その4番目にシュピルマンの名前があったのだ。
戦争は結局ナチスドイツが負けてその大尉もスターリングラードの戦犯捕虜収容所で亡くなってしまった。シュピルマンは大尉に助けてもらったお礼としてこう言う。
「貴方の身に何か起こった時に少しでもお役にたてればと思います。私の名前を憶えていてください。ポーランド放送のシュピルマンです」
そのあと、シュピルマンの友人のヴァイオリニストがたまたまこの大尉に収容所で会ったのだが、結局彼を助けることはできなかった。
再びポーランドに自由が訪れたとき、二人のユダヤ人演奏家は奇跡的にまた、共演できることになる。
読み終えて何と言ったらよいのだろう。泣けるべきところはやはり涙が出てくるのだが、かと言って感動するような本ではない。すごく何とも言えない悲愴感がただよってくる。
ただ、人間の愚かさがたくさん見えてくる。
ドイツ兵に媚びて生き長らえるユダヤ警官。
ナチスに媚びて非人道的なことを平気でするドイツ国民。
そして、おそらくそのナチスも病んでいたにちがいない。
そして、どこまでも自分の良心に従って歩いたドイツ人大尉。
(この大尉は神の教えに従っただけだという人がいるかもしれない。しかし、無信教の私としてはもし、この世に神がいるとすればそれは自分の良心だと思うので、やはりそれはこのドイツ人の人柄だと思う)。
歴史はくり返される。
戦争はよくないと言っても、きっとこの先、人類が地球上にいる限り、また起こるのであろう。
なんとも悲しい物語である。
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読み終わって、とても怖くなりました。でも、どうしてここまでする必要があったのか、全く分かりません。しかし、人間の生命力の力、意思のすごさを思い知りました。また戦争や殺戮をしてきた兵隊の全員が悪人じゃなく、いい人もいたという事。それを忘れてはいけない事。ナチスについて色んな本を読んできたし論文もいくつか書いてきたけど、これが一番残酷だった。
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映画を観て、原作も読んでみたいと強く思い読みました。淡々と書かれている文章ですが、映画では胸が締め付けられる場面が多々ありました。シュピルマンを助けたドイツ人将校の、人間としての真価が問われるのではないでしょうか?あとがきを読んで更に辛くなりました。
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1人のピアニストは、才能によって生かされたけれど、家族も財産も、全てを失ってしまった。
人間は生きたいと そう望む生き物なのです。死となり合わせの空間で、ピアノに救われたシュピルマンの実話。
TVでシュピルマンの演奏しているビデオを見て、無意識の内に涙が出ました。
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信じられないと思った。人の命があんなにも安易に失われていくなんて・・・・。作者も生き延びられたのは奇跡に近いんじゃないかと思う。しかもピアニストで。すごい生命力と精神力。ちょっと人名とか地名とかたくさん出てきて読みずらいけど、ユダヤ人迫害について知るならこれはいいと思う。でも怖い。本当の事だから。そして怒りがこみ上げる。
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映画から入ったんですが、当時の歴史的な背景や情勢を理解してないと難解ですね。でも、重い雰囲気や悲惨な状況は痛いほど伝わりました。
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ユダヤ人の迫害。人権なんて無いに等しい隔離された世界。
ノンフィクションだからこそ感じる死の恐怖。
軍人さんの存在は大きなものだ
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映画で見てから本を買ったパターン。
内容は知っていたものの改めて文で読むとまた違う部分など多々ある。ナチス政権下で6年間も生き延びたというのはかなり凄いことであろうと思う。
ドイツ人の愚行とともに彼を助けたドイツ人やポーランド人の多いことにも驚かされる。
巻末によれば「ナチスほど多くユダヤ人を殺した政権もないが、これほど多くユダヤ人を匿った民族もほかに類をみない」とのことである。
巻末には彼を救ったドイツ人ホーゼンフェルト大尉の日記も載せられている。ホーゼンフェルト大尉はシュピルマンだけでなく多くのユダヤ人を救ったそうだ。彼のような人が気が狂い、獄死してしまったのは悔やんでも悔やみきれない。
状況下によっては誰もが鬼になる可能性があるが
誰もが鬼になる状況下でも人間のこころを忘れない人が必ずいる
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とにかくびっくりしたのが、この人はこんな苦しい日々を何年も経験したにもかかわらず、どうしてこんなに冷静な文章をかけるんだろうってことです。あまりに冷静すぎて現実に起こった出来事だとは思えない。暴力的な部分や残酷な言葉はほとんど用いられていないのに、すごく怖かった。ヒトラーの胸の中には確かにドイツへの炎が燃え上がっていたのかもしれないけれど、こんな惨劇を生み出す彼の罪深さを改めて感じました。何を考えていたとしても、これは、いけない。
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深夜に観た映画版より。
WW2終戦直後に書かれたノンフィクション。周囲の状況も自分の感情も『ただあった事実』として淡々と書かれているのが逆に、その凄惨すぎる状況にうすらぐらい恐ろしさというものが内包されているように感じました。
ホーゼンフェルト大尉の最期が記述されていたけれど、とても…救われないと思った…。