紙の本
渋谷と秋葉原あるいは外向的と内向的
2003/03/28 00:40
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投稿者:メル - この投稿者のレビュー一覧を見る
「官」から「民」そして「個」へと、都市を変える力が移ってきたことを論じる。
1997年に起きた秋葉原の変化は、オタクを中心にしたその趣味が都市の様相や建築を変え、そしてアキハバラになった。「民」主導で開発をしてきた渋谷と対比すると、その特徴がよく分かる。渋谷(池袋)と秋葉原の違い、端的に言えば、それは外国文化あるいは文化的権威に対してとる態度の違いである。前者が文化的権威に向かっていく外向的態度であるなら、後者は文化的権威から自分を防衛するために、その権威を自分たちの好きなように同化し内在化させる内向的態度であった。
このようなオタクの趣味が、一つの都市の姿を変えたというのは文化史的にも社会学的にも極めて特異な現象であるし、たしかに見逃せない事例であると思う。その点において、本書の研究は重要な一冊である。
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2003年に発行された現代日本の都市論を扱った本。秋葉原という街の特殊性を取り上げ、都市が趣味を基調とした私室のような「個」によって成り立っている様を描く。海外志向が強く、ショーウィンドウのようなガラス張りの建物が並ぶ渋谷との対比は興味深い。
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秋葉原の文化を建築都市論から分析する本。著者は建築家でありオタクでもある森川嘉一郎氏。オモシロイ。
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流れとかすごい分かりやすくて、
楽しみつつお勉強にもなりました。
卒論でだいぶ、お世話になりました♪
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表紙は「おやっ?」
とおもうけどまじめな本です。わりと。
秋葉原と渋谷との比較とか、それぞれの事例はなかなか納得感がありますね。
巣鴨とか下北とかもある意味「趣都」なんかな?
結論的な話はよくわかりませんが、自分の視点をひとつ増やすことが出来そうな一冊。
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「電器の街」からいつの間にか「オタクの街」へと変貌し、日本どころか外国人にも認知されるようになった秋葉原。その変化に着目し、あらためてその生い立ち・成り立ちを文化的、都市学・建築学的な視点から紐解いて見せたのが本書、といえるのではないだろうか。なんだか小難しい本のようにも聞こえるけれど、「萌える」ということばの正体からはじまり、新世紀エヴァンゲリオン、コミケや同人作品、オウム真理教、ジャンボジェットの機体デザインなど、興味を引く話題を拾い集めながら、オタク文化や都市論が展開されていて、オタクについていまいち理解し切れていないおじさんたちの、手頃な「オタク学入門書」にもなるのではないだろうか。
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大好きな本です!
卒論テーマを国際理解教育から,秋葉原の土地利用に
変えようかと思ったぐらいおもしろかった.
もちろん先生に止められましたがw
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成田からの帰京の途で次第に見えてくる街並のスケール感の違い。レヴィ=ストロースが「悲しき熱帯」に描いたアマゾン。帰国子女として異邦人である著者が、「趣都」秋葉原を分析するために採ったアプローチは、萌えるオタクの内面との同一化を試みることではなく、建築学的にみた外面的・環境的な変化を抽出し、文化人類学者のような手さばきで様々な現象を読み解くシンプルな論理を構築することだった。広い射程をもった強靭な論考。すごい。
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ブクブク交換会(テーマ「町」)で採り上げられたお勧め本。
今や特殊なオタク文化圏の中心地となった秋葉原を、建築都市学の視点から分析する一冊。
初めは電化製品の町だった秋葉原が、なぜオタクの町へと変貌を遂げていったのかが論じられています。
都市学的アプローチだけでなく、オタクカルチャー論としても「萌え」の意味の発生から、なぜ日本では美少女キャラが好まれるのかなどがわかり、パソコンとアニメ絵の美少女は、かなり近いところにあることを知りました。
性的意味合いを多分に含んだ美少女ものが日本アニメの特徴であり、性的意味を排除したディズニーものと袂を違えたのは、手塚アニメがきっかけだと書かれており、納得のいくものがありました。
確かに、アメリカなど海外には、アトムのような小さい子が主人公で大活躍するようなものはありません。アトムの格好も、うがった見方をすればその後の日本アニメキャラの萌芽となったと、言えなくはありません。
日本アニメのもう一つの特徴であるロボットものに関しては、神がかったネーミングに呪術的な魅力があるとされ、ロボットというより神像、偶像であるとされ、「"マジン"ガーZ」「"ゴッド"シグマ」「"ゴッド"マーズ」などが挙げられています。
マジンガーZが魔神を意味していたとは、思いもよりませんでした。
都市学とオタク論、どちらか一方に偏り過ぎずに構成されているため、変な抵抗感や拒否感もなく読むことができました。
あまりにも特殊な町というイメージを抱いていた秋葉原ですが、この本を読むと、現在の姿になるべくしてなった必然性の町のようにも思えます。
自分ではまず手に取らない本ですが、勧められて実際に読んでみたら、おもしろかったです。
秋葉原が好きな方には、特にお勧めです。
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アキバの都市論。電気街~オタク街の変遷についてと、なぜかオウム真理教の話が出てくる。景観からくる渋谷の対比とかなかなか面白かった。
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秋葉原の変貌を都市、建築論の視点をベースに論じた本。
『大きな物語』の喪失から『個』へのシフト。
『個』が変貌させた街への『民』の流入。さらに『官』の流入と変貌後の五年の内に逆の流れを受け入れるに至ったこの【趣都】の著者によるゼロ年代後半の考察を聴いてみたい。
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ビジネスマンはオフィス街に集まる。例えば大手町は典型的なビスネスマンの街である。それは彼らの社会的な身分や役割によるものだ。ところが秋葉原全くことなる仕組みでその個性を獲得している。その現象を著者は個室空間の都市への延長の結果であると述べている。もっと大胆に侵食といってもいいかもしれない。秋葉原はその歴史上マイナーな人格の都市的な偏在をもたらしていた。具体的にはパソコン販売の導線の大本であったという点である。大手商業資本、広告代理店からコントロールされたくないという心情をもつオタクたちは必然的にマイノリティである。マイノリティかつ消費者である彼らのその特性ゆえに、秋葉原はこれまでと違ってコマーシャリスティックな大衆的な開発を再帰的に受け入れないものとなっていった。当初は決して意図したものではなく自然発生的に個性を獲得していった秋葉原という趣都を誕生させた。世界的には秋葉原があたかも大昔から連綿と続いてきた歴史あるアニメ・漫画好きの聖地であると認識されているが、実際には97年以降のことに過ぎない。この事実から考えられることはなにかというと、こういった物語をつくることが、海外の注目を日本に向けるための重要事項であるということだろう。たとえ後付の設定でも、それが幻想だとしても魅力あるものとして多くの人間に受容される方法論がいま求められている。
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アニメに関心があるのはもちろん、そして「まちの成り立ち」の本にも関心があるので手に取ってみました。
他のアニメについての評論が書かれた本にもあった「日本のアニメキャラクター=性的」というのがこの本にも書かれていましたが、一番この本がコレについて分かりやすい説明だったと思います。
また、秋葉原と渋谷との比較はなるほど~と思いました。電気街から始まり、なぜオタクの街へと変貌を遂げたかが本当に詳しく載っていたと思います(^_^)
地理的な要因は全く関係なく街が形成されていったとあり衝撃を受けました。秋葉原侮りがたし、と本気で感じました(笑)
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都市形成と人格傾向との関係性と成り立ち。
建築学から秋葉原を観る一冊。
「萌える趣都」とは、言い得て妙。
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正直、テーマである「オタク趣味」と「建築」を結びつけることには、成功している気がしない。しかし、そこにいたるまでの考察の一つひとつはなかなかおもしろいものがある。(かなり牽強付会ではありますが)
たとえば、2章「なぜパソコンマニアはアニメ絵の美少女を好むのか」では、「8色とか16色しか使えなかったような頃から、画面にアニメ絵の美少女を描こうとさまざまに工夫を凝らしてきた」ことに注目している。世界中にコンピュータオタクは同時発生的に出現しただろうに、なぜ日本ではパソコンと結びついたのだろう……とか、興味が尽きないポイントだ。ま、その結論(先端技術や、世界標準たるアメリカのシステムに対する征服欲)はバカバカしいが。だって、そのころ美少女を描くのにMSベーシックだのwindowsだのくされたシステム使わなかったもんよ……美少女ゲームは国民機<NEC-PC98>の文化です。
また、オタクの部屋が「魔窟」化する現象に対する考察でも、「著者が男子高校生の個室に関して行った調査でも、部屋の電子機器の数量と清掃頻度には、負の相関が統計的に見受けられた」なんてウケる記述があったり。(これも結論はどうかとは思うけどね……)
写真をもとに、渋谷の建築物がどんどん透明化する傾向にあり、反対に秋葉原ではどんどん窓がなくなり、巨大なアニメ美少女の一枚絵をつるし、外界と遮断される傾向にある……と論じるところなどはおもしろい。(その後、秋葉原にもガラス張りのビルが建ちましたが……)
納得いくか行かないかはともかく、「オタク」の切り口として、新しい手法を開発したという点で(ばかばかしくもありつつ)興味深いと思う。