紙の本
いつまでも真の豊かさを持てない日本
2003/06/24 08:46
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:良泉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「物質的豊かさより精神的豊かさ」とか、「あくせすせず自分らしく生きる」とかいった言葉が流行のように言われ出したのはいつの頃からか。大量消費社会の代表的レジャーであった大規模テーマパークがつぎつぎ破綻し、休みの日にはお弁当を持って近くの公園で子どもと遊ぶという「安・近・短」型の余暇を充実させる人たちが増えてきたのはいつの頃からか。最近ではこういった流れが「スローライフ」と呼ばれ、流行言葉にさえなっている。
しかし、まだまだ今の日本は、本当の意味での豊かさを持てないでいる、と説くのが著者である。
本書に示された多くの実例、高失業率・リストラ・長時間労働・ホームレス・働き盛り世代の自殺、どれもこれも「豊かさ」とはまったく縁遠い話、しかしこれがまさしく今の日本の現状なのだ。
そして中でも、特に嘆かわしいのは子供たちの世界に見られる閉塞感。いじめにあって死んでいく子供たちの残す言葉は、子供たちに本当の豊かさを与えてあげることのできない日本社会への厳しい挑戦状である。
今の日本社会はあいもかわらず効率と競争の原理を子供社会に押し付けようとする。手っ取り早く経済競争に勝ちぬく子の育成・できる子とできない子の選別・できないとみなされた子の切り捨て・強制的な愛国心の押し付け。子供たちの諦めと無気力、いじめの問題さえ、すべてが大人社会の押し付けに対する無言のアピールであることに気づくのはいつのことか。ほんの一つの例として、著者の経験したドイツの学校生活との比較が示されているが、それだけで日本の教育現場の荒廃はあきらかである。
この廃れきった日本社会を救う鍵はどこに隠されているのか。
著者がこの本で示すキーワードは「助け合い」である。支え合い・自助と互助の一体化こそが日本を救う。そして示される多くの実例。この本を読めば、草の根のところで多くの人たちが、小さな行動ではあるけれど、支え合い社会を実践していることがわかる。まだまだ捨てたもんじゃない、といった気にさせられる。特にNGOに参加しボランティアを実践する若者たちの行動を見ていると、勇気づけられるものが大きい。
教育基本法改正を唱え、より一層の一方的押し付け・管理教育を推し進めようとする一部の政治家に是非読んでもらいたい本である。
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大学のゼミで使用した教科書。
印象に残ったのは、ドイツの教育や福祉に大変感心なさってるということ。
ドイツには親戚が沢山いるので、聞いてみたが、必ずしも本の内容と一致しているわけではなかった。
他にもフリーターやキレる若者などの問題にも触れていたが、これを機に社会問題に関心を持つようになった。
まだあまり知識のない人にも読める新書だと思います
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大学1年生の私にとってこの本は所々面白かったけど、字が細かすぎて最後まで読めなかったです。
けど半分ぐらいまで読んでいくうちにこの世の中は弱肉強食なんだなと思いました。
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[ 内容 ]
効率と競争の追求によって泥沼の不況から抜け出そうとする日本社会。
だが、リストラ、失業、長時間労働、年金破綻など、暮らしの不安は暮るばかりだ。
子どもの世界も閉塞をきわめている。
著者のNGO活動の経験をふまえて、真に豊かな社会をもたらす互助の関係性をいかにして作るかを考える。
前著『豊かさとは何か』の続篇。
[ 目次 ]
第1章 切り裂かれる労働と生活の世界
第2章 不安な社会に生きる子ども達
第3章 なぜ助け合うのか
第4章 NGOの活動と若者達
第5章 支えあう人間の歴史と理論
希望を拓く―終章に代えて
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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安易な教育批判、官僚批判や、愛に溢れただけの保守主義(郷愁主義)が多く、岩波新書にしては学術性に欠けている気がする。
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○経済成長目覚ましいバブル期に「”豊かさ”とは何か」という問題を提起した著者が、バブル崩壊後にふたたび豊かさについて問いかけます。それまでは、競争原理こそが社会の原動力であり、その力で社会が最適化効率化してゆくと信じられてきたのに対して、著者はそこに潜む人間の商品化(失業者、非正規雇用者問題など)、荒んだ子ども同士の関係(いじめ、不登校問題など)といった負の側面を描き出します。
○著者によれば、いま人々にとって必要なのは、競争に代わる社会原理、つまり、互助・互恵や連帯といった助け合いの原理です。就業者と失業者、正規社員と非正規社員、出来る生徒と出来ない生徒。競争は人びとの二極分化をもたらし、他者への想像力を奪います。なぜなら、こうした競争システムは、企業や国家といった組織にとって都合のよい選別の仕組みなのであって、「人間関係に不可欠な助け合いや共感能力、個性を認め合うこと、地球市民としての責任などは軽視されている(p. 86)」からです。
○そこで著者はこの競争原理に代わるものとして「助け合いの原理」を唱えます。助け合いとは、人びとの連帯であり、互助や互恵であり、共感(他者への想像力といってもよいでしょう)という、人間としての相互作用があると言うことです。例えば、失業者同士が連帯することで、解決の糸口を探ったり、社会問題として声を上げることが出来ます。また、「社会には人びとの助け合いが存在している」と人びとが社会を信用できることが安心感をもたらすといいます。その点、教育において道徳を科目化したり「心のノート」を導入して道徳を教えるというのはどこか違和感を覚えますし、正答主義を基軸にしたままの短絡的な解決方法のようにも思えます。このような点から、「根本的な視点を新たにする必要がある」というのが、この本の言いたいことなのではないでしょうか。つまり、連帯や共同、助け合いに「豊かさ」の条件の手がかりを見出しながらも、「それだけで全て解決する」とは言っていない点に注意する必要があると思います。
* 疑問 *
○日本のゆとり教育とは、時間的なゆとりに過ぎなかったのではないか。ドイツの教育カリキュラム、大学の入学、転校制度との比較。
○協同組合(生協、労協など)は、当初はその理念と活動が一致していたが、現在はどうなのか、現在の存在意義とはなにか(生協のスーパー化、労協の弱体化)。
○「公開された中で多様な意見が交わされれば、人々の考え方も豊かになり、よりよい結論に到達できる(p. 231)」とありますが、多様な意見が増えることで、実際上の問題として合意を得るのが難しくなるのではないか(もちろん情報公開は大切ですが)。
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結局豊かさとは何なのか。
互助の先にあるというのもちょっと違う気がする。
もちろん助け合うこと自体は大事だと思うが。
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誰もが感じている経済と豊かさは別物だということ。何で本当の豊かさを訴える政治家が出てこないのか不思議です。
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ユーゴの子どもたちとの交流の話しが心に残った。
実現に向けて多くのハードルを越えたことが感じられ、尊いと思った。
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競争ではなく、助け合う世界、社会にしていく。
日本の教育はこれを実現するためのシステムにはなっていないし、社会そのものが、競争を煽る仕組みになっている。
見習うべきものの、一つは、筆者が知るドイツにおける教育である。
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『豊かさとは何か』(岩波新書)の続編。
前著で著者は、経済成長に邁進してきた日本が本当の「豊かさ」を置き去りにしてきたことを批判していました。本書でも、前著刊行以後の日本においてそれらの問題が一向に解決されることなく、むしろ新自由主義的な政策を望む声が高まるなかでますますひどくなってきていることが、やはり批判的な観点から論じられています。
また本書の後半では、著者自身がかかわったNGO活動と、そこでおこなわれた日本とユーゴスラビアの子どもたちの交流が紹介されており、未来における「共生」への希望が語られています。
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「ピアスや服装に学校は何も干渉しないのでしょうか。学校は子供の個性に対応して教育するところ。ピアスや服装は子供の個性がはっきりわかっていいじゃないか」
「労働者の解雇につながる技術の発達は、資本主義の中でプラスだけなのか」