紙の本
有用な結果がひきだせない理論 ?!
2010/11/02 23:04
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Kana - この投稿者のレビュー一覧を見る
フィードバックやら複雑系やら要素還元論の話がでてきて 「逆システム論」 などということばがでてくると,かなり精密な議論をしようとしているのかと誤解してしまう. しかし,著者がつかっている 「多重フィードバック」 をもつような複雑なシステムは,著者もそれらしいことを書いているように,帰納的にその構造を推定することはもちろん,システムのパラメタをきめることも困難だ. だから,「逆システム論」 ではあいまいな定性的な議論しかできない. 著者も書いているように定性的な議論は重要だが,すべてがあいまいなまま議論しても,有用な結果をだすことはむずかしいだろう.
投稿元:
レビューを見る
市場や生命という複雑なしくみを解明する方法を著者たちは「逆システム学」と呼ぶ.それは,新古典派経済学や遺伝子決定論などの主流の学問研究を批判し,市場や生命の本質を多重フィードバックのしくみに見出すというものだ.経済学と生命科学の対話から浮かび上がる,まったく新しい科学の方法論
投稿元:
レビューを見る
[ 内容 ]
市場や生命という複雑なしくみを解明する新たな方法を、著者たちは「逆システム学」と呼ぶ。
それは、新古典派経済学や遺伝子決定論などの主流の学問研究を批判し、市場や生命の本質を多重フィードバックのしくみに見出すというものだ。
経済学と生命科学の対話から浮かび上がる、まったく新しい科学の方法論。
[ 目次 ]
序章 逆システム学とは何か
第1章 セントラルドグマの暴走
第2章 制度の束と多重フィードバック
第3章 フィードフォーワードの罠?医学と経済学の逆システム学
第4章 変化と進化における多様性と適応
終章 どのようにしてパラダイムは転換してきたか
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
投稿元:
レビューを見る
要素還元論でも、構造論でもなく、演繹的に説明するのではなく、現象を説明するという感じに読めました。
それなら、現象論ではないのだろうか。
医学を引用しているので、生命だけに限定して解明してもらえるとうれしい。
投稿元:
レビューを見る
生命と経済学における市場の概念に、深い相関があるとする。
あくまで概論だが、興味深い話ではある。いつか続きが読めるといいなという一冊。
投稿元:
レビューを見る
2007-08-13
間違いなく野心的な書であることは言えるでしょう.
東大文化?
そこまで重くない気持ちで読み始めましたが,かなりのタフさでした.
日本にとどまらないマクロ経済の話を歴史的なレベルで政策の話などをしつつ,5ページくらいに一度,
生命科学のトピックと切り替わるという,
経済学と生命科学が行ったり来たりのコンフュージョン.
これを,総合的に読みこなせる読者は殆ど居ないでしょう.(部分的にはクリアですが)
僕は,経済学に詳しい生命科学の学生も,生命科学に詳しい経済学の学生も殆ど知りません.(海外ではダブルメジャーがあるんで,
そこそこ居るでしょうが)
経済学と生命科学が5ページに一度切り替わる進行パターンで,
徐々に何言ってるのかわからなくなっていくという,恐ろしい本です.
まあ,
システム論好きとしてはこの二つの領域に積極的にアナロジーを成立させてシステムを読み解こうとする立場には感銘を受けます.
ゲノムの調整機能と経済のセーフティーネットにアナロジーを結びつけていくのは,なにかひらめきがあったんだろうなあとは伝わってきました.
オリジナルなキーワードとしては逆システム学以外に,<多重フィードバック>と<制度の束>という言葉が出てきましたが,
共に
たくさんのフィードバック
いろんな制度
以上の意味がよみとれませんでした.・・・・
僕の理解不足でしょうが.
僕が不勉強なせいで,「逆システム学」自体も,よく理解できませんでした.
また,後々に読んでみたいです.
まあ,久しぶりに骨が在りそうで,わからん本だったので,ディスカッションの題材にはナカナカいいかもしれませんね.
positive!!
本の内容としては批判や批評的な部分が多く,
「結局,[逆システム学]でどんな研究が成立するの?」
が,不在な感じがしました.
次は是非,数式や体系化を込みにした横書きの本で読んでみたい.
投稿元:
レビューを見る
すごく示唆に富む本
「複雑系」との違い・・・システム全体のモデル化を目的にする複雑系と異なり、調節制御の仕組みや要素間の関係そのものが研究対象
ノイズとシグナルの峻別・・・重要な差異か、無視してよい誤差か
「一創造百盗作」−大野乾の遺伝子重複仮説
ゲーム理論に基づく情報の経済学の限界−年金制度や失業保険制度で論理破綻
日本企業の「現場監督者(フォアマン)」は、職場の代表であると同時に経営側(制御系)の末端機構である。
└2つの調節制御の機能が一人の人間に重複し、その機能を果たせないようになっている。
交渉モデルでは、相反する利害を持つ者同士が交渉しないと均衡には達しないのに、「現場監督者」の心の中で行われる交渉ゲームになってしまい、重要なフィードバック機能を失わせる。
多重フィードバックが効かなくなって、インセンティブに頼るような、一方向に向かって進む状態を「フィードフォワード」という。現実による調節のかからない危険な仕組である。
システムが切り替わるとき−一度に切り替わるほうがうまくいく
胎児→乳児
乳児→幼児
※成長→成熟 成熟→老化は、はっきりとした区切りがない中で進行するため、かつ成功体験があるため、困難が伴う。
同じ遺伝子が正反対の働きをすることがある。
└調節制御の遺伝子が、時期を見て働かせ方を変える。素朴な『遺伝子決定論』では説明がつかない。
政策者がバブルを望むワケ−必要消費より顕示的消費が盛んになるから
成長期にはフィードフォワードが有効な場合も多いが、成熟期にはもろくなってしまう。
セーフティネットには、自立の契機が必要。「状態」の変化に応じてセーフティネットを張りかえないと、多重フィードバックは壊れてしまう。
セーフティネットは、画一的に人々にインセンティブを与えるような仕組みではない。人々の多様性や多元的社会を保証するものでなければならない。
投稿元:
レビューを見る
経済学者の金子勝と生物学者の児玉龍彦が、「逆システム学」という立場にもとづいて、それぞれの専門分野における要素還元主義的な発想を批判している本です。
金子は、独立した個人に立脚する主流派経済学に対して、児玉は遺伝子決定論に対して、それぞれ批判的な立場に立っています。両者は、いずれの批判対象にも「要素還元主義」的な発想が見いだせると指摘しつつも、他方でそれに対するアンチテーゼとしての全体論もしりぞけます。著者たちの立場は、複雑なシステムの全体をモデル化するのではなく、経済政策や病気の治療といった働きかけによってシステムに生じる影響を観測することで、実践的に問題への対処を図るというものです。
ただ、とくに金子の議論は従来の主流派経済学批判に終始しており、せっかくの看板である「逆システム学」の具体的な展開にたどり着くにはいたっていないような印象を受けてしまいました。