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ヴァージニア・ウルフなんて怖くない?そんなことはあるまい。著者はブルームズベリーグループに属し、フェミニストとしても有名。ウルフの小説は、短編(名前は忘れたが兎の出てくる話)が微妙で読まなかったのだが、再考せねばなるまい。 本作品はまず、第一部が思わず引き込まれる魅力があって一番好き。夫人が強烈な印象を与える。第二部は全体がリリシズムを湛えるといっていいこの作品でも、特に抒情的。その中にも戦争への反感が根強く見受けられる。この部があることで「怒りの葡萄」の構成を考えさせられた。第三部はリリーと灯台行きに夫人への哀悼を感じる。 蓋し、第一部の1を読みきった時は、ここで短編として終わってもよいと思ったくらいに完成度が高く、ジョイスの「ダブリン市民」を想起した。だが、全体の印象としてはよりプルーストを思わせる。意識の流れは無論のこと、風景描写や詩的な雰囲気まで似ていると思った。プロットは前述のスタインベックと共に、福永武彦氏の「風土」が近いと考える。全体に、流麗という言葉がふさわしかろう。
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風のように流れる“意識の流れ”にのって世界を見ると、日々のあいまいさに気づきます。そんぐらい、すごく繊細に精密に文章がつづられてる。
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とにかく描写が繊細。精神描写も情景描写も、繊細すぎて粘着質に感じるくらい。ウルフの言葉へのこだわりを感じるなあ。と言ってもウルフについてはほとんど無知で、精神を病んでいたとか自殺で亡くなっているとか、巻末の解説等を読んで知ったんだけど。
二章の時間経過の表現はすごく好きだ。なんとなくガルシア・マルケスの「百年の孤独」を思い出した。
「われらは滅びぬ、おのおの一人にて」後半から最後まで何度か繰り返されるけど、繰り返されるうちにこの一節が段々胸に響いて切ない気持ちになってくる。
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ツイッターから引用:
2011年01月17日(月) 1 tweets
小説:灯台へ:時間の推移をユニークに捉えている小説って好きだ。時間の経過によって見捨てられた別荘はどんどん崩壊していくけど、そこに人の手が加わることによって再び蘇っていく。別荘が蘇ったとき、全ての自然音がリンケージして「意味を持った音」響き合うシーンが美しい。
posted at 21:58:14
2011年01月18日(火) 1 tweets
小説:灯台へ:慌ただしく読み終えてしまった。本当は各登場人物の意識のパートを細かく区分けして、注意深く読まないといけないんだろうな。ディテールがものすごく詩的に描き込まれていることと、全体の構成と、両方考えつつ読まないと辛い。また機会を見つけて読み返すか…。
posted at 23:49:14
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比喩暗喩が多くてちょっと消化不良気味。
読みづらくてすごく長く感じたし、長い割には自分が何か学んだとも思えない。
「意識の流れ、変化」が評価される作品だと聞いて期待したけど、思ったようなものじゃなかった。
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死によって生を浮かび上がらせるコントラスト。迷いながらも、独立して生きようとするリリーに共感を覚えた。
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読み終わった後、自分がなにを読んだのかよくわからなくなってまた繰り返し読んでしまうような本。
文章の力のせいかどんどん読めてしまう。書いている内容はある意味ほんとうに生々しいのに、どことなく清潔ですらすらと読める。
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何だかところどころ泣きたくなるのはなぜだろうか。
人と人との間に流れる感情のゆらぎだとか、風景と自分との折り合いだとか、荒廃してゆく家のすさまじさだとか。ときどき共感できてしまうからか。
繊細、の評が多いようですが、物事の芯をきちんと捉えて、なるべく、正確に、表現してくれようとしているのだと思わされました。
とくに難しい言葉を使っているわけではないのに、言いまわしが多様で飽きさせない。
読み終わったあとに冒頭を読み返して、ああそうか、そうだったんだと納得。
何年ものあいだ待ちつづけ、一晩の闇と、一日の航海をくぐり抜けて、灯台へ。
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1章読むのにやたら時間がかかったけど、そこからさきはするりと読めた。
つかみかけたと思ったら終わってしまったので、もう一度読み返そう。
あえて言うならバンクス氏に萌えた。
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読み終えるのになかなか時間がかかった。
登場人物の間に張りつめた糸を手繰っていくような感覚。
あるひとりの思考を辿っていると、それがいつの間にか他の人の思考につながっていて…時間の流れにそって漂う意識を言葉によってなぞっていく、不思議な体験だった。
オールドミスのリリーが良妻賢母の権化ともいえるラムジー夫人に抱く複雑な感覚はわかるなぁ、と思いながら読んでいた。ぼんやりとした憧れと、お節介を少し疎ましく思う心と、愛し愛される人を「自分とは違う人種だ」と思いつつも羨む気持ち。
二章の時間の流れの描写がとても好き。
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なんて美しい小説なのだろう。波の満ち引きの様に押しては返す内面の機微、それを優れた知性と洞察力によって掬い取り、繊細に言葉を紡ぐ事によって日常に寄り添う幸福や憂鬱を情景豊かに描き出す。家族と友人たちの一日の風景と瞬く間に過ぎる10年という歳月、そして再び描かれる一日の風景。内面描写の主体を次々と移しながら表象には出てこない感情のひだまで丁寧に描き出すその文章は、雪の結晶の微細な美しさに触れた時の感覚に似ている。だからこそそれはどこか儚く、触れてしまえば粉々になってしまいそうな危うさも感じさせてしまうのだ。
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1927年発表、ヴァージニア・ウルフ著。孤島に住む夫人とその一家、彼らを取り巻く画家ら数人。第一部「窓」:明日灯台へ行くことを思いながら日が暮れ、夕餉の席で頂点に達する各人の心理的緊張を描写する。第二部「時はゆく」:擬人化した風や闇などに視点を据えつつ、それらに家が侵食されて廃墟と化していく過程を描く。第三部「灯台」:十年後、再び家に戻ってきたラムジー氏と子供達がようやく灯台に向かう。
濃密な心理の流れだった。
第一部:主観人物はころころと入れ替わり、特に夫人の存在感が他の登場人物の心理に及ぼす影響を精密に、詩的に、哲学的に描いている。静かな池に石を投げ入れて波紋が広がっていく様を眺めているような印象を受ける。ストーリー自体はほぼ動いていないのだが、微妙な精神の揺れを介して、各人の関係や思想が浮かび上がり、物語に深みを与えている。
第二部:この部が一番面白かった。風の小隊など、自然現象に関するユニークな表現が目を引く。それに比べて、主要人物のストーリーは非常に簡潔に語られている。生き生きとした自然と無機的な人間。全てが朽ちていく、という事実がひしひしと伝わってくる。
第三部:つくづく人の死というものは、肉体としての死だけでなく、心理的な内面の世界(それは他の人の心にも食い込んでいる)をも含むのだと痛感した。そしてようやく灯台に到着したシーンでは深い解放感を覚えた。特別取り立てて言うことのない本小説のストーリーなのだが、たったそれだけの行為に膨大な心理が詰まっているのかと思うと、感慨深いものがある。こうして一旦は灯台に流れ着いた精神の流れは、これからも、永久に、主観人物を変えつつどこかへ流れ続けていくのだろう。
解説によると、本小説は著者自身の両親に対するレクイエムらしい。永久に続く流れに身を委ねること、委ねられると納得できたこと、その穏やかさを著者はきっと感じたことだろう。
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非日常を書く作家は数多くいるが、なんでもない日常を書く作家は少ない。
事実を書いた作品は山ほどあるが、心を書いた作品は少ない。
これはなんでもない日常、その場にいた心を書いた作品。ウルフさんまじ半端ねぇ。
いつもと違う物語を読みたいという方へ。
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わずか400ページに凝縮された10年の歳月、でもその遠隔が確かな重みをもってこちらに伝わるのは構成の妙ゆえか。時の流れの描写が展示品のように端正だった
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ヴァージニア・ウルフというイギリス人女性作家を、わたしはシモーヌ・ド・ボーヴォワールの『第二の性』のなかで知った。ボーヴォワールが引用するウルフの文章に惹かれ、とりあえず図書館ですぐみつけることのできた本書を読みはじめた。
本書の特徴は、小説であって詩のような、あるいは小説でなくて詩でもないような、「前衛的」といえばそれまでなのだが、その新しさにあるように思う。作者自身、「小説(ノヴェル)にかわる新しい名前を考案したい・・・でも何と?エレジー?」と述べている。
たとえば、第一部と最終譚である第三部との間に第二部が時として「嵐のように」過ぎるという構成は、作品にある種の断絶をもたらす。実際、第一部と第三部では趣が180度変わってしまっている。しかし、いくつかの言葉や詩の一節「我らは滅びぬ、おのおの一人にて」がさまざまな人たちの口から、あるいは心から溢れ繰り返されることによって、ひとつの大きなテーマのもとに事象のひとつひとつが繋がって連鎖して、物語が織られていくようである。
水のなかで空を見上げたときのような、ウルフの文章には静かな美しさが宿っている。第一部にある人間の描写、第二部にある風の描写、第三部にある死と美の描写、すべてがわたしの心に甘く鈍い痛みをもたらす。静寂のなかを無秩序に漂う悲しみであったり希望であったり、そういったものを拾い上げ束ねてくれる。
ある批評家は、「時間と死、芸術の永続性についての声明」とこの作品を評価する。さまざまな言葉がひとつの象徴として音をなし、ひとつのハーモニーを成す。ウルフが試みたのは、小説という絵であったり、音楽であったり。芸術そのものなのかもしれない。
ずっと手元におきたい作品である。