紙の本
素晴らしきかな、ジャック・リッチー(カーデュラとターンバックルを除いて)
2007/10/17 09:17
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:APRICOT - この投稿者のレビュー一覧を見る
ジャック・リッチーとの出会いは、小鷹信光編の「詐欺師ミステリー傑作選」。「詐欺師…」の前半は、軽妙洒脱で痛快で、ひねりの効いた話がそろっていて、とにかくおもしろかったが、リッチーの『転職への道』は、着想のスマートさで特に印象に残っている。そのリッチーの短編コレクションである本書が発行されたと知り、小躍りして喜んだ。だが高価なハードカバーなので、図書館に入るまで待とう…と思っているうちに忘れてしまい、今になってやっと読んだ次第。文庫か新書なら即買っただろうに。(以上の文章は、A・H・Z・カーの短編集「誰でもない男の裁判」の書評の前半とほぼ同じだが、実際に同じような事情なので、ご容赦いただきたい。)
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期待に違わず、とてもおもしろかった。読みやすい軽快な文体、気の利いた着想、スマートな切れ味と、手放しに楽しめる。後味が悪い話が全くないのも、作者のセンスの良さを感じさせる。まさに小粋と言うにふさわしい。ジャック・リッチーは最も好きな短編作家の1人になった、と言っても過言ではない。
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だが残念な事に、後半は迷刑事ターンバックルと、超人探偵カーデュラを主人公にしたシリーズ短編が6編も続く。おもしろくない事はないが、ユニークさが際立ちすぎて、切れ味はイマイチ。非シリーズ物に比べると、どうしても見劣りすると感じてしまう。ターンバックル物を1編、カーデュラ物を1~2編に減らして、その分非シリーズ物を増やしてくれたら、まちがいなくもっと高い得点を付けただろう。
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もっと他の作品も読みたい……できたらもう少し廉く文庫かなんかで(笑)
2009/05/09 05:49
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SnakeHole - この投稿者のレビュー一覧を見る
2006年の宝島社「このミステリーがすごい!」海外部門で堂々1位に輝いた,でも実は1983年に亡くなっている米国人作家の短編集。
巻末の解説にもあるように,「マンハント」,「ミステリマガジン」,「EQ」などのミステリ誌に350編を超える短篇小説を発表しているにも関わらず,生前に出版された著書はたった1冊だった。この「クライム・マシン」は2005年に初めて出た邦訳本。以前2冊目の邦訳,「10ドルだって高すぎる」を読んで気に入ったのでこっちも買ったわけ。
その作風をヒトクチで言えば「星新一がミステリを書いた感じ」かな。たとえばあなたがすご腕の殺し屋だとする。ある日男が一人訪ねてきて,あなたが人を殺すのを目撃した,という。目撃者はいなかったはずとあなたは思うが,男の話は実に具体的でその場で見ていたとしか思えない。疑うあなたに男はとんでもないことを言いだす。実はワタシはタイムマシンを持っており,新聞でその事件を知ってからその日その場所にタイムマシンで行ってそれを見たのだ,と。もちろんあなたはそんなヨタを信じやしないが,男が重大な証人であることに変わりはなく……と,これが表題作「クライム・マシン」の導入部である。
かなり昔,吉行淳之介が編集した「奇妙な味の小説ー現代異色小説集」というアンソロジーがあったが,どれ1本採ってもあれに収録されておかしくない出来である。表題作の他,MWA賞受賞作である「エミリーがいない」なども傑作だが,ある特異な事情を持つ私立探偵カーデュラが活躍する連作が実になんとういうかオレのツボである。もっと他の作品も読みたい……できたらもう少し廉く文庫かなんかで(笑)。
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ジャック・リッチー。名前は記憶にありました。SF畑の人だってことも。でも活躍時期が1950年代から80年代だとは知らなかった。そんな前に書かれたとは思えない、いま読んでも充分おもしろい短編集。
17編収められている中で私の一番は題名にもなっている『クライム・マシン』。そんな莫迦な事ありえない、ってところから徐々に徐々にもしかしたらそうなのかも、と思わせてしまう巧みなストーリー展開に脱帽です。
他にも読み終えてニヤッと笑ってしまう話がたくさんあって、どれもこれもオススメ。
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作者のジャック・リッチーは、ほぼ短編のみを350編も書き続けた、短編ミステリ職人だそうで。なんだか『ヒッチコック劇場』を観ているような気になる作品が多いがそれも道理、ヒッチコックマガジンやEQMMなどが主な活躍の場だったらしい。
印象に残ったものを挙げておく。
-)「歳はいくつだ」
余命くばくもない男が、最後にやりたかった事は。。。。重さや暗さを感じさせない痛快編であるが、ラストの悪魔的余韻が曲者。
-)「エミリーがいない」
人間心理の裏を読む対決モノなのだが、仕組まれたどんでん返しが痛快。81年のアメリカ探偵作家協会最優秀短編賞受賞作。
-)「罪のない町」
僅かなとりとめの無い会話から、悪の萌芽を漂わせる、まさに職人芸の逸品。
-)「カーデュラの逆襲」/「カーデュラと鍵の掛かった部屋」
本書に4作収録されている、カーデュラ探偵社シリーズから二作。世界的に有名なあの貴族を捩った、タフネスどころか不死身のオプ、カーデュラの奮闘編。仇敵である民俗学者の末裔に立ち向かうカーデュラのウィットに富んだ作戦が秀逸な「逆襲」。「鍵の掛かった部屋」は、知性とセンスが光る、密室モノ。
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あとちょっとだけど、飽きてきたなー・・・。「このミス一位」ってこんなものなのかなあとか思ってしまった。テンポがよくて楽しく読んでたんだけど、理解できないどんでん返しが出てきて冷めてしまった。おれがバカなだけかな?やっぱ長編のほうが楽しいなあ。
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練り上げられた短編傑作集。350編も書き続けたという〜短編に徹した作家の職人芸を堪能できます。カーデュラ探偵社のシリーズなど、ユーモラスなのが良いですね。にやっと満足げに笑う顔が見えるよう。
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日本オリジナル短篇集。17篇収録。
冒頭の2篇「クライム・マシン」と「ルーレット必勝法」は、騙される側から語られた話なので、主人公たちとともにやられた~と、がっくり。『10ドルだって大金だ』『ダイアルAを回せ』では、そのほとんどだった、欺く方から語られる、してやったりという爽快感が味わえる物語の方が好みといえば好みなのだが。
損して得とれならぬ、黙して得とった「日当22セント」にはニヤリとさせられるし、「殺人哲学者」の得々とした告白の後では、ラストの一言が痛快ですらあるし、飛行機でたまたま隣り合わせた主婦たちの、互いの話をろくに聞かない噛み合わない会話が、ある一つの事実に集約されていくのがお見事!といった感じの「旅は道づれ」等々、どの作品も軽妙洒脱で楽しいことこの上ない。
とくに「エミリーがいない」が楽しい。まんまと騙されたけれど、意外で温かみのあるオチはとても気持ちがいい。
ターンバックルものが2篇、カーデュラものが4篇。
「縛り首の木」は呪われた村を扱った怪奇ものとも読める作品。いつもなら影のないところにも影を作り出すかのようなターンバックルの、常ならぬ無頓着ぶりがかえって可笑しい一篇。
The Crime Machine and Other Stories by Jack Ritchie
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このミス、で大プッシュされてたのを購入したような。
海外のミステリな文体はまだこの頃慣れてなかったけど結構スラスラ読めた。ただゴリゴリな物理トリックでもガチガチなロジカルな展開でもない感じで読後感は薄め。
短編集なので暇つぶしにはちょうど良かった。
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前に読んだ「10ドルだって大金だ」が大変面白かったので
こちらも取り寄せちゃいました。
順番的にはこちらを先に読むとよかったのかな...?
ヘンリー・ターンバックル部長刑事シリーズ、私立探偵カーデュラは
こっちが先なのかしらね?でもやはり面白いっす!!
このシリーズ以外の短編も程よくブラックでシニカルで
小気味良いテンポで超シンプルな骨格が活きる作品ばかりで
思わずニヤリなユーモア満載。
表題作は分かっちゃいる筈の悪党が、まんまと騙される様は
ユーモアを通し越して哀愁さえ感じますねー。
ショート・ショートの様な作品も交えての全17編。
一気読みっっ!!
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これは面白かった!
短編の魅力をここまで知らしめてくれる作品集は珍しいのではないかと思いました。もっともっと読みたいです。
特に「部長刑事」「探偵社」シリーズもは続きものなのでなおさら読んでみたい! 探してみようかな。これはオススメです。
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さすが短編ミステリのスペシャリスト。どの作品も超がつくほどシンプルな骨格ながら、ヒネリの効いたオチに思わずニヤリとさせられる。面白かった。
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ショートストーリーのスペシャリストの素晴らしい作品集。
無駄な部分が無いシンプルな文章。
少しずらす感じが非常に上手い。
収録作「エミリーがいない」
1982 年 アメリカ探偵作家クラブ賞(MWA 賞) 最優秀短編賞受賞作品。
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短編ミステリ集。
特別すばらしいトリックでなくても、
文体とか、設定とかで、面白く読みました。
とんちんかんのヘンリー刑事が、最高。
晶文社ミステリと、ヘンリー刑事ものは、
続けて読んでみよっと。
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短編ミステリーのスペシャリスト★派手なトリックがあるわけではないけれど、ぐっと引き込まれる!!さくさく読めるしめちゃくちゃおもしろい♪
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洒落の効いたミステリ短編集。
ジャック・リッチーという名前に覚えはなかったけれど、MWA最優秀短編賞を受賞したという「エミリーがいないは」既読だった。
しかしそのときに名前が印象に残らなかったのは、あまりにも巧くまとまりすぎていたせいかも。作家の個性を感じられなくて素通りになってしまった様な気がする。
この短編集も巧くまとめられた話が収録されてるのだけれど、やはりオチは想像の範囲を出ないあたりが残念というか勿体無いというか。
それでもどの作品も十分に平均点は超えているし、読んでいて面白いのだけど。
個人的に気に入ったのはカーデュラ探偵モノ。そしてやはり「エミリーがいない」は群を抜いてよくできていると思う。