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北欧の小国でありながら、NOKIAなどの世界企業を輩出するフィンランドが、経済協力開発機構の学習到達度調査で、トップクラスの成績を叩き出したことは記憶に新しい。
本書はフィンランドの小学校で使われている国語の教科書をそのまま翻訳したもの。この教科書の目的は大変明確である。5つの力「発想力」「論理力」「表現力」「批判的思考力」「コミュニケーション力」を身につけさせること。それだけ。指導方針が教師によって大きく変わる日本の国語教科書とは似ても似つかない内容で、まずそのことにカルチャーショックを覚える。とにかく社会に出てからの即戦力となりうる言語技術に特化したカリキュラムなのだ。そして、教科書を読み解くにつれ、森林資源のほかには技術力しか売るものがないフィンランド国家がどのような人材を育成しようとしているのかがクリアに理解できる。
もちろん、日本の国語教科書にも美点はある。日本人は、既存のものを深く理解し、それを発展させることに長けた民族だ。そのためにはまず知識を吸収するための読書力を構築する必要がある。そもそも、日本語という言語そのものが同じ経緯をたどっている。だから、自然にアウトプットよりもインプットに主眼を置いたカリキュラムが組まれることになるのだろう。
しかし、その対極に位置するフィンランドの教科書を理解することによって、今の日本の子どもたちに足りないものが手に取るようにわかる。
日本人がそのまま使えるように、翻訳には工夫を凝らしてあるので、授業に取り入れることも可能だ。ぜひ一度、フィンランド・メソッドを体感していただきたい。