紙の本
「恋」ではなく「忠誠」でした。
2008/12/26 21:33
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kumataro - この投稿者のレビュー一覧を見る
風林火山 井上靖 新潮文庫
桶狭間の合戦で織田信長に敗れた今川家のお話から始まりました。武田信玄と上杉謙信の戦(いくさ)にまつわる物語です。主役は武田方の参謀である山本勘助です。彼の手法は良く言えば「知恵」悪く言えば「計略」です。事実は闇の中であるので、物語は作者の空想であり、かつ活動的な幻想です。なんとも残酷な場面が続きます。相手をだまして殺す。わたしは山本勘助のようなたくらみ上手な人は嫌いです。彼は孤独だったでしょう。彼は剣術の使い手だと思っていましたが、どうもそうではないようです。わたしは最近、自分は思い込みが強い人間だと感じるようになりました。わたしの頭の中には誤解がたくさんあるようです。権力闘争は非情です。怨み(うらみ)が復讐を生んでいきます。古府(山梨県甲府)と諏訪(長野県)が近くという記述がわたしにはピンときませんでした。そのあたりの地理にはうといわたしです。70kmぐらいのようです。徒歩で3日から4日、馬だと1日か2日の距離だと考えました。
勘助は自分の意思でいつでも戦闘組織から抜けられる状況にあったと思う。それでも戦を続けて最後には戦死する道を選んだ理由は何だろう。
女性の力は大きいのか小さいのかよくわかりません。歴史を振り返ってみると卑弥呼、北条正子、西大后など権力者となった女性もいるのですが、大半は男尊女卑で流れてきたように感じます。由布姫はなかなか根性がある人です。日本人の体質として、政略結婚、人質がわりというのは大昔から長く続いてきたのでしょう。ただ、昔も今も亭主元気で留守がいいようです。由布姫は早死にするのだろうか。それから勘助ひとりに頼るのは組織としてどうなのだろうか。勘助63才、由布姫25才、川上弘美著「センセイの鞄」よりも年齢差がある。老いらくの恋か。
合戦場での「引く」という行為がいい。私は「引く」ためには、強い勇気が必要と考えていましたが、戦略上は当然ある手法で、勝っていても「引く」ことがある。「引く」ことは珍しくない手法となっています。やはり交渉ごとは、押したり引いたりを繰り返しながら少しずつ前に進むことがコツです。最強の武田騎馬隊という印象が強かったのですが、そうではなくて脆弱な(ぜいじゃく)面もあったという記述は裏話を聞かされたようでした。
勘助の由布姫への想いは、「恋」ではなく主君への「忠誠」だということがわかりました。
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山本勘助を主人公にすえて武田信玄と戦国の世を描いた物語.天平の甍やおろしや国粋夢漂と違い,歴史をたんたんと描写するでなく,山本勘助自身の思いによって(ほとんど創作と思えるが)歴史を動かして行く様子が良くわかる.勘助が武田信玄とその側室,また勝頼に思いいれをしていく様子がよくわかった.
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2007年のNHK大河ドラマの原作に決まった小説。武田信玄の軍師といわれる山本勘助が主人公。勘助の武田家仕官から第四次川中島の戦いまでを描いている。読みどころは合戦の駆け引きと勘助の信玄側室に寄せる思い。
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武田信玄の軍師山本勘助の話。良くも悪くも淡々としていて、由布姫の心の移り変わりや、信玄の凄さがわかりにくかった。
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勘助と由布姫と晴信(信玄)の心のドラマといった感じ。勘助は個性的でインパクトあって意外とお茶目。由布姫が最強。晴信は余裕たっぷりでかっこよかったです。合戦や史実云々より内面描写が多く、読みやすかった。
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武田の軍師・山本勘助が主である武田信玄が由布姫のみを見てくれるようにと奔走するこじんまりした話。変に大局を書いていないところがよく、大河にするというのはなんか違う・・・と思うが、この原作のことを考えすぎないで見たら楽しめるのかも??文章はまあまあ。
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07年大河ドラマの原作。主人公の山本勘助が嫌な奴なのが新鮮だが、内容、文体とも古めかしさは否めない。
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TVのスタジオパークからおめでとう2007をみていて、ふとこの本を読んでみたくなった。あっというまに読み終える。由布姫、恐るべし!
井上靖の作品でまだ読んでいないものがあるので、また楽しみが増えそうである。
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武田信玄の軍師・山本勘助を主人公に武田家の人々とその家臣、そして数多の合戦と宿命のライバル上杉軍との戦いを描く。合戦でも苦労するが、信玄の女性関係で苦労する姿がいたたまれない。
後半、高坂弾正が美味しい役所な気がする。
最後まで上杉謙信の姿を明確に描かない演出が劇的で素晴らしい。
しかし、読み終わってみると半分くらい由布姫のわがまに振り回される山本勘助みたいな印象の一冊だった。
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2007/1/20読了。
持ってるのは改訂版。
もしかしたら以前に一度読んでるかも知れないな、と思いながらも、全く覚えてなかった。
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武田信玄の歴史など詳しく分からなかった私でも楽しく読めました。会話も多いのでスラスラ読めます。読みやすいし話が長くないので歴史小説初心者の方にもおすすめだと思います。2007年大河ドラマ原作。
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最初にこっち読んだら大河ドラマの方が意味解らんくなったんですけど!
個人的に原作のが好きかも。
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課題みたいな感じで、しかもすごい急いで内容を追ったので、今度は、景色描写とかにも注目して、もっかい読みたいです。
時代小説のおもしろさを知りました。
山本勘助、偉大です。
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戦国時代を舞台にした時代小説ですが、合戦などの描写は少なく逆に心理描写が細やかでとても読み易かったです。魅力的な登場人物が多くて愛着が湧きました。
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大河とは話が始まる時期が違うのですね。戦国モノは血生臭くて苦手なのですが、これは勘助、晴信、由布姫の心理を描いていていてすんなり入っていけました。