紙の本
やさしい時間の凝縮
2006/07/18 15:01
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:紗螺 - この投稿者のレビュー一覧を見る
昔馴染みの友人、千波、牧子、美々の三人の物語—かと思いきや、視点人物は牧子の娘だったり美々の夫だったりする。そのことに、最初は戸惑いを覚えたが、実はそれが物語に深みを与えている。個々の人物の過去や悩みをすくいあげながら、それでも確かに浮かび上がるのは三人の女性の友情というタペストリー。ただしそれは決して押し付けがましくない形で描かれる。そのために視点人物を三人の女性に限っていないのではないかと思う。牧子の娘・さきが牧子に身体検査をするように勧めたことが結果としては千波の病気発覚につながるー、というのも、美々の夫が美々の娘の実の父親でないという問題がクローズアップされるのも、付録などではなく三人の女性の今を描き、同時に過去をたぐっていく役を果たしているのだろう。
何と言ったらいいのだろう。とても綺麗、だけでは表面的な気がする。実際綺麗な物語なのだが。それでは切ない?—それも、少しちがう。そう感じるところもあるけれど。それよりも、むしろ、「あたたかい」。そう、そのあたたかさを感じたくてもう一度本を手に取ってしまう。一読した後どうしても再び本を開きたくなってしまう北村薫のマジックは健在である。
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SFやミステリーでデビューした作家が、メジャーになるとSFやミステリーから離れていくのはいかがなものか、てな文句のひとつも書いてやろうと思ってましたよ、読み終わるまでは。登場人物にあまりにもリアリティがないという批判も否定はしないけど、ここまで切なくて優しい話を書かれてしまったら、素直に「まいりました」という以外ないでしょ。まいりました。
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アナウンサーの千波、作家の牧子、元編集者で写真家の妻となった美々は、高校からの幼なじみ。今では40をこえて、牧子と美々は離婚を経験、それぞれ一人娘を持つ身になっています。そんな3人を中心に、それぞれ章をそれぞれの家族がリレーするように書かれた作品です。
それぞれが自分以外に大切に思う人がいて、その気持ちに涙したくなる作品でした。いい人が出てくるのは北村さんの作品らしいですが、その影で我が侭やどうにもならない気持ちをぶつけたりと言う普通の姿もあったということが、また切なさを感じさせてくれました。
この小説の執筆のきっかけは「月の砂漠をさばさばと」で小学生だった女の子「さきちゃん」が、どうしているかなって気持ちだからそうです。高校生(牧子の娘)になって登場します。そのフレーズが「鯖の味噌煮」を作るときに話にそれとなく出てきます。
月の砂漠を さーばさばと
さばのー 味噌煮が ゆーきました
って(^^;
鯖の味噌缶ならうちでも売っているで、そこのキャッチコピーを使おうかな・・・。
このように、物語の合間に出てくる昔のどうでもいい思い出。ああいうのはどうでもいいような感じで、本当に印象深いものです。
「ひとがた流し」とは、厄払い、災いを紙のひとがたに移して川に流すもので、時には、願い事を書いて流すそうです。
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人が生きていく時、力になるのは何かっていうと<自分が生きてることを、切実に願う誰かが、いるかどうか>だと思う、と作中にある。
去年購入しなかなか読めなかった本だったが「今」この言葉を聞くためだったのだと思った。誰かにとって私がそうありたい、その人の生を切実に願う自分でいたい。
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ミステリーと思って読みはじめました。第一章で違うと気づきましたが。近しい人達が共有した記憶のカケラを思い出してくれるたびに蘇ることができる、それは永遠の命に等しい。小さな日々の積み重ねが生きること。淡々と優しい雰囲気が作者の持ち味とは思いますが、少し物足りない感じがします。
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号泣本かと思ってたけど、そうでもなし。上司と彼の会話でちょい泣けたくらい。病気と対峙する女性の物語なら、白石一文の「私という運命について」がマイNO.1勝ち抜きだな。
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生き生きと毎日を精一杯暮らしている女性たちが、胸をスッと通り抜けていくような気持ちのいい小説だった。連作で、毎回少しずつずれた違う視点で語られていくのも面白いし、やっぱり北村さんはすごい。主人公たちの内面が丁寧に描かれていて、男性が書いたとは思えない。
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・著者らしい和みの物語。それぞれの人物に視点が映っていくのが見事でした。40歳を越えた女性同士の雰囲気が素敵です。・余談ですが、「月の砂漠をさばさばと」の親子が出てるんですね。あのお話、父親が出てこなくて不思議だったんですが謎が解けました。
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第136回直木賞候補にノミネートされた北村薫の最新作。
生きるということと人とのつながりについて考えさせられる。
『月の砂漠をさばさばと』を読んでいればちょっとうれしい。
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テレビ局の女性アナウンサーの悲しい物語。
でも、最後の最後までやさしい旦那さんと小学生以来の友人に恵まれながら命の火を燃やし続けていた。
いいんだけどなあ、悲しい物語はなぁ
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間違いなく、作家北村薫の一つの到達点といえる作品です。;アナウンサーの千波、作家の牧子、元編集者で写真家の妻となった美々は、高校からの幼なじみ。牧子と美々は離婚を経験、それぞれ一人娘を持つ身だ。一方、千波は朝のニュース番組のメインキャスターに抜擢された矢先、不治の病を宣告される。それを契機に、三人それぞれの思いや願い、そして、ささやかな記憶の断片が想い起こされてゆく。「涙」なしには読み終えることのできない北村薫の代表作。
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【アナウンサーの千波、作家の牧子、元編集者で写真家の妻となった美々は、高校からの幼なじみ。牧子と美々は離婚を経験、それぞれ一人娘を持つ身だ。一方、千波は朝のニュース番組のメインキャスターに抜擢された矢先、不治の病を宣告される。それを契機に、三人それぞれの思いや願い、そして、ささやかな記憶の断片が想い起こされてゆく】
学校を卒業し、就職し、結婚し、出産し・・環境が変わっていく度に薄れていく場合が多い女性の友情ですが、ここではどんな事があっても変わらない友情がありました。
女の友情も捨てたもんじゃないですね。
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語り手が入れ替わるので読みにくくて、人物も薄っぺらい感じがしました。
玲と類の道路標識の写真の件は好き。
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アナウンサーの千波、作家の牧子、牧子の娘さき、元編集者で有名な写真家の妻美々、美々の娘玲、夫類、そして最終的に千波の夫となる鴨足屋(いちょうや)。
千波・牧子・美々は高校からの仲良しで40歳代。千波はアナウンサーとして朝の番組のメインアナに抜擢された矢先、不治の病を宣告される。
3人の女性の友情、それぞれの友達間での役割、そして病のことを知っていながら結婚を決断した鴨足屋の存在。
どれもがいい絡みあいになっているけど、私には少し読みにくく、前評判ほど思うものもなく、泣けなかった。
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相変わらず北村さんの書く人々はみな優しい。周囲にこんな考え方をする人たちがいたらいいのに、と思います。あっさりしているようだけれど、深い深い友情でつながっている三人。年齢を重ねても、環境が変わってもこんな友情を持ちたいと思いました。