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紙の本

しずくのリズムを宿した詩集

2009/05/24 16:03

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:wildflower - この投稿者のレビュー一覧を見る

著者のイーダ・ボハッタさん(Ida Bohatta)は
ウィーン生まれ。1992年に惜しくもご逝去されたが
ドイツ語圏で世代を超えて広く愛されている
絵本作家の方なのだという。

この作品を含めて4冊が「イーダ・ボハッタの絵本」と
題されてシリーズで刊行されている。

『雨だれぽとり』というタイトルに添えて
雨だれの化身?のようなこびとたちが3人?4人?
雨だれを天から受けとめるしぐさで
にこやかに微笑んでいる。


この絵本に惹かれたのは
それが雨の日だったからかもしれない
雨の本(それも自然科学でないもの)は
あまり読むことはないけれど
イラストのセンス、題字のセンス
てのひらにちょこんとのっかる絶妙なサイズ
丁寧なつくりの本だなぁと思って読んだ。

童話かな? と思えば
そうではなくて
絵本であり詩集である。

言葉たちは簡潔でリズムが豊か
まるでほんとうに
ぽとん、ぽとり、と落ちていく
しずくのリズムを持っている。

素朴なユーモアとやさしさが
ぎゅっとつまっているのだが
とりわけ
にやっとわらってしまったのがこちら。

<なぐさめ>と題されている。

>「ああ、わたしのふくが きれいすぎる!
>しんまい あまだれは べそをかいた
>「まあ かわいそう!」
>ぬまの あまだれたちは 
>くちぐちにいった
>「だけど しんぱいは いらないわ
>あしたになれば あんたにも
>うつくしいしみが ついているわ」


どうだろう?
含蓄があるなぁと惚れてしまうのだ。

ほかに
<あまだれせんせい><あまだれくんのかさ>も
こどもが話すようなやわらかな感性の台詞が
なかなか好いのだ。

雨がもし人格をもっていたら
こんなふうにおしゃべりするだろうね
そう思えたら
鬱陶しい雨の日だって平気な気がする。
ポケットに1冊忍ばせて出掛けていくのも
いいかもしれない。


梅雨の季節を前に
素敵なたからものを見つけた気がした。

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