紙の本
読んで楽しいとか、タメになるとか、そういったお話では全くありません。ラストに苦い思いを抱く人も、私のように「当然」と肯く人もいる、そういう物語です
2007/03/03 17:31
6人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
多分、今まで何度かこの作家の本を手にする機会はあったのですが、実際に一冊の本として読むのは今回が初めて。何かの選集で読んで感心した記憶があって、それが今回の読書に繋がったはずなのですが、自分のメモを探しても彼の名前が出てきません。フムフム、記憶に障害が・・・
作品は、書き下ろしで、多分、東尋坊をイメージしているんでしょうが、どうしてもアニメに出てくる岩山にしか思えないカバー画を書いているのが、フジモト・ヒデト、そしてソフトカバーの角背本といえばクレストブックを手掛ける新潮社装幀室。
カバー折り返しの文言は
「恋人を弔うため東尋坊に来ていた僕は、強い眩暈に襲われ、そのまま崖下へ落ちてしまった。—はずだった。
ところが、気づけば見慣れた金沢の街中にいる。
不可解な想いを胸に自宅へ戻ると、存在しないはずの「姉」に出迎えられた。
どうやらここは、「僕の産まれなかった世界」らしい。」
ついでに手抜き気味に新潮社のwebには
「懐かしくはない。爽やかでもない。若さとは、かくも冷徹に痛ましい。
二年前に死んだ恋人を弔うため東尋坊に来ていた僕は、バランスを崩して崖から落ちてしまった……はずだった。が、気づけば見慣れた場所にいた。不可解な想いを胸に自宅へ戻ると、存在しないはずの「姉」に出迎えられる。どうやらここは、「僕の産まれなかった世界」らしい。新鋭が容赦ない筆致で描く、等身大の「青春」ミステリ。」
とあります。主人公・ぼくは嵯峨野リョウ高校一年生、二年前に死んだ恋人というかぼくが恋していたというのが中学校の時、同級生だった諏訪ノゾミ。で、東尋坊でノゾミの弔いをしていた時に事故で亡くなったのが兄でした。で、パラレル・ワールドに移ったのが携帯電話の表示によれば2005年12月30日。勿論、舞台は金沢です。
リョウは世界を移動してしまったことを知りませんから、兄の葬儀に駆けつけるために自宅に戻ります。そこで彼を出迎えたのが、二十歳前らしい嵯峨野サキです。で、彼女はリョウのことなど知らないといいますが、彼の言うことを全く信じていないわけではありません。ただし、主人公のほうはといえば、彼女のいうことを全く信じない。
この正確の差が実は重要です。それはともかく、二人は互いの主張の正しさを証明するために互いの家族のことから金沢の町の様子のことなどを比べていきます。そしてノゾミの死が、実際にはどのようなものであったかを知ることになるのですが・・・
苦い結末、とありますが私は当然の幕引きだと思います。それが主人公の性格にあるんですが、ともかく高校一年には思えない不快な言動の持ち主です。しかも、その傍観的な態度。その主人公らしからぬ違和感が、あのラストになる。ふむふむ、絶対にベストセラーにはならないでしょう。読んで楽しい話でもない。
でも問題を投げかける本ではあります。ただし、後半ででてくる推理小説的謎解き部分が必要であったか、と言われると私は否定的。単純に並行世界での自己の存在理由だけで勝負しても良かったかな、って思います。
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恋した少女が2年前に死んだ東尋坊に来ていたリョウは、生まれてくることの無かったリョウの姉が彼の代わりに生きている世界へと飛ばされます。
自分が存在せず、代わりに姉のサキが存在することによって、その世界はリョウの知るものとは少しずつ違ってきています。家族との関係、イチョウの木、そしてリョウの世界では2年前に死んだノゾミ。
二つの世界の差異、それはそこに存在するのが自分であるのか、それともサキであるのか。そこから生まれてきた「違い」を探し出していくうちに徐々に明らかになる"ボトルネック"――それが無ければ物事がスムーズに効率良く流れる、言ってみれば阻害要因。
物語が行き付く先でこのタイトルの"ボトルネック"の意味するものが明らかになった時の、たとえようも無い残酷さ、そしてどこまでも重い最後の1行。
安易に感動を呼び起こす物語では無いけれども、それが故に心にずしりと来る1冊でした。
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あることがきっかけで「自分が生まれてこなかった世界」にとばされた主人公が出会ったのは、死んだはずの姉だった。姉の世界が自分の世界より「正しい」のは自分が「ボトルネック」だったから?米澤らしいプロットの青春小説だが、この結末は許せない。ラストの1行は、あまりに哀しすぎる。よって★二つ。
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読んで非常にヘコんだ。
米澤作品はいつも何かしら「痛さ」を感じさせてくれますが
今回のは中でもぴか一だった…面白かったですけどw
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誰だってそうだが「恥」をかくことを嫌う。感情を押し殺しているせいで、周囲の人間は「恥」をかきっぱなしだ。恥ずかしい行為をしてしまった時、相手にどう思われてるんだろう?と気になる。しかし、相手のリアクションがないと、気持ちがザワつき、二倍「恥」をかいた気分。ズバリ言われた方が、気が楽ってなもん。だから、あなたも恥をかいてね…。余談。
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2006/10/07購入。2006/10/10読了。なんか一時間掛からずに読めた。
米澤穂信の最新作。彼の作は概ね安心して読める(『犬はどこだ』以外)ので、作家買いすることに決めています。今回も、大当たりではなかったですが、佳作でした。
主人公が目が覚めたとき、そこは自分が生まれなかった世界で、存在しないはずの姉が、自分の代わりに17年間を生きていた。じゃあ、世界はどうなってるの?というお話、なんだろうか。
読みつつ、非常に辛かった。これは厳しいお話です。主人公は、これは言ってしまうと身も蓋もないんですが、流行の没個性者、そして出会う女性ははつらつタイプ、周りを幸せにしてしまう女性、そして頭の回転も良い(まあ、「出会う」と言っても姉、なんですが)。そんなありがちなラノベかと思いきや、取り扱ってるのは非常に痛い、自分が世界に存在するせいで、世界はどういう方向に曲がってしまうのか、ということを辛辣に描いている。結構堪えました。
文章自体は好きなラノベ、という感じで、ちょっと捻くれてる以外は概ね良好。いわゆるifものなんですが、展開にもいろいろひねりがきいていて楽しめました。
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僕は、東尋坊の崖下へ落ちた。―はずが、金沢の街中にいる。自宅には存在しない「姉」がいる。自分が存在することって何だろう…。
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こういうオチありなんだ!て、そんなどんでん返しではないのだがこういうパターンでこうくるとは…ただの青春異世界ものに収まらない。
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ラストが重かった。間違い探しの中で、最大の間違いが何だったのか。それを知った時、絶望の淵に立たされる。最後のシーンで、誰かの一押しさえあれば、結論が出る、、そんな時に着信した1通のメール。うっすらと笑ったリョウは、何を思ったのだろう。
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17日初見。
米澤穂信にしては珍しい、文芸的な作品でした。でも良かったー。個人的には『古典部』のほうが好きなんだけど。そういえば『このミステリーがすごい!』に『夏季限定』が入ってたネ。
一つの出来事が『可能』←→『不可能』に別れるって言うのはわかりました。それを綺麗にリョウとサキの特性?とか事件?とを使って書き分けられてた。凄い。
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自分が産まれなかった代わりに嵯峨野家にはサキという女の子が産まれていた、そんな世界に迷い込んでしまった主人公の嵯峨野リョウ。しかもその世界には、リョウの世界では不和の状態であった家族たちが仲睦まじく暮らしている。死んでしまった兄が、好きな女の子が、食堂のお爺さんが生きている。自分という存在が無くサキという存在があるだけで、これほどまでに違う世界が築かれているという事を知ったリョウは、どんなに居た堪れない気持ちだったでしょう。そして好きな女の子についての真実をサキに知らされた時も…。とても痛々しかったです。
何度も読むのを止めようかと思いましたが、何とか最後まで読み進めました。あまりにも絶望的なラスト、救いようの無い物語だとは思います。でも、爽やかで前向きなものばかりが青春小説ではないんですよね。こういう苦しいほど切なくて痛々しいものも(SF的要素は除くとして)、またひとつの青春小説の形であるわけで。そういった現実を教えてもらったような気がします。読んでいる最中は苦しかったけれど、やっぱり読んで良かったと、いまは思っています。
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米澤穂信三冊目。今のとこ、今必要な小説をわかりやすく丁寧に書いている作家、というイメージを持っています。この内容はハッピーエンドにしてはいけないのだ、という辛い選択を見ると、とても意識的に書いているのだなぁ、と思わずにはいられない。でもなんとかして「幸せ」にもっていって欲しかった。
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自然な文体で情景が目に浮かぶような文章です。
本来であれば主人公に魅力のない物語はある意味成立しませんが、この無気力な主人公は最適です。
しかし、最後の最後は、なといえばいいのか。。。。
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米澤作品は女性の話し方が苦手なことが多いのですが、この作品のサキは好きなタイプでした。設定等も好みなのですが、最後がちょっと弱いかな。正直、ラストの一言がいまひとつ理解できなかったので、ちょっと消化不良です。
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07/02/04読了★自分が生まれてこなかった世界を描くという着想が面白いです。最後は釈然としないものがありますが、読者の想像に任せるという意味でよいのかな?