紙の本
多分、酒見が提示している三国志、というか孔明像っていうのは斬新だと思うんです。でも、この文体がそれを示すのに相応しいか?っていうと、多分、足を引っ張っている。ま、女性読者を当てにしてはいないんでしょうが、あまりに御無体な・・・
2007/08/03 17:53
11人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
酒見賢一は好きな部類に入る作家ではありますけれど、飛びつくほどに面白いかといえば疑問なんです。なんていうんですか、『陋巷にあり』で醒めちゃったというのが正しいかな。宮城谷昌光に比べれば、本格的というてんで酒見の仕事のほうを評価はしますが、いかんせん楽しめない。で、今回は迷った末、読まないでおこうかと思っていました。
でも第1部は読んでいるので、気にはなります。その時はこんなことを書いています。
「さて、三国志、困るのだ。私はこの話が好きではないのである。この物語には、戦争に巻き込まれる、国家に振り回される大衆の視点が全く欠如しているからである。それなら、反権力を謳った水滸伝のほうが遥かに面白い。そこには、権力によって踏みにじられる人々の怨嗟の声が確実にある。
まして、私は諸葛孔明が嫌いなのだ。軍師というやつである。頭でっかちで、どこか東大出のエリート官僚を思い起こさせないか?孔明にとって、人民などというものは数に過ぎない。或は、税収の対象か。む、これも現在の愚鈍政治家を連想させないか?せいぜい、三国志で許せるのは宿敵曹操か孫権、或は関羽くらいなものだろう。
とまあ、長い間、三国志=無視の態度を決めてきた私をして、この本に飛びつかせたのは、なんといっても著者である酒見賢一の名前である。あの日本ファンタジーノベル大賞は、結局、『後宮小説』を書いた酒見一人を生んだことで役目を果たした、というのが私の勝手な決め付けだが、その鬼才が孔子を描いた『陋巷に在り』全13巻完結後に書いた小説である。無視するな、というほうが無理だろう。
しかも、そのタイトルが『泣き虫弱虫諸葛孔明』、どこか井上ひさし『しみじみ日本・乃木大将』『頭痛肩こり樋口一葉』『泣き虫なまいき石川啄木』を連想させる。単なる英雄譚にはならないはずだ。だって「泣き虫弱虫」なんだもん。しかも、ちょっとソフトな感じのハードカバーは、筑摩が昔出した「哲学の森」シリーズを思わせて、手に優しい。
何を隠そう、これを担当しているのが装幀界の大御所 菊地信義、現代美術している人を模したであろう、一見漢字風の装画は古内ヨシ、中国のお話には不可欠な三国志地図作成は(有)ジェイマップ、まさに歴史書と感涙の襄陽拡大図作成は関口信介。もう、ここまで用意されれば読むっきゃないでしょ。」
うーむ、困った。ここまでは今回も全く変わらない。変わったのは、関口信介作成の図が長坂坡の戦いのものに変わったことと、初出が「別冊文芸春秋」第二五四号~二六五号になったこと。それから前巻で魅力を振り撒いた孔明夫人の黄さんが登場しないことだろうか。そのかわり関羽のおとこぶりが際立ち、曹操との闘いが本格化します。
でも、この小説ともエッセイともつかない語り口、これが酒見版『三国志』の特徴ではあるんですが、正直、笑えないんです。何ていうか、全てが嘘っぽい。そんなことはないんですよ、酒見の中国史に関する知識は、私の見るところ宮城谷を遙に凌駕します。ともかく深い。でも、それが伝わらない。下手なギャグが足をひっぱるんです。
もう、ここまで書いてしまったから後戻りはできないんでしょうし、このスタイルゆえの独自性は認めざるをえない。でも、喜んでいるのは酒見だけで、読む側は嬉しくない。いつかは水滸伝にも手をつけるんでしょうが、その時は、薀蓄はともかくとして、構成はオーソドックスに、文体と知識で差別化してもいいんじゃないか、そう思います。
ちなみに、今回のお話では魅力的な人物造形は皆無。男だけの小説なんて、読みたくもないやい!
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私は……たとえば物語的な赤壁戦、とかでですね、別に孔明に風とかよんでほしく無いんですよ。ええ、孔明好きなんですけどね、好きなんですけど、だからこそなんか嫌なんだよなというのか……天候の変わり目を知ってて呼ぶフリをするとかもね、含めて。でもね、なんだろう、コレの孔明だったら、自力で風くらい呼べるだろ?風以外の物も呼べるんじゃないの?というかむしろ呼べ!という気持ちになるというか…なんだろう…こんな気持ち始めてだ!(でもそこまで到達するのはまだまだ先そうだぁ)簡潔に言えばそんな感じの小説。
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酒見節全開の第弐部。
あまりに面白く楽しく気がついたら読み終わっていた。
漫画以外はちょっとという方でも読める事間違いなし。
馬鹿馬鹿しい中にも酒見先生らしく鋭く勉強になることが含まれているのがすばらしい。
時事ネタ(ジダンの頭突きとか)を楽しむためにはやはり旬な連載をチェックすべき。
それでも面白くて抱腹絶倒ものだが。
ヒロシマヤクザな呉の連中に萌え(笑)
三国時代がホントにこんなだったらさぞかし楽しかったろうに。
ある意味三国志フリーク必読の書。
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三国志に著者が渾身のツッコミをいれ続けるシリーズ第二弾。これ、他の国の言葉に直すのは難しいでしょうねぇ(「魂のルフラン」ネタとか)。でもぜひ中国人に読んで欲しい、それくらいの力作です。真剣にぶっ続けで読んでたら、頭の疲れている自分に気がつきました(全力の著者につきあうには体力がいります)。三国志の知識はそれほどなくても十分に楽しめます。ぜひ三国志に興味ある人は読んで欲しい。
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大好きな酒見さんの待望の続編。
前作同様のハチャメチャな、史書に基づく新解釈は酒見氏の博識に改めて驚かされます。
張飛・趙雲の殺人マシーンっぷりや、作者のノリツッコミが最高です。
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諸葛孔明が一般にどう思われているかをきちんと認識して読むと面白さがさらに。はやく文庫化して。2×2で4冊は買うから!多分。
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呉の皆さんたちの特殊な自由業っぷりがたまりません。
美周LAWのモテ描写も尋常一様ではなく、今後の展開が益々楽しみ。
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やっぱり酒見賢一は素晴しい!!
これほど歴史小説を楽しく読ませてくれる人はいないであろう。
おちゃらけつつも作者の広範な三国志の知識を活かして読みごたえのある、作品となっている。
三国志好きも、そうでない人にもお勧めできる作品。
一般的には蜀が過大評価されているような印象があるが、酒見賢一の書く蜀はふざけつつもリアリティがあって、妙な説得力がある。
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孔明がやっと劉備軍団に加わったところから。
相変わらず著者の筆がすべるすべる!(笑)
私の大好きな関羽も、ボロクソに言われてます
いや〜〜、でも相変わらず面白い!
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一部は面白くて、あっという間に読了したが、この二部は随分時間がかかってしまった。
三国志のパロディであるが、この二部はパロディの乗りが悪かった。
期待はずれは否めない。
主役の孔明の活躍が今一つだ。
劉備のいい加減ぶりの方がが目立って面白い。
三部がなかなか出て来ないのもそのためか。
次回作があることだけは間違いない。
映画のレッドクリフに先を越されてしまったためか。
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引き続き笑わせていただきました。
だって無意味な所で『魂のルフラン』の歌詞が盛り込まれたりその他もろもろ時事問題なんかも入ってどうしようもなく面白いんですもん!
面白いけど内容が濃くてなかなか読み進められないのが玉に瑕かなーだからこそ読みたくなるのですが。
終盤、張飛がちょっと可哀想に見えたのは孔明マジックだろうか?
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呉が出てくるようなのでとても楽しみ。
いよいよ戦争シーンが増えてくるようだし…
そして、読みました。(2009年3月)
博望ハ〜長坂まで。これまた、すごい面白かったです。
呉の人々が、なんと広島弁ですってよ!
孫堅=“オジキ!” という、任侠物みたくなってます。
孔明はいよいよその才を発揮し、劉備、関羽、張飛の三兄弟のキャラはますます濃くなるばかり。
もうねえ、何度吹いたことか。
簡雍は完璧に下ネタ要因に…簡雍って、実は知らなかったのですが(吉川版に出てたかもしれないけど、完璧スルーしてました)、これでもう忘れられない人物と化しました…
趙雲も大活躍の長坂の戦いがとても長く、詳しく書かれてます。すごい勢いで(笑)
鮮血の貴公子…ねえ。
ここの趙雲はなんだか可愛いです。
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虚人か、巨人か―新たな孔明像を描いて大反響の酒見『三国志』堂々の第弐部発進!本書では、孔明出盧から長坂坡の戦いまでが描かれる。
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三国志はレッドクリフを見ただけで全然わからないので、この本を読んでも深くは読めないのが残念です。ただ、わかる人ならより笑えると思います。孔明の変人?ぶりに劉備のわけのわからないカリスマにぷっと笑ってしまいました。
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長坂の戦いに突入。
三顧の礼を受けて遂に劉備軍団入りした孔明。早速献策するも、のらりくらりと動かない劉備。うだうだやってるうちに袁一族を滅ぼした曹操が荊州目指して攻めてきた!劉備軍風前の灯。どうする孔明。
大本の三國志にオカルト描写が意外と多いらしく、ちょっと驚き。特にアレ、張雲が万軍の中を単騎駆けした挙句、赤い光波を纏ってエヴァ破ラストの初号機みたいになったシーンが創作じゃなくて原文通りって何事だよ。古代中国人の劉備軍補正は異常。