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事故後20年が経過したチェルノブイリ周辺。ほとんどの住民が避難し、無人となった環境では、皮肉にも人がいなくなったおかげで野生動物の生息に適した環境になっていた・・・その膨大な放射性物質の除けば。現地を訪れチェルノブイリ周辺の自然を観察するという面白い視点の本だが、そこから浮かび出てくるのは、この地域が忘れられつつある現実。森の研究はほとんどされておらず、放射性物質が長期的に生態系に及ぼす影響はほとんどわかっていない。また、原発を封じ込めている石棺の老化による再汚染が懸念されているという事実。無鉄砲な原発での稼働実験のツケはかくも長く払わされ続ける。
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人間の立ち入りが宣言されたことで、チェルノブイリの森は野鳥の楽園になり、絶滅危惧種動物の繁殖が可能になっているそうです。
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153pまで
2007.2.25発行
原書 WORMWOOD FOREST:a natural history of Chernobyl
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原発事故から20年後のチェルノブイリ。
「汚染」されて人が住めなくなって「美しい」自然が戻った。
人間がいなくなったらたった数年で絶滅危惧種が繁殖し始めたとかって聞くと、当たり前のことなんだけど馬鹿みたいだ。
人間をどかせば放流なんかより余程やさしく手軽に動植物を守れる。
ていうか原子力発電所は2000年まで稼動してたのか。知らなかった。
全然終わっていない話なんだな。
放射能を甘く見てはいけないということと、触れたら即死するぜとか何でもかんでも奇形になるぜみたいな恐がり方は馬鹿げているってこと。両方を冷静に解説している辺りが好き。
高学歴の人らしい愚か者に対する蔑視の雰囲気が気になる。
ウクライナ系コミュニティは関係が緊密らしい。けどやっぱりそこの住人と「系」は違うと思う。距離感が微妙。
小娘バイカーのHPは日本語でも読める。http://www.geocities.jp/elena_ride/
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ウクライナ系のアメリカ人である著者が、事故のあといてもたってもいられなくなって、仕事を辞め、現地で取材した記録。
チェルノブイリが一大自然保護区となっていて、絶滅が危惧されたモンゴルノウマが移入されて増えているとか。
大方は、目に見える汚染など無いのだけれど、たまに見つかる汚染のひどい場所では、木がひん曲がって生えたりしているらしい。この写真にはかなり驚く。
ヨハネ黙示録八章10-11節にあるニガヨモギの記述
第三の御使い ラッパを吹きしに
灯火のごとく燃える大いなる星
天より落ちきたり 川の
三分の一と水の源水との上に落ちたり
この星の名はニガヨモギという
水の三分の一はニガヨモギとなり
水の苦くなりしによりて
多くの人死にたり
がチェルノブイリ原発事故と関係づけられて当時騒がれたらしいが、実際の植物学はもう少し複雑。
どうもここにあるのはニガヨモギとは違う植物らしい。
チョルノブイリ アルテミシア・ウルガリス
ニガヨモギ(ポリン) アルテミシア・アブシンチウム(つやつやした繊毛あり)
著者はたまたま植物学者と一緒に現地を取材して回ったのでこのことを知った。
他にもいかに作られた話を人々が信じてしまうかという実例が紹介されている。
立ち入り禁止区域をオートバイで旅行して回ったといってホームページで写真を公開して話題になった女性の話。
著者が取材の過程で現地の人に聞いたところでは、旦那さんと二人で(あるいは現地ガイドも含めた団体旅行か)
車で回って所々で写真だけ撮っていったらしい。公開しているのはその時の写真。一杯食わされた、というところだろうか。
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読了:2011/05/01 図書館(調)
事故後のチェルノブイリ周辺の自然についてが主で、放射能と健康や、「ゾーン」に住み続ける住民などの話が所々からまります。文中の放射線量の単位がレントゲンやレムなので、シーベルトに慣れちゃった頭ではぱっとイメージわかず残念。
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事故が起こり、放射能汚染地域に人間が住めなくなると、絶滅と思われていた鳥が高濃度に放射能汚染された水場に、奇跡の繁栄を遂げていた…。
一見すれば楽園。放射能さえなければ。でも、放射能がなければ鳥はいなかっただろう。何という皮肉だろうか。
著者にとって、今の福島はどう映っているだろうか。何年かたつまでは、私も考えないようにするしかない。今の原発論議は、まだまだ二元論で全くつまらない。取り込まれないように気をつけたい。
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チェルノブイリの事故後、閉鎖された土地がどうなったのか、
現地を見たようすが書かれています。
今の福島の状況を考え合わせると、
とても興味深い内容です。
チェルノブイリは「死の大地」になったか?
なんの生命も存在できない場所になったか?
答えはNOだった
人間が変えた自然が、人間がいなくなったことで、
元の姿に戻っていったと言うのです。
放射能で汚染されているけれど、
その地に適応した植物や動物(絶滅危惧種なども)が繁殖している
死んだような場所にはならないというのです。
人間が森を切り開いて作った平地は 森に戻り
干拓した沼は 沼に戻る
内容的には本当にインパクトがあります
(ただ・・ 翻訳がね、ちょっと読みにくいのが残念
原文で読みたいです)
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放射能汚染された大地-草も木も生えない生物の住めないイメージを覆す現実。
『アレクセイと泉』を観た時にも思ったけど、
本当に大地を汚染するのは、核…?人間…?どっち?
緑豊かな汚染地域は人間以外の生物にとってのユートピアになっている。
それが現実。
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「第三の天使がラッパを吹いた。すると、松明のように燃えている大きな星が、天から落ちて来て、川という川の三分の一と。その水源の上に落ちた。
この星の名前は「苦よもぎ」といい、水の三分の一が苦よもぎのように苦くなって、そのために多くの人が死んだ。」
ウクライナ語のチョルノブイリは苦よもぎと言う意味だとしばしば言われチェルノブイリの原発事故はヨハネの黙示録に重ねられて来た。実際のところではチョルノブイリは正確には苦よもぎに似た別の草なのだが。そして事故後20年のチェルノブイリでは放射性物質に汚染されながら、絶滅危惧種の数が増え野生動物に取っては魅力的なすみかになっている。2000年に行われた調査ではウクライナ側に生息するほ乳動物は66種で事故以前には姿を消していたビーバーが1500匹に増えていたほかキツネ、タヌキ、ヘラジカ、アカシカ、イノシシ、ヒグマ、オオカミ、オオヤマネコ、オジロワシ・・・そして、絶滅危惧種の野生のモウコノウマが放牧され繁殖している。
放射線が動物達に与えた影響は大きい。例えば最も汚染が濃縮する有機堆積物(腐葉土と考えれば良い)中のコガネムシの幼虫は数を減らし、通常は一度に7匹の子供を産む野生のネズミは平均4匹しか産まなくなり繁殖に影響があることを示している。わずかながら奇形のクワガタやアルピノのツバメなども見つかった。それでも事故直後の1987〜88年にハツカネズミと野ネズミの数は1ヘクタールあたり20〜30匹から2500匹に膨れ上がり、ついでキツネやイタチと猛禽類が数を増やした。88年の秋には食料を食べ尽くしたネズミが大量に餓死し、腐食動物が数を増やす。そして30kmゾーン内は高放射線量の下、均衡を取り戻した。
植物の方も最も汚染のひどい「赤い森」では枝がねじれたりあらぬ方を向いて芽を出した松の木がある。名前の由来は86年に木が枯れる前に真っ赤に染まったからだ。セシウムは泥炭のために賛成になっている湿地帯では水に溶けやすく水苔に取り込まれ、ストロンチウムは土壌中では固定されずいろんな植物の根から吸収されていく。時間が経つとともに地表からは減り、水中の澱や腐葉土の中にたまっていくが亡くなるわけではない。湿原が氾濫したり、逆に水がなくなり乾燥して泥炭が火災を起こしたりすると再びばらまかれる。地下水も浅い帯水層は汚染されてしまっている。
ゾーンで見られる野生生物は一般に健康的でこれは直感には反するかも知れないが恐らくこういうことだ。放射線の影響で弱った個体は淘汰され姿を現さない。逆に人の手の入らない「自然」は例え汚染されていても人間が多すぎるのよりも住みやすい環境なのだろう。例えば水田の様な環境を好むコウノトリは逆に捨てられた村からは姿を消していく。そう言うことも含めて「ゾーンのあらゆる食物連鎖の環にしのびこんだ放射線核種は、ゾーンの不自然に自然な要素になってしまった。放射能に汚染されたチェルノブイリのニガヨモギの森では、人工物が自然の不可欠な要素になっているのだ」と言える。
福島とチェルノブイリの比較で言えば事故が起こった際に炉心に蓄えられていた放射性核種の総量は福島が多いが、環境中への放出割合は黒煙火��を起こしたチェルノブイリの方が多い。いずれも長期的に最も量の多い放射線核種はセシウム137とストロンチウム90で、線量計で測られている放射線はセシウム137が大元のγ線のようだ。ストロンチウムの方はβ線(電子線)を出すがこちらを計るのは困難で、カルシウムに似ているため骨にたまりやすい。例えば歯を1本抜いて調べれば汚染の程度がわかるとは言え実施は難しいだろう。チェルノブイリについては既に湿地帯に広くばらまかれてしまった放射線核種をどうやってその場に閉じ込めるかというのが大きな課題なのだが、予算は削られ先行きには不安が残っている。
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チェルノブイリ原発事故から30年(この本が書かれた時点で20年)。町が消え、人の立ち入りが禁止された広大な「ゾーン」で森が復活していた・・・という本だと思ったら、まあそういう話も出てくるが、ゾーンの現状やそこに住んでいる人たち、時々戻ってくるひとたちのことが、あまりとりとめもなく語られている。事故そのものの話はあまり出てこないし、森の状況についてもシカがいた、狼を見た、馬が・・・と目撃談が語られるだけなので、全体像が掴めない。住んでいる人たちについてもご飯を御馳走になってこんな話をした、というレベル。どの方面にもつっこみが足らず、けっこうボリュームのある本を読み通すモチベーションが維持するのが大変だった。別の本を読んでみようかな。
それにしても、チェルノブイリ級の事故が日本で起きるなんて、誰も想像していなかっただろうな。
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原発事故後のチェルノブイリ近隣の人々や、周辺の森林地帯の様子が丁寧に取材されています。
実のところ地球環境にとっては、放射能なんぞよりも人間そのものの方が遙かに凶悪な存在なのではないか?
・・・以前からそのように薄々感じておりましたが、そうした予感を裏付ける「不都合な」事実がたっぷりと書かれていました。
本著が書かれてから既に十年が経過しましたが、現在のチェルノブイリに関するレポートを読んでも、やはりその事実に変わりは無いように思われます。
しかしながら著者はあくまで楽天的です。いつかエネルギー問題の解決の端緒が開かれるであろうと述べて本著を締めくくっています。そうなる事を切に願うのみです。
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事故後20年が経過したチェルノブイリは、今もなお高度の放射性物質で汚染されているが、人がいなくなったおかげで多様な野生生物が反映し、また、放射線を気にせず住み続ける人々もいる。
汚染物質がなくなるまでの期間は気が遠くなるほど長く、文明は責任をもってそれを管理できない。しかし、野生生物は気にしない。