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著者の旧著である『戦後沖縄の思想像』から1章、2章、5章を1、2、3として納めたものです。「沖縄I 占領下を生きる」と題されていて、それぞれの表題は次のようになっています。
I キーストーンの刻印
1.「沖縄」と「琉球」のはざまで
II 憤怒と凝視
2.「否」(ノン)の文学ー『琉大文学』の航跡』
3. 異化・同化・自立ー大城立裕の文学と思想
1は、米軍(米国)による占領前の研究と、その成果としての占領当初の占領政策をめぐる動きについて論じています。2、3では文学や評論を読み解くことで、沖縄びとの戦いを描いています。
3は、沖縄で初めて芥川賞を受賞した大城立裕氏の作品を通して、氏の思想の変遷と沖縄の置かれている状況について論じますが、大城立裕氏の作品を読みたいと思いました。『小説琉球処分』、『恩讐の日本』、『まぼろしの祖国』で、沖縄の近代史を復習したいと思います。これまで読んできた沖縄の「歴史」は通り一遍のものだったような気がするからです。ただ、氏の著書の多くは今では絶版であるようです。再刊を望みます。
この著者にはいつも教えられます。この集成の1、2でもそうですが、その研究の基礎には、理不尽な抑圧の下に置かれている人々への温かい視線があるのですね。