紙の本
柏餅の葉っぱ
2019/09/16 20:21
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る
お皿に載せるものは全て食べられるもの、ということで、著者が取り忘れた柏餅の葉っぱを口にされてしまう・・・女官から話しかけてはいけないので止められない、ということも驚きでした。また最初に入社したホテルの先輩にも驚き。火や包丁を使う以上、厳しいのは仕方ないとは思いますが、わざと指を切り落とすとは。あまりにも理不尽な仕打ちに敢然と立ち向かった姿勢が良かったです。
紙の本
類書の少ない、貴重な本
2009/11/26 13:49
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mikimaru - この投稿者のレビュー一覧を見る
数年間のホテル勤務を経て、宮中の料理人となった著者。ある程度の料理なら作れるくらいの意気込みではいった世界「大膳」(だいぜん:皇室における食事全般を担当する部署)だったが、そこは何もかもが違う、一からすべての常識を学びとらねばならない場所だった。
冒頭でまずは(昭和天皇時代における)大膳でのとまどいと驚きをつづり、日常や行事にからんだ宮中の食事を語ったあとで、幼少期から宮内庁にはいるまでの自身のいきさつ、そして(現)皇太子ご夫妻との思い出へとすすむ。
盛りつけの配慮が足らなかったため、柏餅の皮を食べられるものと勘違いされた昭和天皇と、パンのトーストは自分でしますとおっしゃった独身時代の(現)皇太子。入庁から退職まで三十年にも満たない時間の流れの中で、皇室は大きく変わっていったということだろう。
96年に宮内庁を退職している著者だが、メニューの考案担当や人員配置などでも、だいぶ変化があったようだと記載している。今後も皇室は変わっていくことだろうが、このようにわかりやすく、とっつきやすいテーマで皇室を語ってくれる本を手にする機会があまりないのが残念。
大まかな内容は
++++++++++
第一章:大膳の流儀
第二章:日常のお召し上がりもの
第三章:天皇家の三が日
第四章:天皇の料理番への道
第五章:大膳の人々
第六章:皇太子殿下の思い出
++++++++++
となっている。
皇室や国賓などの食の安全をになう場所であるから、多少のことは仕方ないのかもしれないが、入庁したてのころ、芋のむき方がなっていないから、人参の切り方に乱れたものがあるからと、すべてゴミ箱に入れられたなどの話には胸が痛んだ。
間違いのあった場所だけ取り除けばいい、という理屈ではなく、失敗があったら全体として不完全なのだから認められないということのようだが、これは著者が入庁したばかりの時代(1970年代)でなく、現在でもそうなのだろうか。とても納得がいかない。
芸術や職人技のためには無駄や贅沢はあたりまえという考えもあるかもしれないが、食べ物を粗末にすることだけは、何よりまして戒めねばならぬことだろう。
本の後半でも、先輩職員に腕の悪い人がいた場合、とても本人にやり直せとはいえないからそれを捨てて自分が作り直した経験があった、などという記述がある一方で、昭和天皇時代にはとても多かった各地からの献上品などを、皇室の食事ではさばききれずに職員らが「しかし絶対残してはいけない、捨ててはいけないというのが大膳の掟ですから(P.79)」、時間の経ったキャビアをカナッペや丼もののようにして連日食べたというような、やや矛盾する表現もあった。
国賓でも見えている場合でなければ、形がどうのという程度のことは、まかないで食べてくださいとしか言いようがない。現在では違うことを祈るのみだ。
なかなか知ることができない皇室の方々のエピソードが、長年その場にいた人の言葉で語られていて、全体的には楽しく読めたし、著者の幼少時のことやご家族の話、ムッシュ村上こと村上信夫さんへの憧れなど、中身の濃いエッセイ。
投稿元:
レビューを見る
メニューは、とりわけ豪華!といった風ではないけれど
手間隙が恐ろしくかかっている。
グリンピースの皮、剥いちゃうんだ・・・
気が遠くなりそう。
だけど、ダイレクトにしかも特定の人に喜んでもらえる
仕事って羨ましいです。
麺麭ってパンの事だったんだ。と目からウロコ。
投稿元:
レビューを見る
わたしは食エッセイが好きだ。
そして、皇室も好きだ。
なので、この本は素晴らしく好きだ。
意外に質素で素朴な陛下の食生活が忍ばれます。
結構泣ける……陛下ー!
つまり、陛下が好きなんですよねえ。
投稿元:
レビューを見る
大膳だった作者の思い出話。
宮中のあれこれや料理人としての云々は面白かったけど、タイトルほどは昭和天皇のエピが出てこなかった印象。
なんかまあ、いろいろ思うところあったんだろうなという読後感でした。
投稿元:
レビューを見る
間違いなく、私の方が贅沢してる!
長く宮内庁勤めをしている人たちからみても
昭和天皇はカリスマ性があったんですね、しかも優しい。
微笑ましいと思えるエピソードもあって、よかったです。
投稿元:
レビューを見る
仕える人と自分の道を、まっすぐ堂々と晴れやかに誇る職人の姿! エッセイはなんでも好きだけど、別の意味でも感動。大林監督によるあとがきも涙。
投稿元:
レビューを見る
おいしいもののことを書いた本が読みたいと思い立って図書館で借りたうちの1冊がこちらでした。皇室の皆様も人間なのだから、お食事も召し上がるのは当然。だけどどんなものがお好きかなんて、私たちには分かりませんよね。表紙には美味しそうなお料理が…こんなのがお好きなのかしら?
小さな子供の頃、私の憧れは皇太子殿下で、柔和なお話のされ方や、飾らないご様子に惹かれて、歳から言えば釣り合わないどころではないのに。「あんなひとが旦那様だったらいいな。お兄ちゃんでもいいな。」
なんて言って、母に
「おバカさんねぇ。とっても偉い方なのよ。それにもう綺麗なお妃様がおいでになるの。残念ね。」
って笑われた私ですから。好奇心もあって読んでみたのです。そうしたら・・・。昭和天皇や今上陛下・皇太子殿下ご夫妻の、食にまつわるお話だけでなく、宮中の食文化や、日本のフランス料理の草創期を拓いてこられた、一流の方々の心意気までが語られていて、とっても興味深かったです。
そんなに贅沢なものばかりを召し上がられるわけじゃなくおそばがお好きだったという昭和天皇。お手ずからパンを用意なさるという皇太子殿下。華美なことで尊敬を表されるのじゃなくて、妥協のない最高のコンディションのものを提供することでお仕えする大善のスタッフの方々の気概。努力してきた方だけがもつ、どっしりとしたぬくもりがある文章でした。
やっぱり皇室の方々がおいでになるということは、ひとつの宝であって、変なナショナリズムじゃなくて善い存在と感じたし、私たちに敬愛の情というものを教えてくださるんだなって親愛の情を持ちました。皆様が、お仕えする方々に、感謝や優しさでお応えになっている。そのことが、何か私たちの国民性の良いところを端的に表している気がするんです。
私たちの国は、食文化が豊かで、いろんな国のお食事が豊富に頂けます。お店に行けば誰もが、一流のお味を楽しむことができます。最近お正月に見る「菱葩餅」だって川端道喜さんが宮中にお納めしていたお正月の御祝のお菓子ですが、今なら私たちだって頂くことが出来るようになりました。
でも、お食事って食べるだけじゃないんですよね。私たち自身も、お料理を理解できる感性とか作ってくださってありがとうって気持ちがあるか。食べ散らかさないで、吟味されたものに敬意が払えるか。
そんなことも大事なんですよね。
渡辺さんのご本の文章は、わかりやすくて親身です。読む人に対して、背筋が伸びてて、端正です。ちゃんとテーブルに迎えたお客様として、心は寄り添いながら、身は私たちに礼を尽くしている。そんな文章でした。
読み手を尊敬する書きようが、そのまま天皇ご一家への深い尊崇と愛情につながっていて素敵です。それにしても、昭和天皇がいちごのジャムサンドが好物でいらしたなんて、なんてチャーミングな!おひげを生やした細身の昭和天皇が、そんな可愛いものをお好みだったなんて。
読んでてクスッとなっちゃいました。
投稿元:
レビューを見る
この本、凄く面白かった。
天皇陛下様のお食事の裏がどうなっているのか、なんて全然知らなかったから、凄い興味深かった。そして筆者の若い頃の失敗談が面白い。庶民の私にはわからない世界。
柏餅の葉っぱごと陛下が食べてしまう、昭和天皇はサンドウィッチが好きだった、天皇家専用の牧場があって、外国要人が来るスケジュールにあわせて羊が出産される、女官は天皇陛下に聞かれるまで直刀してはいけない、など小話が面白い。
投稿元:
レビューを見る
渡辺誠「殿下の料理番」「昭和天皇のお食事」を読み返し。
工藤極「陛下、お味はいかがでしょう。」初読。
工藤極は渡辺誠の後輩に当たるようで、ノンフィクションはこういうことがあるから面白いなと思う。「麺麭(めんぽう/パンのこと)持ってこい」と言われて麺棒を手渡すのはルーキーあるあるらしく、どちらの著作にも自身のエピソードとして描かれていた。
宮内庁に26年勤務していた渡辺誠を先に読んだため、工藤極の本の終盤で「約5年の奉職」と書かれていたのに「短っ!」という感想を持ってしまった。
料理人は転職多いみたいだからこちらが普通なのかしら。
投稿元:
レビューを見る
面白い本でした。
天皇の料理人として活躍された方の手記。
自慢話ではなく、素朴な目で宮中を見て感じたことを素直な気持ちでお書きになったという印象で、大変読みやすかったです。
でも、読んでて、天皇陛下ってお仕事は、国民のために心を砕き続けることなんだなぁと感じたのでした。
投稿元:
レビューを見る
昭和天皇に仕えてお食事を作りつづけた渡辺誠さんの著書。他の著書ではあまり触れられていない、ご本人の経歴に関する内容もあり興味深い。大膳の料理人は、皇室の方々にお仕えしているのだという意識がほんとうに強いのだなと感じる。
修行時代はつらいことがたくさんあったはずだが、それも渡辺さんが語ると昔懐かしい大切な思い出のひとつのように聞こえる。彼の人柄のなせるわざなのだろうな。
投稿元:
レビューを見る
衛生管理が凄いし、料理に関する要求技術レベルが非常に高い。天皇の料理番ってこんなに大変なのか……と思った。意外に庶民的な献立が多いのにはびっくりしました。
投稿元:
レビューを見る
皇室の食事風景を宮中「大膳」の料理人が記した話。
予想通りと言えばその通りの厳しい仕込み風景から、昭和天皇や皇太子殿下のお人柄、大膳の料理人の豪胆なエピソードとバラエティに富んでいて面白かったです。
レシピでも真似してみようかと思ったけど載ってないし食材の無駄を考えたら普通できない感じでした。でも、献立は載っていたので探せば作れるかも。
なお、最後の大林宣彦さんの解説的な文章があたたかくて、心に沁みました。
投稿元:
レビューを見る
20171201読了
2009年出版。天皇家のお食事風景がたいへん興味深かった。高級なものではなくむしろ質素な内容。たくさんのスタッフによって支えられていること。晩年の秋山徳蔵さんの下で新人として経験を積んだ話。著者が料理番になるまでの修行の過程は凄まじかった。●巻末の解説にかえて は、親友の大林宣彦。50代半ばで急逝した著者との思い出。昭和天皇崩御後の2~3か月で、著者の髪の毛が真っ白になったというエピソード。●P91 はなびら餅のルーツである菱葩。白い丸餅を火で炙り、小豆で色を染めた菱形の餅を重ね、甘味噌と砂糖で味付けしたごぼうを入れて二つ折りにし、二枚の白い美濃紙ではさんだもの。丸餅は直径四寸八分(18.24cm)、厚さ二分(0.76cm)というのが意外に大きく感じる。このとき一緒に召し上がる雉子酒(宮中のお祝いごとに欠かせないもの)は、塩漬けにした雉の胸肉を焼いて短冊型の薄切りにしたものを炙り、熱々の日本酒を注いだもの。肉はかなり塩辛いので、和らげるために甘口タイプのお酒を使う。これは元旦の朝の儀式「御祝先付」の本膳・二の膳の前に召し上がるもので、菱葩を2つ→雉子酒→菱葩2つ→雉子酒、とお出しする。菱葩の濃密な甘さを雉子酒の塩辛さでバランスをとる。