紙の本
エネルギッシュな高度成長期の創業者
2018/05/27 23:01
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投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書はすべてモデル、登場人物が実名で登場する。会社は日本触媒化学工業、現日本触媒である。化学工業会社である。わが国の化学メーカーは企業規模が欧米威企業に比べてかなり弱小で、規模において勝負にならない点が問題であると昔どこかで聞いたことがある。
化学工業とは縁がなく、この会社も知らなかったが、自力で三井、三菱、住友などの財閥系企業に伍してここまで発展させた点は見事というしかない。本書にはなぜそこまで成長してきたかが、詳細に描かれている。同じ企業に働いてきたものとしてはここまでの頑張りはなかなかできるものではなかろう。
広島出身という同郷の名士たちとの邂逅、またその邂逅を自分の意志で作り上げるという点で他には真似ができない点であろう。本書は主人公の八谷泰造を描くことでスペースが尽き、悪役が全く出てこない珍しい小説でもある。そういう点では八谷氏の伝記を淡々と述べているような気がする。
財界の有力者に直談判で説得に当たる点、その際に工学博士の称号をうまく利用する才も見逃せない。ただし、最後に心臓に問題があり、入院を勧められているにも関わらず、入院せずに仕事を続ける姿勢は今ではやや問題である。これでは早晩寿命が尽きるのではないかと読者の誰もが予想する。実際のその通りになるのは今では考えられない。
これが戦後すぐの企業創造だから今とは時代が違うとして捨て去るのは正当な評価ができない証左と言えよう。八谷氏の奮戦ぶりを本書から会得して、自分の仕事に生かすことは時代に関係なく十分できることであろうと思う。
紙の本
高度経済成長時代のレガシー
2017/05/25 18:02
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投稿者:バンちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
現代と時代背景が全く異なる高度経済成長期の企業及び経営者の伝記的な小説。激烈を極める主人公の働きぶりに共感は生まれないけれど、大きな事業を成功に導くためにはこのような生き方しかできない時代だったのかと感じる。女性は家庭で良妻賢母に徹し、男は健康をも省みず仕事のみ。今の社会の趨勢と比較すると正に隔世の感あり。現存する会社のことだけに現役の方々の働きぶりと比較してみたいものです。
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日本触媒工業の経営者八谷泰三の話。富士製鉄の永野重雄に電車で直談判し、1,000万円の出資を取り付け、会社の危機を乗り切る。その後は、旧満鉄の技術者を大量に受け容れ、ヒトとチエを補強。日本開発銀行に通い詰め、最後発かつ非財閥でありながら、川崎の新規コンビナートに進出する。石油化学を自前技術で、という挑戦心に心を打たれる。技術志向でありながらも、とことんヒトと付き合う八谷の姿勢が良い。
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内定先の企業から読書感想文の課題を与えられた一冊。
八谷と言う今の日本触媒の創業社長のお話です。
とにかく熱い!面識のない人に列車内で突っ込んで融資をもらうなんてできないでしょ!
そこらへんの熱さが炎と言う言葉につながっているんだろうな。
後半は人間味溢れるストーリーでした。
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戦時中の大阪で小さな町工場を興した八谷奏造。
財界重鎮の永野重雄を口説いたり、旧満鉄技術者をスカウトするなど、持ち前の大胆さと粘り腰の八谷は、難題を乗り終え、会社を発展させ、ついには世界的な石油化学工業会社『日本触媒』を築きあげた。
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現・日本触媒の創業者 八谷泰造さんを描いたリアル小説
戦時中の町工場から世界的な石油化学工業へと大きく変化していく様を八谷とともに描いた本書は日本経済の復興を一企業の視点から見るという観点からも面白い。
そして、当時石油化学の最先端を行くアメリカからの技術導入ではなく自社技術、国内技術にこだわりぬいた八谷の技術力、経営力が本日の日本の繁栄に大きく貢献したことが窺える。(八谷さんは工学博士でもある)
常に資金繰りに苦しんでいるところもリアルだ。いわゆる成功者の話ではなく泥にまみれにまみれた話だ。
社長室で発作を起こして亡くなるまで働き続けるという壮絶な人生を歩まれたことが端々から伝わってきます。
無水フタール酸、エチレンオキサイド7の工業化といった技術系の会社の話なので、経営だけでなく技術に興味のある人にも楽しめると思います。
読んだら日本触媒に興味を持たずにはいられなくなるでしょう。
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国産技術の開発と向上につくした日本触媒の創設者・八谷泰三。財閥系企業でもなければ、東京では名の知れぬ企業が、海外へまで技術を売るほどまでに牽引した実在人物。その先見の目と、情熱、そして細やかな気遣いで周囲を引き付ける人柄がよく出ていた。
ただ、糖尿病を患ってからの内容も失速気味。
章のタイトルが四字熟語になっているように、作品内の四字熟語にも目が留まった。
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日本触媒の創始者を主人公にした経済小説。
ピンチを乗り越えるためにははったりも辞さない、良くも悪くも昔の経営者。
旧満鉄の職員を引っ張ってくるあたりは強引過ぎて、現代ではコンプライアンス的にどうかと思う。
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実在の経営者を題材にした経済小説。経営者としてのセンスもさることながら、人間性、情熱、人情、気配り、徹底力等々、枚挙に暇がない程見習うべき点が垣間見えた書。最後を迎えるシーンでは、涙なしでは進めない。良書。
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大阪に実在する企業「日本触媒」の創業者・八谷泰造の生涯を描くノンフィクション小説。全て実名。舞台が戦後間もない頃なので、「海賊と呼ばれた男」と少しかぶる。経営者魂、リーダーシップ、行動力、すごいなあ・・・仕事に活かしたいなあ・・・と思うけど、激しすぎてやることを創造できない。現代にはなじまない。けど、今の日本があるのは戦後のこういう人たちの努力があったからだよなあ。
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とても熱い経営者。人間味があり繊細でリーダーシップがある。最後は、もう少し体を気にして仕事をしたら良かったのではないかと悔やまれる。
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一生の仕事として、工業の指導や社業の経営には、きびしすぎる程のものがあった。しかし心の底では、いつも気をつかっているやさしい人。人としても心から尊敬できる経営者。
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経営者のマインド、熱意とは?
こうあるべきだよな、というものが確信に変わったような本。
今も昔も変わらない、大事なことがある。
情熱、人情、夢、プライド。
人の心を突き動かすもの。
こんなにも熱い経営者がいて、
死に際には、この想いをなんとか受け継ぎますと誓ったのに、
数十年経つと、その誇りが失われていくのはとても悲しいこと。
どのようにすればその想いを途絶えさせず継続することができるのか?
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自身の信念を会社経営を通じて具現化していくための
マインド、他者への働きかけ、立ち回りが熱く書かれている。
出来たものに乗っかる傾向の強い現代日本の化学企業ではほぼ見かけることの無い要素が強く忘れかけたものに気付かされる。