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西田幾多郎の思索世界 純粋経験から世界認識へ

西田幾多郎の思索世界 純粋経験から世界認識へ みんなのレビュー

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2011/07/30 00:09

投稿元:ブクログ

著者がこれまでに発表した西田幾多郎の思想についての論文を、10編収録している。西田が西洋の哲学をどのように理解し、どのようにみずからの哲学の内に取り入れていったのかということをていねいに読み解くことで、その思想の独自性を浮かび上がらせている。

第2章では、『自覚における直観と反省』やその前後の時期に、西田がディルタイやK・フィードラーの芸術論をどのように咀嚼したのかをたどり、それらの思想の取り込むことで西田が自身の「自覚」の立場をより具体的なものへと改変していったことが論じられている。また、第3章では「場所」の思想を確立しつつあった西田が、アリストテレスやスコトゥス・エリウゲナ、プロティノスらの思想からどのような影響を受けたのかが、くわしく論じられている。第7章では、マルクス主義からの影響とそれに対する西田の批判の検討を通じて、西田が後期思想の中心概念である「行為的直観」という考えを形成するプロセスが解き明かされている。

一方、西田と他の西洋の哲学者の思想との比較もおこなわれている。第5章では、M・ブーバーやレヴィナスの他者論と、論文「私と汝」に見られる西田の他者論を比較し、それぞれの特徴が整理されている。第6章では、西田のヘーゲル受容とヘーゲル批判の検討を通じて、両者の「弁証法」の性格の違いが明らかにされている。

本書に収められている論文は、地道な哲学史研究のスタイルで書かれたものが多いものの、第4章では著者自身による西田の思想の継承・発展の一端が見られる。そこで著者は、西田の「場所」の思想が時枝誠記の言語論ときわめて近い発想を含んでいたことを論じている。時枝は、文が〈詞〉と〈辞〉によって構成されていると考えた。〈詞〉は、具体的な事象を概念化したものであり、名詞・動詞・形容詞・副詞などだ。他方〈辞〉は、概念化の過程を経ていない、話者の勘定や判断を伝える語であり、接続詞・感動詞・助動詞・助詞などである。時枝の言語論には、〈詞〉が〈辞〉によって包まれることで、話者の感情の内で事態が捉えられるという日本語の特徴がよく示されている。また時枝は、言語主体が表現したり理解したりする行為を通して言語が成立するという「言語過程説」を唱えていた。著者はこうした発想が、意識を「場所」として捉えなおし、「場所」に包まれることによって対象が存立するという西田の思想と深く響きあうと論じている。

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