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生物の中で唯一、言葉という奇妙な道具を手にしてしまった人間は、それ故に独自な進化を遂げた。時間を知り、神の存在を意識し、芸術を生み出し、自らを滅ぼす武器を作った。言葉を操ることによって生物界の頂点に立ったはずが、頂点の先にあったのは滅亡だった。この矛盾を生きているとしたら、人間とはなんと可哀想で、けなげな動物であろうか。
(P.190)
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言語を科学する神経生態学者「岡ノ谷 一夫」と言葉を紡ぎだす小説家「小川洋子」の対談集。
言葉の起源、役割、可能性 を、様々な動物実験の事例や、日常の何気ないやり取りから鋭い切り口で迫る二人のやりとりは見もの。
学者にも引けを取らない小川氏の発想は、彼女が常に言葉の持つ意味に寄り添って真摯な態度で執筆活動を続けているからに他ならない。
小鳥がぴーぴーやかましく鳴くのは、「餌をくれないと、騒いで敵を呼んじゃうよ!」という意思表示という見解もあって、脅して金をせびるみたいな、一種脅迫じみた面があるのには「なるほどー」と思うとともに、熾烈な生存競争の一部を垣間見た瞬間だった。
この本を機に、改めて言葉のもつ重要性を認識。
携帯やインターネットの台頭で、ますますコミュニケーションが簡素化する世の中への訓示でもある。
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大変興味深い。
言葉の起源を「歌」に見出すあたりはぬぬぬぬ!って感じ。ただ、対談と言うこともそれほど深く突っ込んだ議論にはなっておらず、どちらかというと仮説提示みたいな感じ。
それにしても20世紀の最大の発見とも呼ばれるものの一つである「言語」。構造主義やポスト構造主義を勉強する上では欠くことのできない言語学が、やはり言語起源論をやってこなかったのは興味深いというか何というか、今になって自然科学系の人が探求しはじめるというのは、どうなんだろう・・・。まあ、確かに起源遡及の不可能性みたいなこともよく論じられるからな。
それにしても本当に興味深いトピックがいくつもあった。
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言葉の起源を探索しているうちに、いつしか意識や時間の発生にまで及ぶ対談。言語の起源は「歌」であるという仮説を提唱する科学者岡ノ谷一夫氏を作家の小川洋子が訪ねる。
岡ノ谷氏によれば、ジュウシマツのさえずりを分析すると家族や仲間から分節化した歌を学び、さらには分節化したフレーズを組み合わせていることまで分かるという。また、ハダカデバネズミという地下で社会生活を営むネズミも歌を歌うという。こうして、人間の言葉も歌から生まれたのではないかとする「原語の歌起源説」が提唱される。種を保存するための求愛から始まった歌がコミュニケーションの手段として高度化していったことは十分に考えられる。
この対談は、聞き手の小川洋子の鋭い質問とアイデアが刺激となって、スリリングな展開を見せ、深い世界へと降りて行く。人が成長していく過程で、自分だけではなくて、他者にも内的過程(意識)があることを想定できるという「心の理論」が披歴された後、他者の行動に感応するミラーニューロンをヒントにして、他人の意識がこのミラーニューロンを介して自分に映し出される時に自己意識が生まれるのではないかという「自己意識の他者起源説」も提出される。また、言葉を持つことで「時間」という概念も誕生したのではないかという哲学的な世界へと誘ってくれる。この「言葉」と「時間」の相互関係については、動詞の活用形の中に時間の概念が包摂されていることを精神医学者の中井久夫が『私の日本語雑記』の中で述べているように、言葉と時間は糾える縄の関係にあるという方が正確なように思われる。
最後に小川洋子が「人間が言葉を獲得した、と人間が主語になってきましたが、むしろ言葉が人間を作ったと言っても許されるのではないか、という気さえしてきました」と語っているが、この対談がお互いを刺激しあう創造的なものとなっていることを象徴していて印象的である。
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http://blog.goo.ne.jp/abcde1944/e/1d1c17b021267e9d6b2385e6c11f3b90
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セミがものすごい音で鳴いて自分の耳の鼓膜が破れたりしないのかという問いに、先生は、脊椎動物だったら、耳小骨を支えている筋肉をゆるめるとあまり音が伝わらないと教えてくれる。人も大声を出すときは、無意識にその筋肉を緩めていると。ひとつづつ、少しづつの理解が楽しい。
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小川洋子さんは物語の引き出しをたくさん持っているのだな、と思う。その引き出しが、対談者からどんどん面白い話を引っ張りだして、楽しませてくれる。
この、言葉の誕生にまつわるあれこれが、さらにどんな物語を生むのか、待つ楽しみまで、抱くことができる。
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第1部 言葉はいかにして誕生したのか?
第2部 言葉は何を伝えるか?
第3部 心はどのように生まれるのか?
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2013 8/1パワー・ブラウジング。同志社大学今出川図書館で読んだ。
図書・図書館史の授業用に手にとった本。
ことばの成立にはこの授業ではあまり深入りしたくないが、さりとて文字の前提として触れないわけにもいくまいと思って、いろいろ探す中で手にとった一冊。
研究者・岡ノ谷一夫と小説家・小川洋子の対談から成る。
岡ノ谷は言語のさえずり起源説を唱えている人で、類人猿よりむしろ小鳥やくじらが次の言語を獲得しうる生物なんじゃないかとかそういう立場。
なかなか面白い本で、最後には石黒先生の心に関する議論まで出てきて精読してもいいかなって感じではありつつ、一般書なのでソースがあいまいだったり信ぴょう性が怪しい部分が多かったりもする。
まあ話半分、くらいで。
以下、面白かった点の抜粋など。
・p.61~ 言葉は情動を乗せない道具だからこそ他人を操作しうる?
⇔あとでサウンド・コントロールと対比したい
・p.85~ 記号⇒事物を想起するだけではなく、事物⇒記号を想起する人間の能力について。aならばbはどの動物も身につけられる推論だが、aならばbならばbならばaという(しばしば偽である)推論は人間しかしない?
・p.119~ 言語は話し言葉が起源と考えられるが、脳には最初から書き言葉への対応がある?
・・・書き起こしてもやはり、眉唾だな・・・(苦笑)
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言葉を、言葉を持たない生き物を調べて研究しているというだけで興味がでた。
言葉の進化ではなく、発生について。
ジュウシマツの歌や、ハダカデバネズミの社会性
言葉の発生に伴って生まれたものなど
心、神、時間
いろいろ考えさせてくれる本だった。
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It's exciting!
価値観の違う部分もありましたが、それはそれでまた面白かったです。
小川洋子さん好きの方はもちろん、言葉好きの方、動物好きの方にもおススメです♪
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vol.133
言葉はいつ、どのように、生まれたのか?小説家VS神経生態学者。
http://www.shirayu.com/letter/2011/000264.html
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小説家小川洋子さんと、言語の歌起源説を
唱える岡ノ谷さんとの対談本。
科学的なことはさらっと書かれていて
色々なこと(言語、音楽、神、脳、
コミュニケーション、心、など)について
お二人で楽しくお話しているところに
お邪魔しているような気がする
楽しい読書になりました。
「小鳥の歌には人間の言葉と共通する特徴が
ふたつも含まれていることがわかる。
他者から学ぶことと、組み合わせを作ること。」(P20)
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子どもの言語獲得
そもそも言葉とは
など、言葉に関する思いを持ちつつ
向かった図書館で見つけた本。
推測で語られている部分も見られるが、
冒頭10ページ足らずで、ひき込まれた。
じっくり読みたい。
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科学というよりは、よもやま話的なライトな体でエビデンスとか細かいこと抜きでこういう話もあるよねー的に対談してる本。真偽はともかく話題自体は面白いので小中学生の理系志向を進めるのによさそう。