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紙の本
ありのままを受け入れるまで
2022/07/03 03:33
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
女性性と向け合えない作家、雪村の胸の内が複雑です。紆余曲折の末に彼女がたどり着いた絶景に、格別の解放感を味わえました。
紙の本
ナオコーラの苦悩
2012/03/28 08:16
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
言葉には、いい響きをもつものと悪い感じを与えるものがある。
たとえば、「企み」という言葉にどんな印象をもつだろうか。罠をしかけるような悪い感じはしないだろうか。しかし、「企み」はあってしかるべきものだろう。それは攻めるための一つの戦術ともいえる。
作家にも「企み」があっていい。巧い「企み」は、読者を唸らせる効果がある。物語のなかにどんな罠を仕掛けるか、読者の息をのませる、立ちどまらせる「企み」なら、歓迎する。
そんな「企み」を、山崎ナオコーラは拒んでいる。
どころか、作家としての手の内をさらけだそうとしている。多分そのことは彼女にとって、とても真面目な選択なのだろうが、はたして読者はそれを求めるだろうか。
19歳で作家デビューした雪村は自分の抱えている女性という性を持て余している。身体は十分に発達し、胸の膨らみはそれなりに満ちた。しかし、作家として生きていくことを決心したことで、彼女は自身の性を捨てようとする。髪は短く、胸の膨らみも手術で除去してしまう。
男性に恋はするものの、それは実ることはない。
「私は作家だ、と雪村は思う。女だけど、女の前に作家だ」。
主人公の独白ながら、これはまさしく山崎ナオコーラの悲鳴のような決意だ。
物語の中に、そういった「企み」は隠せただろう。しかし、山崎はあえて「企む」ことをしなかった。自信の性を捨てたがっているのは、物語の中の雪村という主人公でなく、作者自身である。
そんな作品を読んでいて、少し胸が痛んだ。
山崎ナオコーラは必死になって何を守ろうとしているのか。作家とはどんな生き物であろうと考えているのか。
物語は自身のなかで完結すべきではない。読者にゆだねるべき何事かもあるだろう。
作家はすべての神ではない。作家のもっている性なり過去なりそれらをひきずっていくしかあるまい。
山崎のこの作品は「企み」もせず、自身をあまりにもさらけだすことで、読者を置いてけぼりにした。
山崎ナオコーラが男性であろうと女性であろうとかまわない。作家かどうかは、読者にゆだねるべきではないだろうか。
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