紙の本
つかまえに行かないと逃げちゃう本。
2018/11/08 22:12
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たけぞう - この投稿者のレビュー一覧を見る
姫野カオルコさんは以前から読みたいと思っていて、
でも手に取りにくそうというか、微妙な距離感を感じていた方です。
そして、この距離感という直感が、あながち外れてもいなくて、
独特な立ち位置の方だなあと思ったのでした。
姫野カオルコさんの公式サイトがあります。
各作品をディープ具合で分類しているので、
何を読むか迷っている人には良い手助けになりそうです。
わたしもこれを見ながら次作を検討しようと思います。
昭和の犬を読んで、もう少し読みたいと思ったからなのでした。
八篇の連作長編です。
流して読めば流したなりの、濃く読めば濃いなりの、
なんというのでしょうか、主張の少ない本なのです。
かなり個性的です。
犬と猫が大事な役割で出てくるのですが、
俗にいう動物モノとはまったく違います。
柏木イクという女性の、少女時代から現代に至るまでの
生活を切り取ったものです。淡々と生活しています。
各編には、だいたい犬、たまに猫との触れ合いがあり、
イクのこころの一部を形成します。
犬。イヌ。あくまでも、「いぬ」。
ワンちゃんの話じゃありませんよ。
動物であり人間のパートナーである犬が、持って生まれた
気質で生きるように、イクも自然な立ち位置で生きていく、
そんなイクの人生を描き出していきます。
子どもの頃、わたしの実家では犬を飼っていました。
今にして思えば、兄弟のような存在でした。
この本の中には、そんな生活の中で生きているいろいろな
犬が出てきます。
ほとんど野生みたいな犬、流行で飼われた犬、
愛玩動物という名の犬、ぬいぐるみ替わりの犬。
それぞれが本当の犬の姿であって、犬というものは飼い主を
映す鑑ということを徹底して描き出しています。
この本では、何をよく見て読めばいいのか、捉えどころがないのです。
犬が鑑となるように、この本そのものが、読んでいる人の鑑でも
あるような、そんな不思議な存在に感じます。
著者の作品を何冊か読んでいる方で、自分の中でイメージを
持っているような方にお薦めです。
きっと楽しみ方がよく分かるでしょう。
初めて読む人にはちょっとハードルが高いように思うのですが、
このまま終わるわけにはいかないと思ってしまったあたりで、
充分世界に引き込まれているのかもしれません。
姫野さんの世界を、ゆっくり探っていこうと思います。
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淡々としたトーンで、自分の生い立ちや生活を不幸とはカテゴライズせずに、ただ息をひそめて「何とか」生きてきた半生が語られる。読み手それぞれのコアな感覚部分に触れる作品。子供の頃から生きるのが不器用で居場所がなかった人、親と分かり合えなかった人、孤独感の強い人、大きな支えを失った人、には尚更のこと響くものがあると思う。たとえ犬・猫に何の興味を抱かない人でも解る部分はあるだろう。
最後の方で出会う”マロン”と飼い主の老人はこの小説では「救い」の象徴である。最近思うことであるが、ご老人の中には、その人と接するだけで癒しの感覚をもたらしてくれる特別な人がいる。色々な経験の積み重ねと、削ぎ落としたものの多さから来るものなのか、よくは判らない。だが、言葉では表せない”本質”の交流から何かを感じ取っているのだろう。他者(犬猫を含む)との交流から救いを感じられた人は幸せなのだろう。
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献本でいただいた一冊、お初な作者さんです。
表紙の犬にふと惹かれて、申し込んでみました。
一人の女性の生涯を追いかけた連作短編、
全部で8編、5歳から49歳までの季節が綴られています。
ララミー牧場
逃亡者
宇宙家族ロビンソン
インベーダー
鬼警部アイアンサイド
バイオニック・ジェミー
ペチコート作戦
ブラザーズ&シスターズ
章題は当時はやっていたであろう、ドラマのタイトルのようです。
耳にしたことはあっても、見たことが無いモノばかりでした、ふむ。
昭和33年生まれ、平成19年で49歳との設定、
自分の親よりは若く、私よりは一つ上の世代。
淡々と、恬淡と、どこかふしぎな筆致が印象的でした。
狂言回しは“犬”、もちろんずっと同じ犬ではなく、
時代時代で違う犬が、主人公に絡んできます。
時には飼い犬として、時には道すがらの犬として。
主人公と犬とそして第三者達の、、その時々の交流が染み入ってきます。
そんな中、わたしの印象に残ったのは、こちらのフレーズ。
“あの家には、東南西北、そろっていたのか…”
いくつかのスピンオフが出るのであれば、
それも読んでみたいと感じた、内容でした。
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犬と猫を過剰に愛するわけではなく、かといってないがしろにするわけでもなく、家族ではないけれど、家畜としてきちんと飼うというのは、昭和の時代で終わったのかもしれないな、と思いました。
家畜と人との境界だけではなく、人と人との境界もきちんとしているんだろうね。この作者さんは。
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心苦しい幼少時代の話を読むのかと思ったけれど「宇宙家族ロビンソン」のあたりからそうでもないのかもと思い始める。
自分が理解できる昭和の時代に物語が入ったからか、この物語が時代と犬という設定だとわかってきたからか。
自分にの飼ってきた犬、また近くにいた犬との関わり合いが面白い。
「ペチコート作戦」に入ると、おとなしいと思っていたイクが大家さんの犬をあまりかわいいと思えず、思わず「アホ犬」と言ってしまうあたりが痛快!
あたしは犬がニガテ。はっきり言うと嫌い。
犬好きの人は、犬が苦手な人がいるとは考えれないようだけれど、いるんですのよ、確かに。
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昭和30年代に生まれた女性の物語。
女性は、犬が好き。そして、小さい頃からずっと犬と関わってきた。
冬に差し掛かった、いまの時期。街が色を落としたこの時期に読むには相応しい小説だった。
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犬を家族としてつきあう今とはずいぶん違った昭和の話。飼ったり関わってきた犬の思い出を綴りながら、父や家族との関係に言及していく。
飼っていた犬にそっくりの犬に出会い挨拶を交わすところは印象に残った。すこしせつない。
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一世代上の人生、親の介護の現実味を実感していれば、読後感も違うのだろう。小学4年から二十歳まで実家にいた犬、飼って七年目になる犬、せっかく犬と暮らしていても触れ合いは少ないな、反省。
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#読了。第150回直木賞候補作品(既読時)。昭和33年生まれのイクの半生を、昭和という時代の流れとともに描く。世代が一昔前、地域性、何よりペットと過ごしていなかったからかもしれないが、感情移入が出来なかった。
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第150回直木賞受賞作。
戦後生まれのイクが犬と共に昭和という時代を生きていく物語。
昭和の描き方が非常に細かい。平成生まれにはキョトンだろうが、昭和30年代生まれには非常に懐かしく郷愁を誘うのではないだろうか。
昭和の父はガンコオヤジで威厳があった。父の言うことは絶対だった。
それを社会性動物である犬と一緒に描いているところが興味深い。
リラックスして読める本。
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不思議な作品。
苦手な文体でとっつきにくいし、そもそも楽しくない。
でもレビューを書く今になってもっと評価高くても良いんじゃないかと思ってみたり。
印象に残る作品であることには間違いない。
今だったら児童虐待と言われかねない両親に育てられるイク。
父親に謂われない怒りをぶつけられても、母親からのひどい仕打ちをうけてもただただじっと受け入れるだけのイク。
大学に入り上京してもなお両親からの呪縛は解けず、今度は両親の介護のために郷里を往復する日々が続く。
そんなイクの傍らには常に犬がいた。
なんて書くと、犬が心の助けになっている感動ストーリーみたいだがこれが全然違う。
そこはあくまで昭和の犬。けっして愛玩動物ではない。
犬を飼う目的が番犬だった時代のお話。
あの頃は野良犬がそこいら中にいて、いつの間にか居ついてしまったり、知り合いの所で沢山産まれた子犬を貰ってきたり。
飼い犬が鎖に繋がれていなくてウロウロしていたり。
ついこの前の風景のようにも思えるが、平成になって四半世紀。
もう一昔前の事か。
犬の飼い方は変化し、女性の生き方もずいぶん変わった。
イクの母親のように夫への愛情を感じないまま結婚生活を継続する女性は絶滅状態かもしれない。
それでも、どの時代でも親の権力は絶対だ。
昭和でも、平成でも。
イクの様な子供が幸せをつかむことができますように。
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犬や猫がいたから何とか生きてこれた、っていうのは、普通に幸せに育った人にはわかりづらいかもしれない。
でも自分を否定しないものの存在が人には必要なんだ。
つまんないなあ、と思いながら読み進めていったけど、結局最後まで一気に読んでしまった。
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ああ、ヤバい…と思った時にはどっと涙があふれていました。
『マロン』という名の犬と出会ったくだりあたりから。
感想をレビューしようと本を開こうとするともうダメなんです。
昭和を生き、時を経てはっきりと見える自分の今までの輪郭を捉えていく
柏木イク自身と関わった犬たちの物語。
風変わりな父母と一人っ子のイクの3人の生活。
褒められることのない両親のぬくもりを感じない生活が
自分を表現し、発する声そのものを出づらくさせてしまいます。
全部自分の中に飲み込んでしまい、
何事にも抗わず受け入れてしまうイク。
そんなイクに刺激を与え、助けるように現れてくる犬や猫。
厳しい環境のようであり、人々の心もおおらかだった昭和の風景。
私も小2から12年間、自分の気持ちを上手く外に表現できない時に
生活し隣で寄り添ってくれていた犬との思い出が洪水のように溢れてきました。
イクの犬たちとの関わり方がとても素敵です。
特に最後の方に出てくる『マロン』と一緒にいるときに
大声で言う一言が…そんな風に思えたことが…涙・涙です。
やはり動物とかかわることは、神様のはからいなんだと思います。
会話ができないもの同士の感覚のコミュニケーションは
深いところを揺さぶってきますから。
ここぞ!という時に天から派遣されてきているんじゃないかと私は思ってます。
巻末に載っているジョシュア・レイノルズ『小さき祈り』の絵に
この物語を直木賞に選んでいただきありがとうございましたと感謝したくなる一冊です。
あの時どうすればよかったのかをずっと探し続けたとしても
イクさんのあの一言のような気持ちになれれば、
どんな人生だったとしてもやはり幸せなんだと思います。
小ずるく欲張りな私は、どれだけ先に進めばそうなるのか見当もつきませんけどね…。
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猫派の自分が言うのもナンだが、犬こそが人間の最大の友になりうるペットだろう。それくらいに犬と人との結びつきは強いものだ。
主人公・イクは、人付き合いが苦手な女性だ。その代わり犬と関わるのがとても得意である。イクは犬を通じて多くの人と出会う。
この作品には、各章ごとにメインとなる犬が登場する(ちなみに各章のタイトルは、当時放映されていた海外ドラマのタイトルだそうだ)。その犬たちを通じて、イクはその飼い主あるいはその周辺の人びとと関わっていく。
攻撃的な人、境遇が全く違う人、悩める人。コミュニケーションが取りにくい人同士でも、犬が間に入ると、驚くほどスムーズに交わせることがある。
犬の話であり、人情話である。また昭和の断面図としても楽しめる作品だ。
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第150回直木賞受賞作
最初、関西の言葉に古風な空気が加わり、小難しい言葉が並び脚注までついているので読みづらさむんむん出てたけど、そうでもなかったです。リズムに馴れればどうってことない。むしろこの類ではかなり読みやすかった。
昭和33年に生まれた柏木イクの幼い頃からの軌跡とそこにいた犬や猫たち。
地味なんだけどとても優しい。そしてこれらを書ききったのがすごいなぁとただ単に思った。
憎しみと孤独と優しさとあたたかさがうまい具合に混じり合ってる、そんな感じ。
すごい、けど好みではなかった。ただそれだけ。昭和の犬っていうタイトルに読後じわーときます。